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「隊長、宜しいですか」
子供の怪我の手当てをしている最中、呼ばれた。
振り返ると隊士の数人がいて、ああ今後の話か、とすぐに思い至る。
「直ぐに行く」
「はい」
端的な返事をして、隊士達は背を向ける。
会議室に向かうのだろう、自分もすぐに追わなければならない。
襖が閉じられるのを待たずに、相楽は子供の手当てを再開させた。
すると、子供の方が慌ててその手を掴む。
「た、隊長、後は自分で出来ますから」
これ以上隊長の手を煩わせることと、自分の所為で先輩隊士達を待たせることと。
恐らくその両方に遠慮を感じての子供の言葉に、相楽は小さく笑んで、
「大丈夫、それ程時間はかからないか」
「だ、だったら尚更、自分で」
「そうはいっても、左之助、不器用だろう」
同じような遣り取りがあった前回、会議を終えて戻った時、左之助はまだ包帯を巻き終えていなかった。
ぐちゃぐちゃになった包帯に絡まった姿は、毛糸玉にじゃれた仔猫を思い起こさせた。
結局あの時も相楽が絡まった包帯を解き、綺麗に巻き直してやった。
相楽の言葉に、左之助は赤くなる。
今度は大丈夫ですから! と言うが、相楽は期待しなかった。
克浩がいるなら後を任せても良かったのだが、今は頼んだ買出しに出ている。
他の準隊士達に預ける手もあったが、相楽はそうしなかった。
――――この子供に手を焼くのは、自分だけでいいと、そう思っているから。
そんな相楽の思考など知らず、左之助は、今度は出来ますから、と言った。
「だから、隊長は皆のとこに行って下さい。示しがつきませんから」
「大丈夫、大丈夫。ほら、腕上げろ」
言われると、左之助は素直に両腕を上げる。
脇の下に出来た青痣を覆い隠すように包帯を巻きつけた。
「オレなんかに構ってる場合じゃないですって」
「大丈夫、大丈夫。次は左手だな」
手を差し出すと、また素直に、左之助は自分の左手の甲を見せる。
派手に擦り剥いた痕が残っている其処に、相楽は其処に濡れた手拭を当てた。
冷たさか、染みるのか、左之助の方がぴくっと跳ねる。
その様子に思わず笑うと、左之助の顔が耳まで赤くなった。
「もう、自分で出来ますってばー!」
「大丈夫、大丈夫」
何がですか、と。
喚く割には、左之助は素直に手当てを受けていた。
判っているのだ、二人とも。
大丈夫、大丈夫と繰り返す隊長が、幾ら言っても止めてくれない事も。
やります、やりますと繰り返す子供が、手当てされることを嫌がっていない事も。
隊長、絶対面白がってる(爆)。
なんだかんだで左之助も甘えてます。