例えば過ぎる時間をただ一時でも止められたら。 忍者ブログ
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壁に耳あり障子に目あり










宿に泊まっている最中の会議の時、子供二人は大抵その場から外された。

一人は素直に従じるが、もう一人は納得行かないと言う顔をする。
それは別に反抗しているとか言う事ではなく、敬愛してやまない隊長の傍から離れるのが嫌なのだ。


大人達からの言い分としては、町宿にいる時ぐらい、子供達には好きに過ごさせてやりたかった。
行軍の間は、周囲の大人を追いかけて歩かなければならない彼らに、その日一日位は遊んで良いぞと。
町で団子でも買って、物見でもしてくれば良いからと。



隊長直々に暇を言い渡されて、子供はようやく町に出て行く。
傍を離れる口実として、隊長から少々の小遣いを渡されて。

二人並んで宿を出て行くのを見届けてから、軍議は始まった。








それから半刻程だろうか。

ふと相楽の頭が揺れて、傍にいた隊士がどうかしましたかと問う。
と、相楽は小さく首を横に振り、なんでもないと言い、地図に視線を落とした。


隊士はしばらくどうしたのかと疑問に思っていたが、やがて気付いた。
じっと向けられている、二対の視線を。



茶を淹れ直す振りをして、廊下へと続く障子を見た。
きっちりと閉じていた筈のそれは、ほんの少し、隙間を開けている。
外は曇り空で光が少ないから、影の形は部屋内にはなかった。

なかったけれど、其処から覗く視線が誰のものであるのかなど、考えなくても直ぐに判る。
時折聞こえる、ひそひそとした少し高めの声を聞かなくても。


そっと横目で窺い見ると、子供二人は手に何かを持っていた。
葉で包まれたもの、恐らく団子か饅頭だろう。
二人でたらふく食べても良いのに、わざわざ土産に買って持って帰ってきたのだ。

特にやんちゃな子供の方は、町を楽しむのも良いけれど、早く此処に戻って来たかったのだろう。
だから宿を出てから、たったの半刻程で帰って来たのだ。
まだ会議中とは判っていても、出来るだけ傍にいたいから。
大人しい子供は、いつものように、やんちゃな子供に付き合っての行動だろう。





子供二人はこそこそと、早く会議が終わらないかと窺っている。
しかし残念、もう暫く長引きそうである。





ややもすると、其処で立っている事に疲れたのだろうか。
一人がその場に座り込んで、此処で座るなともう一人が腕を引っ張った。
座った子供は渋々立ち上がり、そっと障子を閉めて、とたとた向こうへ行ってしまった。

が、その後。
壁越しに隣の部屋からカタリと言う音がして、遂に相楽が噴出した。


隊長である相楽が我慢し切れなかったものだから、他の面々も次々噴出した。
口を押さえて辛うじて耐えはしたものの、クツクツ喉から上がる笑いは抑えられない。




バカ左之、と高い声がした。
なんだと、と続く声。

それから、しんと静かになる。











壁の向こうで、早く終わらないかと待つ子供達。


悪いがもうしばらくだけ、良い子で辛抱していてくれよ。













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どんどん赤報隊時代を捏造してますね、自分(汗)。
ちびっこ大好きなんです。

大声出し合った後で、二人で「しーっ」とかしてればいい。


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