例えば過ぎる時間をただ一時でも止められたら。 忍者ブログ
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02 相容れることは認められない










越えてはいけない、一線を引く。
けれど子供はその無邪気さで、容易く線を越えてくる。

だから時折、判り易すぎる言葉でもって突き放す。










子供の剣術指南を引き受けてから、一週間が経つ。
飲み込みの早い子供はあっという間に上達し、荒さは目立つが、身のこなしは上手い。
しかし防御に関する事は一向に直らず、危なっかしいことこの上ない。

大人顔負けの打たれ強さは知っているけれど、だからと言って防御を覚えぬ訳にはいかない。
無手の徒手空拳のみで勝負を挑んでくる輩の方が少ないのだから。
山賊の類でも、倒幕を目論む者達でも、皆その手には刀なり鉄砲なりを携えているのだ。
そんな中に無手で挑めば捨て身とは言わぬ、ただの無駄死にになってしまう。


――――だと言うのに、子供はいつまで経っても受身の一つも覚えない。






「……やる気があるのか? 左之助」






……木刀で肩を突いた。
小さな身体は容易く吹っ飛んで、砂利の上に落ちた。

一点に凝縮された一撃の痛みは、打たれ強さを誇る子供にも流石に応えたらしい。
撃たれた肩を抑えて蹲る子供に、見守っていた幼馴染が堪り兼ねて駆け寄った。





「あ、りますっ……!」





幼馴染に支えられて起き上がった子供は、気丈な光を眼光に宿して答える。






「それなら」
「でも!!」






言われた通りに防御を覚えろ、と言おうとして。
阻んだのは他の誰でもない子供で。

木刀を手に立ち上がった子供は、心配そうな幼馴染の身体を退かせる。








「オレは、隊長の為なら、なんだって出来ます。だけど、オレが守りになったら、隊長を守る為に戦えない」








隊長の為。
守る為。

なんだって、出来る。


―――――そう言いながら。




己が“守られる”ことを、この子供は頑なに受け入れない。













「―――――隊長を守る為なら、オレは自分がどうなったっていいんです!」












他の追随を赦さない、何にも劣らぬ特攻精神。
幼い故、考えが足りない故の、無垢で無邪気で残酷な、強い心。

越えてはいけない一線を、容易く越える、幼い子供。
容易く己の生死を投げ捨てて、躊躇すべき境目を迷わぬ子供。



“誰かを守る”為に、“己を守る”ことに気付かない子供。


盲目的に慕われる事が苦しくなるのは、こんな時で。








「―――――――私は、お前に守られたいとは思わない」









幼いお前を失ってまで生き延びたいとは、思わない。
未来への光を摘んでまで生き延びたいとは、思わない。

生きていて欲しいのに、今からまるで死して本望のような言葉を吐くのなら。
戦場に置いて、日々に置いて、二度と己の前には立たせない。
一も二もなく、安全な場所に置き去りにして、全てが終わるまでは二度と隣にも立たせない。



傷付いた顔で立ち尽くす子供から、無理矢理目を逸らす。


優しい言葉で諭すことはしなかった、真っ直ぐで意地っ張りな子供はそれでは納得しないから。
逐一説明した所で、理屈では動かぬ子供の心を宥めるには足りない。

だから絶対的な言葉と態度と、立場を持って、突き放す。














守る為に投げ出そうとする強さを、認めるつもりはない。


今は幼い小さなその手は、いつかもっと大切なものを守る為に戦える筈だから。















未だに隊長を扱い兼ねてます(汗)。
厳しいところは厳しかったんじゃないかと。

子供のうちから、自分の命を捨てる事を考えるな、ってこと。
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