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猫には、爪をとぐ習性がある。
左之助にも、ある。
ガリガリ。
ガリガリ。
聞こえた音は、振り返らなくても判り易い。
左之助が爪を研いでいる音だ。
研ぐ道具として使っているのは、木製の板。
これは近所に木材加工をしている人物がいて、廃材を貰っている。
成長盛りの左之助は、爪が伸びるのも早いようで、しょっちゅう爪を研ぐのでこれは助かっている。
廃材なので、幾ら研いでも削っても、齧っても問題ない。
これがアパートの柱だとか、家具だとかだと困りものである。
拾った頃に二、三度やられた。
相楽が爪切りで切ろうとしても、何故かこれだけは怯えたように嫌がった。
習性だから、叱って止めさせる事も出来ない。
どうしたものかと会社帰りに考えていて、ふと今まで気にしなかった小さな工場を見つけた。
いきなりで不躾とは思いつつ、良かったら廃材を貰えないかと頼み、左之助も連れて行き、ああこれじゃ大変だろうと譲ってくれた。
譲って貰ってばかりでは悪いので、時々、差し入れを持っていくようになって、今ではすっかり良い近所付き合いが出来ている。
左之助も、遠慮なく爪が研げて、相楽に迷惑がかからないと知ると、それはそれは喜んだものだった。
ガリガリ。
ガリガリ。
最近は、近所に住んでいる野良猫と一緒になって研いでいる事もある。
その野良猫はとても器用で、研ぎ終わって綺麗に尖った爪で、板に絵を彫った。
左之助があまりに感心するから、最近は習慣付いてきて、毎回絵を彫っていく。
友人(友猫?)作の彫り絵は、きちんと取って置いてある。
左之助は不器用だが、時々、友を真似て何某かを描こうと試みる。
大概、失敗に終わる。
失敗すればガリガリ爪で削ってしまうだけなので、別に処分に困る事はない。
ガリガリ。
ガリガリ。
木材加工工場の主任は、廃材が絵に変わったのを見て、大層驚いていた。
猫がやったと言うのだから無理もない。
左之助が「オレのダチが彫ったんだ」と自慢げに見せに行ってから、新しい廃材を貰いに行く度、一緒に持って行って見せている。
主任は上手い上手いと褒めて、昨日通りかかった時には、「次はいつ来るんだ? 今はどんなの彫ってんだ?」と訊ねられた。
単なる廃材で処分する筈だった木材が、意外な所で活用されているのが嬉しいらしい。
喜んでくれるのなら、相楽だって嬉しいし、左之助はもっと嬉しい(友は恥ずかしいらしいが)。
ガリガリ。
ガリガリガリ。
それでも、一つ困ったことがあると言ったら。
(これは燻製に使えるんだったかな?)
散らばる木材の砕片を眺めつつ、相楽は捨てるのは勿体無いよなぁと呟いた。
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やっと“猫”の話(爆)。
猫は飼った事がないので、どれ位の頻度で爪研ぎをするのか、正確に知りません(汗)
そして野良猫もいつどういう場所で爪研ぎするのか判りません…習性だからするんだろうな、ぐらいで…
爪とぎ器って言うのがあるんですね、知らなかった。
この隊長、貧乏性……?