例えば過ぎる時間をただ一時でも止められたら。 忍者ブログ
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01 約束をする











未来なんて不確かなもので、その未来の約束をするなんて、もっと不確かで。
だけど、その約束で、ほんの一時でも君を縛ることが出来るなら。










歌舞伎町の向こうに紛れようとする親友を呼び止めた。
肩越しに振り返った親友に、一つ約束を取り付ける。







「明日、僕の家に泊まってね」







藪から棒の言葉に、京一は眉根を寄せる。
それは決して機嫌を損ねた訳ではなく、急な発言の真意を掴み損ねたからだろう。

龍麻は微笑んで親友の顔を見つめ、もう一度同じ言葉を繰り返す。






「明日、僕の家に泊まってね」






一言一句変わらぬ言葉。

京一は益々いぶかしんで見せたが、断る理由も思いつかないからだろう。
しばらくの沈黙の後、がりがりと頭を掻いてから、






「いいぜ」
「うん」






承諾と了解の言葉は、たったの三文字、二文字で終わる。


今度こそ京一が完全に背を向けたのを、龍麻は今度は呼び止めず、追うこともしなかった。
呼ばれなければ京一が振り返ることはなく、踵を返して戻って来ることもない。

原色のネオンの向こうに消える背中に、龍麻は見えていないと判って、手を振った。




そのまま、京一の背中は見えなくなるだろうと思っていた、のだけれど。




ふと、京一の足が止まって、半身で振り返る。
それを見た龍麻は、何か忘れ物があっただろうかと考えた。
考えたが、思いつくものはない。

立ち止まった答えを知る京一は、またがりがりと頭を掻いてから、







「明日な」
「―――――うん」







確認するように告げられたのに、龍麻ははっきり頷いた。
京一もそれを見て、ひらりと手を振ってまた背を向け、歩き出す。











不確かな未来。
だけどどうか、明日も一緒に。

大好きな君と、一緒に。


そんな約束。











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“じゃあまたな”をもっと明確な形に。
明日は“明日”が終わるまで、ずっと一緒にいられるように。
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