例えば過ぎる時間をただ一時でも止められたら。 忍者ブログ
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05 一生ついていきます!









何処が良いのかと言われると、正直言うとよく判らなかったりする。
それは“なんとなく”と言う意味ではなく、示す答えが多すぎて、絞れないのだ。






強さに惚れた。
これは確かだ。


仮にも自分達は“墨田の四天王”であり、そこそこ名も有名で、強さも自慢できたと思う。
名を聞いただけで恐れ戦く連中もいた訳だから、決して伊達ではなかったのだ。

しかし、あの人はその上を行く。
先ず複数対一と言う状況に躊躇いもしなければ、遠慮なく相手を叩き伏す実力がある。
吾妻橋達に至っては、まるで本気で相手にして貰えた事がない。
彼が愛用の木刀を使って自分の相手をした記憶は、終ぞ吾妻橋の中に見当たらなかった。
それは少々悲しかったりするのだが、つまり、彼はそれ程に実力を持っているのである。



容姿に惚れた。
…変な意味ではない。


勝負以前に相手を射抜く、鋭い眼光。
自分の優位を揺るがせない、絶対の自信を浮かべた笑み。

歌舞伎町内でもそこそこ美形だと言われている。
その整った面立ちは、時に冷たい光を帯びたようにひたりと動かなくなったり、時に子供のように崩れたりする。
学友と過ごす時にはふざけあったり、『女優』で過ごす時には偶に赤くなったり。
最初は吾妻橋を莫迦にしていただけだった顔は、次第にその波紋に浸るようになった。
初めて笑いかけられた時などは、口から心臓が飛び出るなじゃにかと思った程である。



性格に惚れた。
これも間違いない。


ぶっきら棒な顔をして、何事にもシビアな意見を持つのに、その内心は情に厚い。
人を突き放すのは素直でない優しさの裏返し、“足手まとい”は“巻き込みたくない”に近い。
恨まれるのを承知の言葉選びは、相手を気遣わせない為。

友人知人が危険な目に遭っていると聞けば、何処にいようと探し出す。
相棒がいなくなった時にも、彼は吾妻橋を引っ張り出して、遠い場所まで探しに赴いて見つけ出した。
吾妻橋達がチンピラに囲まれている時も、何処からか現れてはそれらを蹴散らして。
礼を言えば、赤い顔を隠して、なんでもない事だと言うのだ。
ラーメン一杯でチャラな、と笑って。





ざっと上げてみたが、この中のどれが一番割合を占めているのかなんて判らない。

吾妻橋にとっては全てが魅力的であり、惹かれて已まないものだ。
どれかに絞って、明確な答えを出せというのが甚だ無理な話だった。



ああ、でも。
あの声が一番、好きなのかも知れない。

どんな異形を前にしても、躊躇わずに響くあの声が。













「―――――――行くぜ、吾妻橋!」













だから、例えあの人が何処に行こうと、其処に何があろうと、
一生、この人について行こうと決めたのだ。













----------------------------------------

京ちゃんのあの台詞が大好きです。
ゲームでもアニメでも、外法でも、言われるとやる気が出ます。
アニメ終局戦前に毎回言ってくれたのが凄い嬉しかった。

吾妻橋達は、どっちかって言うと「行くぜ!」より「もっと飛ばせ!」とかの方が言われてますね。

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04 やっぱりあなただから









今ではすっかり、“歌舞伎町の用心棒の舎弟”が板について来た吾妻橋ではあるけれど。
これでも一応、京一に負けるまでは“墨田の四天王”の一角としてそこそこ有名だったのだ。

となると、その筋の連中にはそれなりに顔も名声も知れ渡っている訳で。







「お前みてェな奴が、あんなガキの下についてるなんざァ勿体ねェな」







他のメンバーと共に、路地の裏手で乱闘をした後。
全員を地面に静めた所で、恐らく連中の上にいるのだろう人間が物陰からひょっこりと顔を出して、そう言った。

高い身長にガッチリとした体格、裂傷だらけの顔。
吾妻橋の右半身も大層な事になってはいるが、恐らく、男の傷は見えない場所にも無数にあるのだろう。
そう思わせる程、男の放つオーラは尋常なものではなかった。


が、生憎、吾妻橋はその程度で怯える程小さい心臓をしていない。
それもこれも、敬愛するアニキ分とつるんでいる内に鍛えられたお陰だ。



煙草を吹かしながら、明らかに堅気でないだろう男はゆっくりと近付いてくる。






「墨田の四天王をナマで見たのは初めてだが、こりゃあ大したもんだ」
「そりゃありがとうよ。んじゃ、其処退いてくれるか」






鉄パイプを肩に担いで言えば、いやいや、と男は含みを持たせて笑う。






「まぁ、ちょいと話を聞いてくれよ」
「どーせお宅の組入れとかの類だろ。興味ねえんで、俺らァ行くぜ」






その手の話なら、今までにも何度か来た事はある。
以前はそれを、何処に属する気もないからと断っていた。

応じる気がないのは、今でも変わらない。


しかし、相手側からすれば今と以前とで、吾妻橋達の立場は僅かに変わっている。

何処に属するでもなく、同時に幅を広げていた墨田の四天王が、“歌舞伎町の用心棒”の舎弟になった。
他者につく気になった―――――と言うのが、周りから見た認識だ。
ならば、どうにかして此方側に引き込む事は出来ないかと、あれこれ画策しているのである。






「幾ら“歌舞伎町の用心棒”っつったって、ありゃあガキじゃねえか。大して得もねェだろうよ」






確かに、それは否定しない。
損得勘定が頭にあっては、高校生の下につく事はないだろう。

だから、吾妻橋達が彼の舎弟になったのは、決して損得勘定ではなく。






「理屈じゃねえんだよ、あの人の持つモンってのは」






例えば、平時に見せる年相応の顔だとか。
例えば、目の前を塞ぐ相手を睨む眼光だとか。
イタズラ好きな子供のような笑顔とか。

学友達と何気ない話をしている時の表情も、威嚇するように吼える覇気も。
吾妻橋はそれを傍らで見ているだけで、惹きつけられて止まない。



強面の男は、判らんなァと煙を吐き出す。
それを見ずに、吾妻橋達は路地を後にした。




そうして、埃だらけの薄汚れた道から抜け出して、











「おう、お前ら。なんか面白ェことねェか」










見付けた光は、強く、強く、眩しくて。

だから、この人について行こうと思うのだ。
暗い世界で、まるで太陽のように生きるから。













----------------------------------------

ついて行きます、何処へだって、何処までだって。

鬼との戦いに巻き込まれても、自ら足を志願する墨田四天王。
舎弟の鏡。

03 たまには反抗









ひゅん、と空を切る音がビルとビルの隙間で鳴った。

街灯にさえ忘れ去られた暗い道の中心で、立ち尽くす少年が一人。
それから、少年の足元に転がる男が数人、壁に追いやられていた男が一人。






「おう、無事か? 吾妻橋」






未だピクピクと動いている男の後頭部を、とどめとばかりに踏みつけて。
足元のそれらを一瞬で忘れたような顔をして、京一は舎弟を見遣る。


壁に追いやられていた吾妻橋は、酷い風体だった。
左半身の大きな裂傷は既に見慣れたものであったが、それ以上に、暗がりでも判る青痣が目に付く。
拳大の大きさの青痣は、地面に転がる男達が作ったものだ。

吾妻橋は、自惚れでなく、それなりに腕が立つ。
しかし地面に転がった男達の人数はかなりのもので、流石の吾妻橋も苦戦を強いられた。
京一が途中乱入して来なかったら、今頃どうなっていたか、考えるだけでも恐ろしい。






「へぇ、すいやせん……お手間かけやして」
「オレよか、キノコ達に礼しとけよ。ぎゃあぎゃあ騒いでオレに知らせに来やがったんだ」
「へい」
「折角ムッツリのオゴリでラーメン食えるトコだったのによ」
「へぇ……」





そいつは本当に、と吾妻橋はもう一度謝る。
京一はひらひらと手を振って、もういい、と言外に示した。

その手に滴る色を見つけて、吾妻橋は目を見張った。






「アニキ!」
「あ? ――――うぉッ」






京一の手を捕まえて、ついさっきまで木刀を握っていた手を開かせる。
其処にはべっとりと赤い液体が付着し、それは掌に斜めに走る切り傷から溢れていた。
木刀を握っていた所為だけではないだろう、相当な出血。

確かに、チンピラの一人がナイフを持っていたし、京一は一度それを受け流すために手を犠牲にした。
吾妻橋もそれを見ており、覚えていたが、此処まで深い傷を負っていたとは思っていなかった。


呆然と手を見下ろす吾妻橋に、京一は失敗したと眉間に皺を寄せる。






「……どうって事ねェよ」






言って掴む手を振り解こうとするのを、吾妻橋は許さなかった。






「ねェ事ねェですよ!」
「って言ってるお前の方が重傷だろが」
「あっしのは殴られただけっスよ! アニキは切られてんじゃないスか!」
「此処だけだろ。お前、全身ボロボロじゃねえか」
「俺ァ平気ス!」






オレだって平気だ、と言う京一を、吾妻橋は聞かなかった。


包帯なんて此処にはないし、晒しも巻いていないし、ハンカチやティッシュなんて気の利いたものも持ち合わせていない。
何かないかとジャケットやズボンのポケットを探りに探るが、使えそうなものは見つからなかった。

吾妻橋が何をしようとしているのか察しがついたのだろう。
京一は掴まれた手をどうにか振り払おうと、二、三度手首を捻ってみるが、意外にもビクともしない。






「いらねーよ、いらねーからお前はさっさと…」
「いえ! アニキが先です!!」






病院にでも行け、と言おうとしたのだろう。
それを遮って、吾妻橋の声が狭い雑居ビルの隙間に響く。

舎弟の思いもよらぬ声に驚いたのだろう。
一瞬、京一の肩が跳ねた。



はっと思い立って、吾妻橋は自身のネクタイを解いた。
ケンカの後である事を差し引いても、綺麗な代物ではないが、ないよりはマシだ。


この尊敬する人が誰よりも強い事は知っている。
だから自分が今やっている事は、単なるお節介と大きなお世話と言う奴だ。
それに、自分がこれに気付かなくても、行き付けの病院に行けばそれで済む。

だけども、見付けてしまった。
見付けてしまったら、もう気になって仕方がない。






「……いらねえっての……」






京一が呟いた時には、掌の傷は既に隠されていた。



尊敬している人だ。
その人が信じる剣を握る為の、大事な手だ。
ならば吾妻橋にとっても、大切な手だ。

ぞんざいに出来る訳がなかった。




京一はしばらくネクタイに覆われた手を見て。
汚ェネクタイと呟くのが聞こえて、吾妻橋は頭を下げた。

だから、見えなかった。


くるりと背中を向けて歩き出した京一が、瞬間、どんな顔をしていたのか。











「行くぜ吾妻橋、おごってやっから感謝しろよ」
「ま、マジですかい!? アニキィイイイイ!!」
「抱きつくなっつーの!!」














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たまの反抗だって、愛あってこそ。
うちの舎弟達はやたらと京ちゃんに抱きついてるなぁ……俺と変われッ!!

02 表/裏









表と裏が激しい、と言うのか。
オンオフの差、と言うのか。

どっちにしても、ギャップがある。







“歌舞伎町の用心棒”として名の知られた人物は、その実、まだ高校三年生の歳なのである。
幾ら腕っ節を買われ、歌舞伎町のならず者から恐れ戦かれていようと、その本分は学生だ。

そんな訳で、夏休みや冬休みなど、長期休暇になると、遊んでばかりもいられない訳で。






「アニキ……大丈夫っスか?」






一向に埋まらない問題集を前に、今にも頭が沸騰しそうな京一。
その隣で、敬愛するアニキの様子に、今にも心配で頭が破裂しそうな吾妻橋。


京一の勉強成績は、ハッキリ言って宜しくない。
授業をサボっている事だけが原因ではないだろう、居残り補習に呼び出される回数も半端ではない。
その度に詰まれた補習プリントは尋常ではない量で、いつも学友達の手を借りて、漸う片付いているのが現状。

そんな京一が一人で課題を片付けようとしても、口に出せば確実にブッ飛ばされるが、手が進む筈もないのである。
普通に授業を受けていれば習った筈の内容や、漢字の読みさえ、時に滅茶苦茶になってしまう程なのだから。






「~~~~~~っがぁぁああッ! くそッ!!」






煮詰まった末の噴火は、これで何回目だったか。
その都度吾妻橋が宥め、もう一回頑張りましょう、の繰り返し。

吾妻橋が教えられるものなら、もう少し捗るのだろうが、生憎。
アニキがアニキなら、舎弟も舎弟で、此方もやはり頭が宜しくない事を自覚している。
よって出来る事と言ったら、教えることではなく、一緒に答えの解き方を模索する事だった。


シャーペンを放り投げて、京一はソファの背凭れにどさっと背を落とす。






「判んねェッ!!」






いっそ気持ち良い程に潔い宣言。
が、それで赦される訳もない。






「でも京ちゃん、今週中に片付けるんでしょ?」
「そーだけどよ!」






アンジーの言葉に、京一は拗ねたように声をあげた。
畜生と呟く京一にアンジーは苦笑して、宥めるように両肩を叩く。



課題は一向に進まないのに、片付けたつもりのスケジュールが京一の頭にはもう出来上がっているらしい。
なんでも、剣道部の大会が近いらしく、万年幽霊部員でも、肩書きは一応部長なので、顔出しぐらいはしなければならないと言う。
顔を出せば必然的に後輩の指導やら、大会への打ち合わせもあって、勉強に長々と費やす時間はない。

大会後には真神メンバーとも遊ぶ予定があって、そうなれば課題なんて頭から抜け落ちるに決まっている。
時間のある内に片付けておかなければ、大会後に更に地獄が待っている事になる。




宥められて、京一はギリギリ歯を噛みながら、放り投げたシャーペンを拾う。
喧嘩の時とは違う渋面で、京一は再び紙面に向かった。

その時だ。








「アニキィ!」
「アニキ、助けてくれ~!」








駆け込んできたのは、吾妻橋以外の墨田四天王。

突然の事に京一と吾妻橋は眼を丸くする。






「なんでェ、お前等」
「どうしたァ?」






京一と吾妻橋からの問いに、キノコが店の入り口を指差す。
半開きになっている其方へ目を向けると、どう考えても物騒な雰囲気が漂ってくる。

――――――それに気付いた京一の顔が、変わる。










「てめェら、奥に引っ込んでな」









例えるなら、獲物を見つけた肉食獣。
鋭利に光る眼差しに、誰も逆らえる者などいない。












突き刺さるほどに鋭い眼と。

拗ねた子供のような目と。



そのどちらもに、心底惹かれているから、どうしたって離れられない。














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喧嘩や戦闘の時は半端なく格好良いのに、勉強事になるとからっきしの京ちゃん(笑)。
補習のシーンや、犬神に「ザマーミロ!」とか言ってるシーンが可愛い……

01 絶対服従…のハズ








あの人と逢ってからは、まるで怒濤のような日々。



訳の判らない化け物は出てくるし、其処でそいつと対峙するあの人を見た。
ありゃあなんスかと聞けば、最初ははぐらかされていたが、粘って粘ってようやく話して貰えた。

その話にまた引っ繰り返る羽目になった。
だって目の前の人には不思議な《力》があって、その《力》を駆使して東京中にはびこる化け物を退治しているなんて。
普通に聞いてああそうですか頑張ってくださいなんて言葉が出てくる方が、はっきり言って可笑しい。
でも、冗談でそんな話をする人じゃないとも判っていたから、出来る事があるなら協力したいと思った。


最初こそ敵対関係(あの人がどんなに相手にしていなかったとしても!)だったが、今ではすっかり舎弟が板についた。
足に使われることだって、パシリにパンを買いに走らされる事だって、吾妻橋にとっては立派な仕事となっていた。

しかし、しかしだ。



譲れぬものはあるのだ、どうしても。
自分の死活問題であるから、尚更。









真神学園の屋上で、今日も今日とて昼食を賭けての丁半勝負。


京一が籠を持ち、サイコロを振って床に押し付ける。






「丁!」
「じゃあオレぁ半だな」






四天王代表として吾妻橋が唱えれば、京一は逆に賭ける事になる。

籠が持ち上げられて、二つのサイコロは5と6の目。
五六の半、京一の勝ちだ。






「あーッ!!」
「ほれ、其処の焼き蕎麦パン寄越しな」






コンクリートに転がって地団駄する吾妻橋に、無情にも京一の手が伸ばされる。
それは賭けの対象となっている昼食のパンの接収である。
間違っても、吾妻橋を起き上がらせる為に差し伸べられたものではない。


内容が可愛らしいものであろうと、賭けは賭け、そして負けは負けだ。
勝負の世界は無情なもので、勝者には至福を、敗者には絶望を運んでくる。

こうして毎回、食事を巻き上げられる。




しかし、今回は吾妻橋も引き下がれない事情があった。






「こいつだけは勘弁して下さいッ!」
「ああ? 舐めた事言ってんじゃねーよ」
「だってアニキ、これまで巻き上げられたら、俺ら昼飯なくなっちまいますよ!」





そう。
吾妻橋達が残している昼食は、この焼き蕎麦パン一個だけ。
これを取られてしまったら、空きっ腹を抱えて街を彷徨う事になる。

毎回遠慮なく巻き上げられているとは言え、今回だけはキツい。
何せ今朝から少々物騒事に巻き込まれて、今の今まで飲まず食わずなのだ。

大の男四人で一個の焼き蕎麦パンを分け合うなんて惨めだが、ないよりはずっと良い。



お願いしますと土下座する吾妻橋に、他の三人も続く。






「この負け分は、後日必ず!」
「頼みます!」
「後生ですから!」
「アニキィ~ッ!!」






コンクリートに頭を擦り付ける舎弟四人。
その勢いに、京一は若干引いていたが、頭を下げたままの四人はそれに気付けない。



飢餓と言うのは恐ろしい。
吾妻橋達は、相当切羽詰っていた。
パン一個を守るのに必死だ。


あまりにその必死さが全身×4で滲み出て来るものだから、流石の京一も同情する。
ついでに、そんなに腹が減ってるのなら昼飯賭けたりなんかすんじゃねーよ、とも思った。

京一はそう思っていたが、吾妻橋達にとって、この一時は一日の楽しみなのだ。
敬愛するアニキに(例えイカサマされる事があろうとも)相手をして貰えるのだから。
その為なら、どんなに巻き上げられようと、こうして賭けを挑む。






「………あーッ! 判った判った、ついでにツナサンド返してやっから、早く食え」






がしがしと頭を掻いて、京一は催促していた手を引っ込める。
その上に、前の勝負で取り上げたサンドイッチを放り投げて返した。

ポトリ、吾妻橋の頭の上にツナサンドが落ちて。









「「「「アニキィイィィ~~~~ッ!!!」」」」
「ぎゃあああッ抱き着くな―――――ッッ!!!!」









―――――元気だね、と呟く龍麻の声は、喧騒に埋もれて聞こえなかった。












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ええ、賭博のシーンが好きなんです。