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いい目をしてんなァ、と言われた。
年の頃は、左之助の父の上下エ門よりも一回りほど上の隊士。
左之助と同じ農村の出で、家族はいないが、孫が生きていたら左之助と同じ年頃だと言って頭を撫でた。
今はいないと言うその理由を、左之助も克弘も、聞いた事はない。
赤報隊に入隊する以前、一時期、易者として食っていた時期があると言うその隊士は、何かしらの折に左之助と克弘の顔をじっと見て、そんな事を呟いた。
隊士の呟きに対する左之助と克弘の返事は、大抵がこんなものである。
「目はいいぜ」
「オレはそうでもないと思うけどな…」
先が左之助、後が克弘だ。
この台詞に、隊士はいつも笑った。
元易者の隊士だけでなく、周囲で話を聞いていた他の隊士、時には隊長もが笑ったのである。
左之助と克弘は笑われている意味が判らずに、いつも顔を見合わせる。
それからいつも、左之助の方が切れた。
「なんだよ、笑うなよッ。いいからいいって言ってんじゃねーか!」
地面を踏んで憤慨してみせる左之助に、元易者の隊士が言った。
「そうそう、いいんだよ。お前も克弘も、いい目をしてんだ」
「だから、」
「ああ、お前らの言いたい事は判ってる。でもその話じゃねえんだ」
隊士の言葉に、だったら説明してくれよと左之助が詰め寄る。
克弘は目したままだが、気持ちは同じなのだろう。
じっと隊士を見つめたまま、逸らさない。
「俺ァな。人相を見てんだ。目だけじゃなく、顔全部を見て、お前らの人となりを見てるのよ」
「顔? 顔で何を見るんだ?」
「バカ左之。人となりって言っただろ。性格みたいなもんだろ」
「判ってらァ。そうじゃねェよ、それ見てどうすんだって話だよ」
割り込んだ克弘を押し退けて、左之助はもう一度問い直す。
「そうさなァ……例えば――――お前らが将来、どんな男になるか、かなァ」
「将来?」
「そんなの決まってんだろ」
鸚鵡返しした克弘の横で、左之助がきっぱりと言い切った。
なんだそんな事かと、そんな風な左之助に、周りの大人達がほほう、と食いつく。
「オレの将来は、今と一緒だ。四民平等になったこの国で、皆と一緒で、隊長と一緒なんだ!」
それは幼く、けれどもだからこそ言える願い。
勿論お前も一緒だぜと、隣の幼馴染に笑いかける子供。
幼馴染は赤い顔になって、お前一人じゃ危なっかしいからいてやるよ、と呟いて。
生意気はお互い様なのだけど、今は自分を棚に上げて、怒った振りをして幼馴染を殴る子供。
それを見つめる大人達の目は、穏やかで。
だからいい目をしているんだと、皆胸中で呟いた。
見えない未来を臨む瞳は、強く強く、輝いていた。
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毎回、色んな隊士のプロフィールを捏造してますね。
でも草莽隊ですからね、色んな人がいたと思うので。