例えば過ぎる時間をただ一時でも止められたら。 忍者ブログ
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両手に抱えられるだけの花









この国には、四季がある。
それに合わせて、咲く花も変わる。







まるで場違いのように咲き誇る花畑。
冬である事さえも忘れさせるような、福寿草の黄色が地面を埋め尽くし、所々にナズナの白。

その中で、駆け回る子供が二人。







「左之、ちょっと待て!」
「克が遅ェんでェ、早く来いよ!」







きゃんきゃん高い声を上げて、跳ねては転び、転んでは起き上がり駆ける子供達。

少し前まで遊び相手をしていた大人達は、既に降参。
残った子供二人だけが、今も無邪気に走り回っている。
遊びにかける子供の体力は、本当に無限だ。



明朝に雨でも降ったのか、空気はしっとりと濡れ、吹く風が心地良さを感じさせる。
花弁にも露が残り、降り注ぐ光をきらきらと反射させていた。

その真ん中で生き生きと遊ぶ子供達を、誰が止められるものか。






「オレは普通だ! お前が早過ぎるんだよ!」
「ンな事ねェって」






少し遅れる克弘を待って、左之助は立ち止まる。
克弘は既に息が上がりかけていたが、左之助は至ってけろりとしていた。
そんなに疲れるほど遊んだか? と左之助は首を傾げる。


疲れた、とばかりに克弘がその場に座り込んだから、左之助の方が克弘の下に赴いた。
花畑の真ん中に座り込んだ子供二人は、大人達に背中を向ける格好になっていた。






「もう駄目だ。疲れた」
「なんでェ、根性ねェな。オレぁ全然足りねェぞ」
「お前とオレを一緒にするなよ」






そのまま、克弘は其処から動かなくなる。
左之助はしばらく周りをウロウロして続きを促したが、克弘は動かなかった。

無駄だと悟ると、左之助も克弘の隣に腰を落として落ち着いた。














それから、四半刻が経った頃。




じっとしていたと思っていた子供二人が、立ち上がって此方に駆けてきた。
その手に抱えられたものに、相楽はおや、と目を瞠る。







「隊長ー!」
「相楽隊長ー!」






元気に呼んで駆けてくる子供二人。
しゃがんで待っていれば、すぐ目の前まで来て、肩で息をして立ち止まり、






「隊長、これどうぞ!」
「和え物にしたら最っ高に美味いっスよ」
「お前、ずーっとその話ばっかだろ」
「いいじゃねェか、克も好きだろ。菜っ葉の和え物」






両手いっぱい黄色を抱えて、交わす会話は子供らしく食い意地が張ったもの。













今日の夕飯は、案外豪勢なものになりそうだ。













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なんか春のイメージが私の中にはあるんですが、菜の花もナズナも、冬のうちから咲いてます。
子供は綺麗だなんだと言うよりも、やっぱり食い意地(笑)。


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