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絡められた手に、いつも戸惑う。
リアクションにも、このままにして良いのかと言う事も。
するりと捕まえられたを感じて、肩越しに後ろを振り返れば、思ったとおり。
いつものふわふわとした笑みを浮かべた相棒が其処にいて、視線を落とせば握られた手。
5つ6つの子供じゃあるまいし、手なんか繋いで何が楽しいのだろう。
過去に何度か聞いたことがあったが、その都度、龍麻は笑うばかりで何も答えなかった。
聞き続けていると、「駄目かな?」と質問で返されてしまい、いつも京一の方が答えに窮する。
嫌か嫌じゃないかと言われると、照れくさいが“嫌じゃない”訳で、「だったらいいじゃない」と丸め込まれてしまうのだ。
龍麻が、何故自分と手を繋ぎたがるのか、京一にはよく判らない。
剣を握り続けた為に、剣胼胝だらけの凸凹の手。
古武術を心得る龍麻の手もそれは似たようなものだった。
……こんな手を繋いで、本当に何が楽しいのか。
夜の都会の真ん中。
男同士が手を繋いで歩く光景の、なんと滑稽か。
と、京一は思うのだが、反面、誰も気にしちゃいない事も判っている。
色々な人間が当たり前に溢れ返る東京で、一々他人の様子を逐一観察する者はいない。
男同士で手を繋ぐのだって、ある一角に行けば珍しくない光景なのだ。
…時々、後ろ指で笑われている気がしないでもないけれども。
京一のそんな心情などお構いなしに、今日の龍麻は少々ご機嫌な様子だった。
「ラーメン、美味しかったね」
いつものラーメン屋で食べた帰りだ。
其処には醍醐達もいて、ついさっきの分かれ道まで一緒だった。
そして別れて数分後、龍麻が手を捕まえてきたのである。
「苺ラーメン美味しかったなぁ」
「……ありゃねェと思うぞ、オレは」
麺からスープから、ピンク一色だったラーメンを思い出す。
あれは本当に有り得ない、と京一は思う。
コニーもよく作ってくれたものだ。
京一達が押し付けていった少女・マリィに急かされて作ったものらしいが……
押し付ける時には本当に軽い気でいたのだが、今は少々、申し訳ない事をしたと思う。
とは言え、コニーはコニーでマリィとの生活を楽しんでいるようだが。
赤信号に引っ掛かって、横断歩道の前で立ち止まる。
「京一も今度食べてみなよ」
「遠慮しとく。オレはいつもの奴でいい」
「本当に美味しいよ?」
「お前にとってはな」
直ぐに信号は青に変わってくれた。
けれども、此処の信号は青から赤に変わるのも早い。
早足で渡り出すと、手を繋いだまま、龍麻も同じ速度で渡り始める。
京一の方が半歩前に出ているので、傍目には京一が龍麻を引っ張っているように見えた。
「冒険してもいいと思うな」
「してェ時にするから、今は止めとく」
「今度一緒に食べようね」
「人の話を聞けよ、オメーは」
青信号が点滅する。
横断歩道はやっと半分まで行った所だった。
長いくせに変わるのが早いのは可笑しいよなと思いつつ、京一は龍麻の手を解く。
走り出せば、寸分遅れずに龍麻も走り出した。
ギリギリで渡り切って、一つ息を吐いて。
また手が繋がれる。
――――――放っておくのは、拒否する理由がないからだ。
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こんな話を書く度、うちの龍麻は本当に京一ラブだなと思います。
でもって、なんだかんだで京一も龍麻の事好きです。