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此処に君がいるから、止められない。
【There is a limit also in intimate relations】
何故こういう事になっているのか。
一から十まで、判るように納得できるように説明して欲しい。
京一の胸中はそんな言葉で一杯だった。
と言うのも無理のない話で、現在京一は、自分自身では到底理解できない状況にある。
場所は京一が通う都内の有名高校、真神学園のとある講堂。
時刻は授業が全て終わった放課後で、空はすっかり夕闇色に染められた頃。
放課後の部活に精を出していた生徒達も、既に帰路へと赴いてからかなりの時間が経っていた。
本来なら、今頃は行き付けのラーメン屋で夕飯にありついているか、『女優』でゴロゴロしている筈だった。
それなのに未だに教室を出られずにいるのは、机の上に山積みにされた補習プリントの所為だ。
最低でもこれらの中身を一通り埋めないと、京一に安息が訪れる事はないのだ。
しかし、今現在の京一は、その面倒臭いながらも義務となっているプリントを片付ける事さえ出来ない状態。
彼が落ち着いているのは、机に向かうための椅子ではなく、机の上。
一つの机につき、生徒が三人は並んで座れる机に、京一は上半身を背中から預ける形になっていた。
幅は広いが奥行きのない机である。
横に寝るならともかく、縦に体を乗せても、腰から肩までしか支えはない。
腹筋の力を緩めてしまえば、首から上は重力にしたがって逆さまになってしまうから、京一は必死だった。
それだけなら降りれば済む話なのだが、腕を拘束されている所為で適わない。
拘束しているものはロープ等ではなく、京一のスラックスに通してあったベルトだ。
机に立てかけていた木刀は、京一が此処に乗った時の揺れで倒れたらしく、床に転がっている。
起き上がりたいけれど、起きられない。
木刀も拾いたいが、拾えない。
その最大の原因と理由は、京一同様、居残り補習をしていた親友・緋勇龍麻にある。
「……何してんだ、お前ェは」
笑みを浮かべて見下ろしてくる龍麻を、京一はぎろりと睨み付ける。
元々穏やかとは程遠い眦が更に凶悪さを帯びるが、龍麻はまるで堪えない。
居残り補習中にあるまじき状態の京一を見下ろす龍麻は、いつもと変わらぬ笑みを浮かべているように見えるが、京一には明らかに違うと判る。
室内に自分達二人しか残っていないから、この底意地の知れぬ笑みが顔を出したのだろう。
だから自分もこんな状況に落ちているのだと。
腰骨の辺りに机の角が食い込んで痛い。
机に乗っているのは背中だけで、下半身は乗り上げていないのだから当然だ。
それからもう一つ、気になっている――――と言うか、心許無い事がある。
ベルトを抜かれている所為で、スラックスが落ちてしまい兼ねない事だ。
サイズに然程の余裕がある訳ではないが、留める物が失われていると言うのは不安になる。
それらを全て判っている上で、親友は笑っているのだ。
机に乗せられた京一の上半身横に手をついて、自分の有利に絶対の確信を持って。
「退け。帰れねェだろ」
「退いても京一はまだ帰れないよ」
それは確かな事実だ。
京一に用意された補習プリントは、全量から計算してまだ半分も残っている。
しかしそれらは机の下にバラバラにぶち撒けられており、そうなった瞬間、京一のなけなしのやる気は完全に折れた。
わざわざ持って帰って片付けようとも思わない、明日の朝まで恐らくこのまま放置になるだろう。
今から数秒以内に犬神が此処へ来ない限り、その予想は現実のものになるに違いない。
後でどれだけ怒られようと、結局はいつかまた補習で居残る羽目になるのだとしても、今日の京一はもう帰る腹積もりだった。
……龍麻が自分の上から退きさえすれば。
「帰るんだよ。だから退け」
「いや」
平仮名二文字できっぱり拒否される。
拘束された腕で龍麻の顔を押し上げる。
それで効果があるとは期待していないが、取り敢えずこのまま大人しくしている訳にも行かない。
「退けっつってんだよ」
「いや」
「こンの……!」
膝で龍麻の腹を蹴ってやる。
が、腹筋に力を入れたのだろう、堅い反動があっただけで龍麻はけろりとしていた。
とにかく腕の拘束だけでも解かなければ。
ぐるぐると無造作に巻かれたベルトは、絶妙な絡まり方をしているようで、いっそ千切ってしまおうかとも思う。
だが案外頑丈に出来ているこの代物は、簡単には裂けてくれそうになかった。
これさえ解ければ本気で全力の抵抗が出来るし、暴れまくれば龍麻も笑ってはいられない。
後は僅かでも良いから隙が生じれば、現状打破は可能になる筈だ。
龍麻の顔を見上げながら、京一は腕を何度も捻った。
千切るのも解くのも無理なら、どうにか緩めて腕を抜くしかない。
状態を確認する事が出来ないのが辛い、見えれば何処をどう弄れば良いか少しは判るのに。
ベルト相手に四苦八苦する京一を、龍麻は明らかに面白がっている瞳で見下ろしていた。
傍目には普段と変わりない表情だが、京一には判る。
他人が聞いたら被害妄想だろうといつも笑われるのだが、京一は絶対の自信があった。
「ふざけた真似してねェで其処から退け!」
「うーん」
「悩むな考えるなッ! つーか考えてもねェんだろ、どうせ!」
辛うじて自由である足をジタバタと暴れさせ、眼前の親友を跳ね除けようと試みる。
しかし龍麻はそんな京一を見下ろしながら、尚も「どうしようかなァ」等と呟いている始末。
その瞬間の微笑みの憎らしい事と言ったら!
腕を擦るベルトの角が痛い。
皮製のそれは鋭利とまでは言わずとも、柔らかなものではない。
幾らか痕になっているのは確実だ。
その手首に龍麻の手が伸び、ベルトのラインが擦れた痕をなぞるように、指を滑らせる。
ヒリヒリとした小さな痛みの隙間を塗って来た緩やかさに、京一の腕が一瞬不自然に硬直した。
「龍麻ッ」
これ以上の好き勝手を許してはならないと、最後通告の如く声を荒げる。
が、それが通じるような相手ではない事は、京一が誰よりもよく知っていた。
「京一、煩い」
「んだと―――――んぅッ、」
噛み付くように唇を塞がれる。
龍麻の唇と舌によって。
ちゅく、と咥内で音がする。
歯列をなぞる生暖かい蠢くものがあって、ぞくりとしたものが背中を駆け上って脳髄を蝕む。
蠢くものは数回歯列をなぞり、隙間が開くと、其処から更に奥へと侵入を果たす。
囚われまいと逃げた舌はあっさりと絡め取られ、いっそ噛んでやろうかと物騒なことを思えば、まるで頭の中を覗いたかのように下顎を捉えられて叶わない。
頭を少し上向きに持ち上げられると、口が更に開いてしまって、侵入者の横暴を許してしまう。
長く続く口付けに、京一は呼吸することを忘れていた。
脳に回される筈の酸素が不足すれば、思考回路の結び目は解け始め、躯は抗う力を失う。
拘束からの開放を求めて諦め悪く捻り続けていた手首は、もう動かない。
辛うじて束ねられた両手が握り開きを繰り返していたが、その程度が何の働きになると言うのか。
背にした机の下をガンガンと蹴っていた足も、次第に勢いをなくし、重力に逆らう事を止めた。
「ん、ん……んぅ…ふ、っは……んん…」
「京一…ん………」
まるで飴でも舐めているかのように、龍麻は執拗な程に京一の唇を貪った。
喰われそうだ―――――と京一は思う。
常の穏やかな印象とは程遠い激しい口付けに、茫洋としながら。
「んぁ…龍、麻……ん、ぅ、ふぅッ……」
手首に触れていた龍麻の手が離れ、京一のシャツを捲り上げる。
火照り始めた肌に触れた外気は、少しひんやりとしていた。
温度差の所為だろうか、微かに硬くなった胸部の頂に龍麻の指先が触れる。
「んッ…!」
ふるりと身を震わせた京一の甘い声は、口付けによって妨げられた。
最後に唇の形をなぞるように舌を這わせて、龍麻は京一の顔から離れる。
ようやっと息苦しさから開放された京一は、ぼんやりとした瞳で無機質な天井を見上げ、呼吸する。
その間にも龍麻の指は京一の躯に悪戯を止めることはなく、若く敏感な躯は素直に反応を示していた。
「っは…あッ、あ…ん、ふぅ……あぁッ……」
「乳首、勃ってる」
「や、め……バカ…んッん、あ、ぅ…」
濃厚な口付けによって高められた官能は、京一の全身をまるで甘い毒のように犯す。
夕暮れ時になって暗くなってきた教室の中。
時折、散らばったプリントを踏んだ瞬間のくしゃりと言う音が鳴る。
それ以外は、もう艶を含み始めた京一の呼吸以外は酷く静か。
龍麻の指先によって刺激を与えられる胸と、未だ触れられてもいない下肢。
どちらも同じ熱を覚えていて、京一はもどかしさと羞恥で身を捩る。
「ひあッ、あ…!」
「下、触って欲しい?」
「んん……!」
問い掛けに、どちらであっても答えるのが嫌で、京一は口を噤んだ。
そんな親友の反応を面白がるかのように、龍麻は勃起した乳首の先端を指先で弾く。
「あ、あッあッ…! やッあ、龍麻…ッ!」
「ねぇ、下も触って欲しい?」
胸板に舌を這わせながら、龍麻は問う。
京一の答えを急かすように、敏感な先端を弄りながら。
机からはみ出た頭を支える気力なんて既になく、京一は喉を露にして、躯は仰け反る姿勢になっていた。
肩幅より少し大きめに開いた足の間には龍麻がいて、京一に覆いかぶさる彼には、親友の躯が今どんな状態であるのか感じ取れている筈。
だのに龍麻は自ら手を伸ばす気はないようで、親友の返事を待ち、上半身ばかりを刺激する。
「はひッ、あ、ん、ううッ…」
胸ばかりを集中して攻められて、後の期待は何もない。
開発された躯には、それは緩やかな拷問だった。
しかし、だからと言って自ら望みを口にする事は出来ない。
何せ此処は学校の教室で、今自分達は補習中なのだ。
この補習を言いつけた犬神が何時戻ってくるのか判ったものではない、仮に最中に教室のドアが開こうものなら、京一はその瞬間に死ねる自信がある(威張れるものでもないけれど)。
―――――それを差し引いても、京一の性格が、相手に“請う”と言う行為を簡単に赦せない。
「っは…ん、う……くぅッ…!」
「……んー……」
何度促しても、貝の如く口を閉ざす京一に、龍麻は眉尻を下げる。
困ったと、判り易い表情を浮かべつつも、情交を止めるつもりはなく、クリクリと指先で京一の胸を弄っていた。
「言わないんだったら、教えてあげるよ」
「はッ…? はあ……?」
突然の龍麻の言葉に、どう言う意味だと京一は顔を顰めた。
腹筋に力を入れて頭を持ち上げ、龍麻を見る。
龍麻は、にっこりと何とも楽しそうな顔を浮かべていた。
――――――野性の感が“危険”の鐘を鳴らすまで、時間はかからなかった。
「待て、龍ッ……うわ!」
「暴れたら駄目だよ。プリント余計に散らばるよ?」
京一の躯を引っくり返して、仰向けからうつ伏せに。
敵に背中を向ける(敵ではなくて親友なのだが、このシチュエーションでは完全に敵だ)格好に、京一は更なる嫌な予感を覚えて肩越しに後ろを見やる。
拘束した腕を支えに起き上がる事を妨げる為だろう、京一の背中には龍麻の腕が乗せられている。
重力プラス体重で押さえつけられては、容易く跳ね除けることは出来ない。
結果、京一の腕は自身の体の下敷きにされ、背後の力に抗う術は完全に封じられた。
「プリントなんか今更だッ! つーか何しようとしてんだ、お前は! いやなんでもいいから、とにかく止めろッ!」
膝で机を蹴りながら、京一は無駄な抵抗と判っていながら叫ぶ。
現状で流される事は自分のプライドが赦さなかったから、もうそれしか出来る事はなかった。
机がガタガタと煩い音を立てて揺れる。
龍麻はそれも気にした様子なく、寧ろ心配しているのは床に散らばったプリントの方。
後で集めるの大変だなぁと呟くのが聞こえ、じゃあ今すぐこの行為を止めて集めろと言いたくなる京一だ。
だが京一の願いも空しく、龍麻は京一の背中に覆い被さって来る。
拘束の為にベルトを抜いた為に既に緩んでいたスラックスに手をかけ、擦り落とした。
「龍麻ッ!!」
肩越しに睨んだ親友の瞳が、嫌に楽しそうに見える。
スラックスが床に落ちて、京一愛用のパンダ柄のトランクスが晒される。
「京一って案外可愛いもの好きだよね」
「~~~~~~ッッ!!!」
「そういう所、可愛くて好きだよ」
耳たぶにキスが降って来たが、京一はそんな事に構ってはいられない。
パンダ柄のトランクスなんて、子供っぽいのは判っているつもりだ。
他者から見た自分のキャラクターと違うのも。
高校生にもなって――――と自分で思わないでもない。
しかし、どうしてか―――習慣になっているのか、どうしても無意識に選ぶのはこんな柄だ。
他人には絶対に見られたくないから、体育の着替えの時でもさっさと済ませてグランドに向かっていた。
夏のプール授業もそれは同じで、なるべく人には知られないよう、気付かれないようにして来た。
………なのに。
一番知られたくない人間に知られてしまって、この羞恥と歯痒さと言ったら最高レベルだ。
言い触らすような人物ではないのが唯一の救いかも知れないが、知られた時点で京一のプライドはズタボロである。
それでも無意識に選んでしまい、履くのは止められないのだが。
耳まで真っ赤になって突っ伏す京一に、龍麻はくすりと笑う。
愛用のパンダも脱がせれば、引き締まった臀部が外気に晒される。
龍麻は手のひらでそのラインをなぞった。
「てめッ、龍麻!」
「何?」
「なんかやらしーんだよ、止めろッ」
「やらしいのは京一だよ」
抗議の声をさらりとかわして、龍麻は京一の股の間に手を潜らせて前部に触れる。
「あッ……!」
ビクッと京一の躯が跳ね、甘い声が漏れる。
前部は触れられてもいなかったのに、竿は既に半勃ち状態。
袋をやわやわと揉んでやると、京一は机の縁を縋るように握り、ふるふると躯を震わせた。
「気持ち良いんでしょ?」
「んッ、あッ、や…! やめ、龍麻ッ……」
「ほら、やっぱり京一の方がいやらしいよ」
吐息がかかる距離で耳元で囁かれ、京一の官能は更に高まる。
くにゅくにゅと柔らかな袋を強弱をつけて揉む手。
それにより、雄は少しずつ頭を持ち上げて行く。
抵抗を抑える為に背中に乗せられていた腕が離れ、代わりに龍麻が覆い被さる。
空いた手がまた下肢に伸びて、京一の雄を扱く。
強くなる快楽の刺激に、京一はいやいやするように頭を振った。
「あ、ひぁッ、あッ! 龍麻、やめっえ…は、あぁああッ…!」
刺激された雄はみるみる内に膨張し、あと少しで達すると言う所まで来た。
その頃には京一の足は殆ど力を失い、自重を支える事も出来ない。
それを龍麻が押し開くように内股を押すと、力の作用に素直に従い、秘孔が露出する。
ヒクヒクと伸縮を繰り返す其処は、明らかに刺激を欲している。
「京一のココ、物欲しそうだよ」
「んんッ……!」
秘孔を指で突付かれて、ひくりと京一は躯を仰け反らせた。
つぷり、龍麻の指が入り口を広げて入り込む。
異物感よりも期待感が勝って、京一はそんな自分に歯を鳴らす。
快楽に慣れてしまった躯と心が悔しくて――――けれど、背後の存在を拒否する事も出来なくて。
羞恥と、迫る期待を押し隠そうと口を噤む親友に、龍麻は双眸を窄めて指を抜き差しする。
出て行っては入り、入っては出て行くそれは、決して奥へ進もうとはしない。
「んッ、あッ、やだ…あッあひッ、んぁあ…!」
「京一、可愛い。お尻振ってる」
「んぅ……あぁああ……ッ」
囁かれる言葉に耳が熱くなるのを自覚しても、腰の揺れは止められず。
秘孔から指が出て行く度に、京一は甘やかな声を漏らして身悶えた。
秘孔を攻めると同じく、龍麻のもう一方の手は京一の前部も刺激する。
指で輪を作って根元から先端まで扱き、太い部分を爪先で擦り、時折指の腹で押してくる。
敏感な箇所を同時に攻められて、京一の脳内は次第に、確実に蕩けて行く。
未だ微かながら理性が残り、羞恥を覚えているけれど、それも直に欲望の熱に押し流されそうだった。
何度も指を抜き差しされて、秘孔からちゅぷちゅぷと言う卑猥な音が聞こえて来る。
いつの間にか二本に増やされていた其処に痛みはない。
既に其処は受け入れる器として出来上がっていた。
「た、つま…たつま、龍麻ぁッ……!」
「うん……あげるよ」
夢中で腰を揺らす親友の痴態に、龍麻もまた興奮冷めやらず。
京一の秘孔を二本の指で押し広げながら、自身の下肢を寛げた。
机に上半身を乗せていた京一は、臀部を差し出すように龍麻へと突き出している。
其処に埋めていた指が抜かれて、代わりに太く熱く脈打つモノが宛がわれる。
龍麻は京一の肩を引いて上半身を起こすと、腕を支えにさせた。
だが下肢の方はまるで力が入っておらず、龍麻が腰を掴んで支えていなければ呆気なく膝から崩れるだろう。
その状態をキープさせて、雄を確りと入り口に宛がってから、龍麻は京一の腰を掴んでいた手を離した。
「あぅうぁぁあああッッ!」
龍麻が思っていた通り、膝から体勢を崩した京一は、自重によって龍麻の雄を受け入れる事になる。
待ちに待ったその刺激に、肉壁はきつく締まり、龍麻に痛みさえ与えた。
一瞬痛みで顔が引き攣った龍麻だったが、直ぐにいつもの調子を取り戻すと、再び京一の腰を掴む。
今度は支えて浮かせる事はなく、律動の突き上げに合わせて腰を引き寄せ、京一の奥を抉ってやる。
「あッあッ、いあッ! んあ、あうぅッ!」
「んっく…う…っは……京一ッ…」
「いあ、ああ! た、つまぁッ! ん、っくぅ…! あぁ…!」
机の縁を確りと握り、腕を立たせて、京一は腰をくねらせる。
拘束によって纏められている手首には、赤い痕が蚯蚓腫れのように浮き上がっていた。
身を揺らせれば更に擦れるそれを、もうどちらも気にしてはいない。
「やっぱり、…京一って、やらしいね」
「あぅ、あッ、あッ…んん、ふぁ、っはぁ!」
「こんな所でお尻出して挿れられて、こんなに感じるんだもん」
「ん、それはッ…ふぁ、お前、がぁ……あぅんッ!」
こんな事するから――――と言い掛けて、出来なかった。
最奥を擦り抉られる快感に、甘い悲鳴しか出て来ない。
放課後の学校、誰もいない教室。
居残り補習で取り残された自分達。
床に散らばった白紙の問題プリント。
いつ戻ってくるのか判らない教師。
今にも開かれるかも知れない教室の扉。
妙なスリルと緊張感があって、京一は興奮している自分に気付いた。
同じように、龍麻も場所も時間も問わず乱れる京一に、昇り高ぶる己の欲望を自覚する。
スラストに合わせて揺らめく細い腰。
龍麻はそれを壊さんばかりに、自らの腰を激しく揺らして自身の欲望を愛しい親友へと叩きつける。
「っは、あ…も…むりッ……龍麻ぁ…!」
「僕、も……ッ」
京一の痴態に、龍麻が興奮するように。
龍麻が限界を絶える声音に、京一もぞくりとしたものを覚える。
互いの躯は麻薬のようで、一度嵌ると抜け出せない。
不足したら、場所も時間も問わずに摂取しないと禁断症状が起きそうだ。
……だからこんな場所でも、繋がってしまえば夢中になって熱を貪るしか、解放する術はない。
「あッ、イくッ…! 龍麻ぁ、イっちま……」
「ん、う、うぅぅッ……!」
「っひ、い、ああぁ――――――ッ!!」
どくり、熱を吐き出す感覚にさえ快楽となり、京一は大きく身を震わせる。
同時に強く締め付けられた龍麻も、京一の体内へと濃い蜜液を注ぎ込んだ。
卑猥な音を篭らせて、結合部から粘着質な蜜が零れ出す。
京一の雄から放出された白濁は、受け皿がなかった為に、机、床、足元のプリントを汚していた。
しかし肩で呼吸を繰り返す二人は、そんな事に気付ける程の余裕はなく、
―――――龍麻に至っては、
「京一、もう一回」
「あぅんッ…! ば…ちょッ……あ!」
京一の制止を無視して、また律動を始める始末。
結局京一が教室を出る事が出来たのは、宵闇が西の空まで完全に染め切ってからだった。
居残りの生徒の下へ犬神が戻ったのは、空の茜が漆に侵食されてからの事。
山積みのプリントを全て終えるには、それ位の時間は入用だと思い――――案の定、それは的中した。
廊下の窓から様子を伺ってみた段階で、居残り二人の内一人は既にプリントを片付けていた。
時間がかかるだろうと見積もったもう一人は、これもまた予想通り、相棒の答えを丸写し状態。
とにかく今だけやっつけてしまおうと言う姿勢は明らかだったが、今更なので特に感慨は沸かない。
寧ろどんな方法でも良いから片付けてくれないと、彼等も自分も帰宅できないのだから、此処で文句をつけて振り出しに戻しても疲れるだけなのだ。
犬神は暫く廊下に留まって、丸写し作業が終わるのを待った。
やや時間が経った頃、作業を終えた少年がぐったりと机に突っ伏したのを期に、入室する。
「犬神先生」
「てめッ、何処行ってやがった!」
一人はのんびりと会釈、もう一人は噛み付いて来る。
「手前ェがどっか行った所為で、こちとら大変だったんだぞ!」
「何がだ」
「何がって―――――」
問い掛けた犬神に、京一は続けざま噛み付きかけて尻すぼみする。
その顔に朱色が上っているのが見えたが、犬神は知らぬ振りをしてプリントの回収に回った。
綺麗な文字に埋められたプリントが緋勇龍麻。
殴り書き走り書き、ギリギリ読めるプリントが蓬莱寺京一。
自力にしろ他力にしろ、終わっている事は終わっているようだ。
しかし。
「枚数が足りないな」
担当教科以外のものも含め、プリントは犬神が用意したのだから、その枚数も勿論覚えている。
数えてみればそれぞれ四枚分が足りず、それらは足元に落ちている様子もない。
何処にやった? と無言で問うてみれば――――――龍麻は満面の笑み、京一は真っ赤になっている。
「~~~~~~るせェッ! 知るかよ、ンな事!」
「僕も知りません」
「手前ェの勘違いだろ、どーせ! とにかく終わったんだ、オレは帰るからなッ!!」
中身の薄い鞄と木刀を担いで、京一は足早に廊下へと向かう。
龍麻も犬神に一つ頭を下げて、直ぐに相棒を追い駆けた。
随分と上機嫌な龍麻に比べると、京一は頗る機嫌が悪い。
待ってと言う親友の言葉に耳も貸さず、すたすたと足を進めて教室のドアに手をかけた。
―――――と、其処で犬神は二人を呼び止める。
「蓬莱寺、緋勇」
「はい」
「ンだよ!?」
今直ぐにでも教室を飛び出して行きたい。
京一はそんな形相だ。
尖ったその眦に睨みつけられた所で、犬神は欠片も動じることはなく。
「仲が良いのは結構だが、程々にしろよ」
……犬神が告げたその言葉に、京一一人が声にならない悲鳴を上げるのだった。
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放課後の教室でえっち!!
……でもプレイ内容は毎回同じような気がする(進歩しねぇ…!)
ラストの犬神先生が書きたかった(笑)。
タイトルは諺「親しき仲にも礼儀あり」をちょっと変換。
「親しき仲にも限度あり」です。