例えば過ぎる時間をただ一時でも止められたら。 忍者ブログ
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06 引き裂かれる運命











いずれは、この手を離さなければならなかったのだから。










泣きそうな顔で、不安そうに見上げてくる子供を、抱き締めてやりたかった。
だけれどそうしたら、無理にでも連れて行きたくなるから、止めた。


いい機会だと、思ったと言ったら、この子は泣くだろうか。
本当の意味を教えなかったら、きっと誤解してしまうに違いない。
でも、その方が良いのかも知れない。

この子は、自分に傾き過ぎているから。








「相楽隊長……」








預けた刀から解放された手が、心許ないように彷徨った。
その手を掴みたくて、でも引きずり込んではいけないから、自制する。
子供はそれさえ振り切って、幼い手を掴んで引っ張って欲しいのだろうけれど。



子供がどんなに自分に傾倒したとて、許される範囲には限りがある。
そして自分がどんなに子供の事を許したとて、それにはいつか限界が来る。

幼い手を引いていられるのは、幼いうちだけだと判っている。
でも子供は幼いから、そんな事は知らない。
いつまでもその手を繋いでいられるのだと、信じて疑うことはない。
誰に何を言われたとしても。


だから離す事が出来る内に、解放してやらなければならなかった。


けれど、過ごす刻が増えて行く度、繋いだ手を放したくないと思ってしまう。
このままずっと手を繋いで、時間が止まれば良いとさえ。

―――――それほど、この子の手はとても心地の良いものだったから。








「大丈夫」
「…………」








子供はいつか大人になって、大人の庇護から解放される刻が来る。
その時になってまで、この手を繋いでいては駄目だ。


だから、いい機会だと思った。
だってこれ以上一緒にいたら、引きずり込んでしまいたくなる。

子供の未来を潰してでも、同じ場所に堕としてしまいたくなるから。



まだ、それに自制が効く程には、後戻り出来るから。









「心配するな」









いつか。
いつか。

子供がいつか、大人になって。
庇護が必要でなくなっても、この手をもしも繋いだままでいたとしたら。
きっと誰かに引き離されてしまう日が来るだろうから。



その前に、手を離そうか。

お前の未来がまだ、透明なままでいる今の内に。











いつか、何も知らぬ誰かに無情に引き裂かれてしまうくらいなら。


私の手で、お前を此処から解放しよう。














これじゃ隊長エゴイスト……(汗)
てゆか、隊長書くたびに性格が違う…?
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