例えば過ぎる時間をただ一時でも止められたら。 忍者ブログ
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龍京 01








頭が痛い。







がんがん。
ずきずき。
じんじん。
ぎりぎり。

……そんな音が頭から聞こえてくるような気がしてならない。
はっきり言って鬱陶しい。


熱はない。
堰もない。

何が原因だか判らない。
判らないけども、痛いものは痛い。
ずっと鈍器で殴られているような気がする。



単位がヤバかったから、学校を休めなかった。
こういう時、普段もう少しマトモに出てりゃ良かったなと後悔する。

出席日数に余裕があれば、こういう不調の時に遠慮なく休める。
担任に欠席理由を信じられようと疑われようと、何も気兼ねしないで寝ていられる。
普段無作為にサボったりしているから、こういう時に辛い。
授業は面倒くさくても卒業はしたいと思うから。

……まぁ、後悔こそすれ、反省はしないのだけど。





机に突っ伏して、少しでもいいから収まらねェかと頭痛のピークが去るのを待つ。
けれども、京一の思いとささやかな忍耐と裏腹に、一向に治まる気配はない。


なんでだ。
腹痛だって大人しくしてりゃ収まるじゃねェか。
頭痛もちったぁなってくれたっていいだろ。

無茶苦茶な理屈を考えながら、もう少しもう少しと耐える。




そんな京一の頭に、何かがぽんと乗せられて。
なでなで、撫でる。






「……何してんだ、オメーは」






顔を上げずに問う。
其処に立っているだろう、相棒に。






「んー………」






なでなで。
ぽんぽん。

しながら、聞こえてきた考えるような声は、やっぱり龍麻のものだった。


当たり前だ。
自分のこんな真似を平然として来るのは、『女優』の人達を除けば、彼しかいない。
怖いもの知らずで、何を考えているのか判らない彼しか。



尚も頭を撫でながら、龍麻は京一の問いに答える。






「お疲れみたいだったから」
「……まァ間違っちゃいねェがよ」






お疲れと言えばお疲れだ。
頭痛と戦い続けて、お疲れだ。






「風邪?」
「いいや」
「熱ないの?」
「ない」
「病院は?」
「行かねェ」






病院=桜ヶ丘中央病院=岩山たか子=鬼門。
これが京一の認識。

龍麻もそれを知っていて、






「病院、岩山先生のとこ以外は行かないの?」
「………行く気しねェ」






あそこは嫌いだ。
子供の頃からそうだ。
半分トラウマだ。


だけれど、一番信頼している医者であって、京一は彼女の腕も知っている。
今はまだ学生で、医療費なんてろくろく持っていない京一を、あそこだけは無償で見てくれる。
京一が荒れていた時だって彼女は態度を変えずに付き合ってくれて、喧嘩に明け暮れた傷に治療もしてくれた。

京一が他の病院に行かないのは、医療費に回せる程、懐に余裕がない為と。
彼女以上に信じることの出来る人がいない為。






「わがまま」
「………ほっとけ」






なでなで。
ぽんぽん。
なでなで。



子供にするように頭を撫でる相棒の手を、払い除ける気にはならない。
除けた所で、しばらくしたら同じように撫で始めるような気がするし。

……いや、それよりも。
何故だろう。




少しだけ、痛いのが……なくなった、ような――――――……






「京一?」






撫でる手が止まった。

寝ちゃった? と覗き込んでくる気配。
目を閉じているから、そういう風にも見えるだろう。



教室のざわめきが遠い。
頭が痛いのも、少し遠くなった。






「きょーいち」






間延びした呼び方をされる。
京一は沈黙したまま、目を閉じたまま、机に突っ伏したまま。



次の授業は科学で、実験授業。
ガタガタとあちこちで音がして、クラスメイト達が教室を出て行く。

勿論、京一と龍麻も行かなければならない。
頭痛を抱えていようと、科学の授業も単位がヤバめであることは間違いなく、多少の不調は押してでも行かなければ。
このまま此処で過ごしてチャイムが鳴ってしまったら、遅刻決定、そのままサボってしまう可能性大。


科学の補修は面倒臭い。
京一の場合、どれでも面倒臭いのだが。


龍麻は気に止めはしないだろう、何せ編入試験をトップクラスで抜けた経歴を持つ人物だ。
彼の成績が、編入後急激な下降線を辿り、万年補修組に加わってしまったのは、京一と揃ってサボタージュするようになったからだ。
これについて、マリアはよく愚痴を零しているらしい。

まぁ、京一には関係のない話だ。
確かに龍麻のサボタージュは自分が誘ったのが始まりで、声をかけることは多いが、応じるか否かは龍麻の勝手なのだから。


いや、それよりも今日の科学だ。
行かないと――――







(………ま、いいか)

(頭、痛ェし)

(面倒だし、授業)








京一はそう思ったのだけれど。
触れていた相棒の手が離れようとしたのが判って。

起きないまま、その手を捉まえた。






「京一?」






掴んだ手は離れない。
突っ伏したまま起きない。

手を離すようにと、龍麻は言わなかった。
言われたところで、京一に離す気はさらさらなかったが。



騒がしかった教室が静かになる。
音が遠のいた訳ではなくて、音を発するものがなくなった。
クラスメイト達は、揃って実験室に向かったらしい。

もう此処に残っているのは、京一と龍麻の二人だけだ。





まだ間に合う。
起きて走れば、授業開始のチャイムぎりぎりには滑り込める、多分。

まだ、間に合う―――――









ぽん、ぽん。

なでなで。










また頭を撫でられる。
だからやっぱり、京一は起きない。




頭が痛い。
それは変わらない。

でも少しはマシになった―――――ような気がする。






なでなで。
なでなで。







「龍麻ァ」
「なに?」
「…頭痛ェ」
「うん」







なでなで。
なでなで。













二人きりの教室。


聞こえたチャイムの音は、なんだか随分遠かった。


















====================================


ツンデレだって、たまには自分から甘えたい時がある。と、思う。
でも次の日になって調子が戻ったら、消したい過去になっちゃうんじゃないかな!
「昨日のオレ何してた!?」みたいなね。

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独自設定




あくまでウチの独自設定(管理人の妄想)ですので……



・家族は父(死去)・母・二歳年上の姉
・実家は剣術道場。
・姉も一応剣術をやっている。スポーツ感覚。

・父の死去後、家に帰っていない。小学五年生の時。
・葬式の日も戻らず、後日になって蓬莱寺家の墓へ(外伝一話冒頭シーン)。

・父の死、師匠の失踪が少しトラウマ。
・口ではなんだかんだと言うが、父の事は憧れていたし、師匠も内心は尊敬している。
・自覚なくファザコン気味。

・歌舞伎町に知り合いが多い。
・相手が京一を一方的に慕い、舎弟であると言っている事もある(逢った事も覚えてない…)。
・「京ちゃん」は『女優』関係の客や、子供の頃から世話になっている人から呼ばれる。
・舎弟からは専ら「アニキ」。

・岩山先生は大の苦手。子供の頃の恥ずかしい事とか全部知られてるから。
・喧嘩や稽古では泣かなくても、怪我の治療はよく泣いた(暴れた)。
・でも腕は一番信用してる。
・高見沢とは病院内で擦れ違った事があるぐらいで、嵯峨野の事件まで互いの面識はなかった。

・敵意に敏感で、好意に鈍感。
・好かれるのが下手で、わざと嫌われる言動を取る事が多い。
・「好き」とか「友達」とか、ストレートな好意の言葉に弱い。直ぐ赤くなる。
・気に入った相手と、そうでない相手との扱いの差が激しい。
・自分からスキンシップするのは平気でも、相手からだと少し慣れない。兄さん達は別。
・気を赦している相手の前だと、結構無防備。

・子供の頃はアンジー達に服を買って貰っていた。当人曰く「押し付けられた」。
・中二になるとほぼ制服で過ごすようになる。
・子供の頃の服が結構高いモノだったと気付いたりして気後れしたのもある(笑)。ケンカでボロボロになるので。
・でも流石に下着は買い換えて貰ってます。持ってるものは基本的にパンダ柄。

・実はモテる。舎弟以外は隠れファン状態。
・剣道部の大会等の関係で他校にもファン多数。

・子供の頃からパンダ好き。
・今も好きだけど、自分のキャラじゃないと思っているので隠してる。
・でも『女優』の人達には知られている。だからパンツもパンダ柄。

・酒は飲むけど、あまり強くない。
・酔うと脱ぎ出す。記憶はトぶ事が多い。


・中一~中二の間にかなり身長が伸びた。
・脱童貞は中学の荒れていた時期。



以上が当サイトの京一の基本設定です。


小説[It is great, and it foolish father]は、アニメ外伝一話が放送される前に書いた為、この作品はチビ京一の年齢が10歳以下になっています。
以降に書いた話は10歳頃で書いてる……筈ι

服買って貰ってたとかはまだともかく、パンダ好きとか完全なる捏造妄想(爆)。
だってパンダパンツなんか履いてるからさぁ……
アニメの京一の性格だと嫌がりそうなのに履いてるって事は、結構気に入ってるんじゃないかと。…生地とかが理由じゃなく。


後は各小説でちょいちょい違うので、基本が上記のものだと思っていただければ。
女体化もちょっとずつ違うなぁ……



嫌いになれたら良かったのに










兄が、家を出て行った。
せきほうたい、と呼ばれる人達を追い駆けて。








いなくなる前の晩、父と大喧嘩しているのを見た。



付いて行くとか赦さないとか、馬鹿な事考えるなとか本気だとか。
何がどう馬鹿な事で、何に本気なのか、右喜にはさっぱり判らなかった。

判らなかったけれど、今まで見たことがなかった位に二人とも本気で喧嘩をしていたのは判った。


兄と父が喧嘩をしているところは、よく見た。
物心ついた頃から二人は何かと喧嘩をしていて、右喜はそれを見てしょっちゅう泣いた。
大きな声や大きな音は怖かったし、どちらかがどちらかを叩いたりして、肌が赤く腫れるのも嫌だった。
何度か「ケンカしないで」と言ったけど、二人はいつまで経っても喧嘩をしてばかりだった。

でも、心の何処かで感じていたのだ。
喧嘩をしていても二人はちゃんと仲が良くて、喧嘩も二人の間では普通の会話みたいなものだと。
だから母が怒れば止めるし、なんだかんだで二人肩を並べてご飯を食べたり出来たのだ。




―――――でも、あの喧嘩は本当に怖かった。




どっちも譲らない譲らないで、父は本気で兄を投げ飛ばして、それを追い駆けて土間に転がり落ちて、取っ組み合いになった。
母が止めても聞かなくて、終いには母まで泣いてしまって、右喜はもうどうして良いか判らない。

幼い右喜に、本気の男同士の喧嘩を止めるなんて到底出来ない。
泣いて喚くのが精々だった。


そうしている間に、父が「勝手にしやがれ」と怒鳴った。
兄が「勝手にする」と怒鳴った。

「かんどうだ」と父が言って、「もう帰って来るな」と怒鳴った。
兄は家から放り出されて、父は戸口を閉じて、閂まで閉めた。
兄が戸口を開けようとするような音は、なかった。


兄の姿が見えなくなって右喜は不安になって泣いた。
母はそんな右喜を抱かかえて床についたが、父はずっと囲炉裏の傍で肩を揺らしていた。

床についてから母の顔を見たら、母は泣いていた。
二人が喧嘩をしている時に母が泣いたのを、右喜は始めて見たが、床の間で見たのも初めてだった。
いつでも強い母だったから、泣いているのに驚いて、右喜は自分が泣いていた事も忘れた。







でも、幼い右喜は、明日になったらいつも通りに戻るんだと思っていた。

……そうなんだと、願っていた。







なのに、朝になっても兄は帰ってこない。


家から放り出されることは過去にも何度かあったけど、朝餉の時にはいつも皆揃っていた。
冬の寒い時期、鼻水を垂らしながら大根汁を啜る兄をよく見た。

なのに兄は帰ってこなくて、朝餉の席にいるのは、父と母と自分だけ。
「お兄ちゃんは?」と聞いたら、父は顔を怖くして、母は何も言わずに俯いた。
それから、朝餉が終わって、昼になっても、夜になっても、兄は帰ってこなくて、「お兄ちゃんは?」と聞いたら父と母は黙ってしまった。



………それから、一週間程。
父と一緒に大根畑で仕事をしていたら、町から戻ってきたご近所さんが言った。

「お宅の倅、赤報隊に入ったって?」と。


“せきほうたい”が何であるのか、右喜は知らなかった。
でも、其処に兄がいるのは判った。
大好きな兄がいる事は判った。

だったら自分も入るといったら、父は絶対駄目だと言った。
「お前まで母ちゃん泣かせるな」と、怒ったように、でも少し淋しそうに。



そして、“せきほうたい”がこの地を離れた事を聞いた。
帰ってこない兄が付いて行ったのは、明らかで。

もう帰ってこないつもりなんだと思ったら、悲しくて淋しくて、大きな声を上げて泣いた。







――――――二月の終わり。

“せきほうたい”がなくなったと聞いた。
“せきほうたい”の人達も、誰もいなくなったと。


でも、兄は帰って来なかった。







嫌いになりそうだった。
大好きだから、大嫌いになりそうだった。

帰ってきて欲しいのに、兄は帰ってこない。
“せきほうたい”がなくなってから、手紙もない。
探しに行きたかったけど、何処にいるのかちっとも判らない。


泣いた。
泣いた。
泣いた。

そうしていると、いつも何処からか現れて、「しょうがねェなァ」と言って手を繋いでくれるのに。
それもないから、もっともっと悲しくて、喉が枯れるまで泣いた。




自分を置いていった兄。
何処か遠くに行った兄。

戻ってこない兄。
連絡もない。


もう自分達の事なんて忘れてしまったんじゃないかと思った。





嫌いになりそうだった。









嫌いに、

………嫌いに、




……………嫌いに―――――なれたら良かったのにと、思うけど、










幾年月を過ぎて見つけた走る背中に、いつも見ていた背中を見付けた、ような気がした。















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なんか珍しいキャラクターで書いたなァ。
右喜ちゃん可愛いので好きです。



いつかの約束










「オレ、相楽って名乗っていいスか?」








無邪気に言ってくれる子供に、苦笑が漏れる。


苗字を持たない者が、どうして苗字に憧れるのか。
生憎、苗字を持つ家に生まれた相楽には、よくよく判らないものであった。

だが自分の持つ名に憧れると、真正面から言われると、どうにもくすぐったい気分がして来る。






「相楽左之助、か」






左之助。
いつも自分の後ろをついて歩く子供の名前。

その名前の頭に、生まれて今まで馴染んだ苗字を連ねてみる。


………やはり、なんだかくすぐったい。






「よせよせ。変な名前になってしまうぞ」






笑ってそう言ってみたが、子供はにかっと笑うだけだ。

多分、気付いたのだろう。
よせと言った言葉が、本気の色をさして宿していない事に。



今の時代でこの苗字を語れば、家名の重みが圧し掛かる。
けれども、四民平等の時代が来て、皆が名乗れるようになったら少しは変わるだろう。

自分が背負う“相楽”を、この子に背負わせるつもりはない。
けれども、同じ名を名乗りたいと言われるのは、嫌ではなかった。
“家名”ではなく、自分の“意思”を継いでくれるような気がしたのだ。






「克はどういう苗字にするんですかね」






幼馴染を思い出して言う左之助に、さてなァ、と呟く。




うきうきと、隣を歩く子供の足取りは軽い。
見下ろせばにーっと笑う顔があって、此方も思わず口元が緩む。






「オレ、絶対に相楽って苗字にしますよ」
「よせと言っているだろう」
「本当にしますからね!」
「やれやれ……」






言っても聞きそうにない。
いや、そもそも、言って聞かせようとも思っていない。


逆立つ鳥の鶏冠のような頭をくしゃくしゃ撫でる。
左之助はくすぐったそうに笑った。












そんな、二人きりの約束。















----------------------------------------

あそこの遣り取りが大好きです。


光みたいだ








山中を行軍している最中、落石に遭った。
先日まで降り続いていた雨が原因だ。

落石に巻き込まれて逸れてしまったのは、未だ幼い二人の準隊士だった。



落石を避けた弾みで足を滑らせて、山道の横にあった、垂直に近い斜面を滑り落ちる羽目になった。
幸運にも茂みのお陰で悲惨な事にはならなくて済んだが、それでも子供達にとっては一大事。
右も左も判らぬ山中で子供二人など、危険極まりない状況だ。

じっとしているのも不安で、だが不用意に動き回る訳にも行かず。
またこれも幸運だったのは、隊が向かおうとしていたのが滑り落ちた斜面の下――つまりはこの近辺――であったと言う事と、落ちたのが自分一人ではなかったと言う事だった。





真冬の寒い山中で、見つけた大きな木の洞に入って、二人で身を寄せ合う。





寒い寒いと左之助が言うから、克弘は自分の羽織を貸そうとした。
けれど、ンな事したらお前ェが寒くなるじゃんか、と左之助が怒る。
平気だと克弘が言えば、左之助は、いやオレの方が平気だと言って来る。

二人でそのまま言い合いをした。
疲れて言葉が途切れた頃には、二人ともそこそこ温まっていた。


けれど、じっとしていればやはり体温は下がってしまって、






「……寒い」






今度は克弘が呟いた。

俯いて膝を抱える克弘の肩を、左之助は揺する。






「寝んなよ。寝たら死んまうぞ、お前」
「…判ってるよ」






肩を揺する手を払い除ける克弘に、ホントに判ってんのかよ、と左之助は思う。

克弘は本当に判っている。
判っているが、落石前に相当歩いていた事もあって、体は疲労を覚えていた。
傍らにいる左之助の温もりが心地良いものだから、うっかりそれに身を任せてしまいそうになる。
それを、今現在、必死に堪えている所なのだ。






「う~~~~ッ……」






左之助は、はぁ、と両手に息を当てて、その手で両腕を擦る。
克弘も同じようにやってから、眠らないようにとパンパンと頬を叩いておいた。








いつまでこうしていればいいのか。
こうしていて、大丈夫なのか。
移動した方が良くないか―――――

克弘は色々考えていて、それは左之助も同じだった。
けれど動き回って大丈夫かどうかも判らないし、もっと迷ったら大変だから、動けない。


不安が募る。
怖くなる。

降っている雪が吹雪じゃないのは幸いだ。
此処にいるのが、自分一人じゃないことも。



待つしかない。
逸れてしまって、右も左も判らない自分達に出来る事と言ったら、それしかないのだ。

見つけて貰えることを信じて、寒さに堪えて待ち続けるしか―――――











沈黙の帳が下りるのが嫌で、左之助はずっと何事かを喋り続けた。
克弘は小さく相槌を打って、時々余計なことを言う左之助の頭を小突いてやった。

心の中で、ずっと「大丈夫」を唱え続けながら。



―――――どれだけ、そうして過ごしただろうか。








「隊長! 足跡がありました!」








木々の合間を縫って聞こえた声に、二人同時に顔を上げた。
そろそろと洞の中から外を覗いて、積もり始めた雪が目に痛くて目を擦る。

そして。








「左之助! 克弘!」









大きな声で名を呼ばれて。
茂みの向こうから現れた、その人は。


暗く寒い場所で待ち続けた子供達にとって、確かな“光”であったのだ。















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子供達にとって、色んな意味で眩しかった人なんじゃないかなぁと。