例えば過ぎる時間をただ一時でも止められたら。 忍者ブログ
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04 お互いのことは承知のつもり












「隊長、宜しいですか」







子供の怪我の手当てをしている最中、呼ばれた。
振り返ると隊士の数人がいて、ああ今後の話か、とすぐに思い至る。







「直ぐに行く」
「はい」






端的な返事をして、隊士達は背を向ける。
会議室に向かうのだろう、自分もすぐに追わなければならない。

襖が閉じられるのを待たずに、相楽は子供の手当てを再開させた。
すると、子供の方が慌ててその手を掴む。






「た、隊長、後は自分で出来ますから」






これ以上隊長の手を煩わせることと、自分の所為で先輩隊士達を待たせることと。
恐らくその両方に遠慮を感じての子供の言葉に、相楽は小さく笑んで、






「大丈夫、それ程時間はかからないか」
「だ、だったら尚更、自分で」
「そうはいっても、左之助、不器用だろう」






同じような遣り取りがあった前回、会議を終えて戻った時、左之助はまだ包帯を巻き終えていなかった。
ぐちゃぐちゃになった包帯に絡まった姿は、毛糸玉にじゃれた仔猫を思い起こさせた。
結局あの時も相楽が絡まった包帯を解き、綺麗に巻き直してやった。



相楽の言葉に、左之助は赤くなる。
今度は大丈夫ですから! と言うが、相楽は期待しなかった。

克浩がいるなら後を任せても良かったのだが、今は頼んだ買出しに出ている。
他の準隊士達に預ける手もあったが、相楽はそうしなかった。
――――この子供に手を焼くのは、自分だけでいいと、そう思っているから。


そんな相楽の思考など知らず、左之助は、今度は出来ますから、と言った。







「だから、隊長は皆のとこに行って下さい。示しがつきませんから」
「大丈夫、大丈夫。ほら、腕上げろ」






言われると、左之助は素直に両腕を上げる。
脇の下に出来た青痣を覆い隠すように包帯を巻きつけた。







「オレなんかに構ってる場合じゃないですって」
「大丈夫、大丈夫。次は左手だな」






手を差し出すと、また素直に、左之助は自分の左手の甲を見せる。

派手に擦り剥いた痕が残っている其処に、相楽は其処に濡れた手拭を当てた。
冷たさか、染みるのか、左之助の方がぴくっと跳ねる。
その様子に思わず笑うと、左之助の顔が耳まで赤くなった。








「もう、自分で出来ますってばー!」
「大丈夫、大丈夫」







何がですか、と。
喚く割には、左之助は素直に手当てを受けていた。










判っているのだ、二人とも。

大丈夫、大丈夫と繰り返す隊長が、幾ら言っても止めてくれない事も。
やります、やりますと繰り返す子供が、手当てされることを嫌がっていない事も。












隊長、絶対面白がってる(爆)。
なんだかんだで左之助も甘えてます。
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