例えば過ぎる時間をただ一時でも止められたら。 忍者ブログ
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拍手置き場(るろうに剣心)


身分違いの恋で10のお題 / キミに捧ぐ10題 / 5つのキミとボクとのオヤクソク / 言葉片~pieces~ / ひらがなで10のお題

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身分違いの恋で10のお題
お題元 Cosmos
隊長×(←)仔さの。

01 近いけれど遠い存在
02 相容れることは認められない
03 二人の秘密の場所で
04 お互いのことは承知のつもり
05 身分を弁えていないのはどっち
06 引き裂かれる運命
07 手に入れることなど出来ない
08 常に離れていて不安ばかりが募って
09 いつまで一緒にいられるのだろう
10 手は繋げども婚姻の縁はつなげない


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キミに捧ぐ10題
お題元 ハナウタ
隊長×(←)仔さの。

01 キミが欲しいと言った未来
02 全部全部キミの所為
03 キミのいない世界なんて
04 キミを攫って何処か遠くへ
05 キミに届けばいいと思う
06 キミが足りない
07 キミの笑顔
08 キミがいなくちゃつまんない
09 もしもキミが望むなら
10 キミとボク


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5つのキミとボクとのオヤクソク
お題元 ハナウタ
隊長と仔猫さの。

01 紙に包んで捨てましょう
02 できるだけ早くお召し上がり下さい
03 ゴミとして廃棄してください
04 リサイクルにご協力を
05 お手を触れないで下さい


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言葉片~pieces~
お題元 E*STYLE
主に赤報隊時代。時々喧嘩屋。東谷家も。

壁に耳あり障子に目あり
さよならが痛いんじゃないの
死待ち蝶
両手に抱えられるだけの花
夏の羽、束ねて
影送り
出来損ないの翼
同じ月を見てる
アマデウス
星間距離
意地っ張りウォーズ
光みたいだ
いつかの約束
嫌いになれたら良かったのに


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ひらがなで10のお題
お題元 無題生命
主に赤報隊時代。左之助単品も。

01 いく
02 かい
03 め
04 けん
05 さける
06 し
07 あいとう
08 み
09 てんとう
10 あい



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10 あい








誰も、本人さえも知らないところで、それは感じられるものなのだ。


ぶっきらぼうに突き放す言動を取っても、茶化すような台詞を業と選んでぶつける時も。
其処にどんな感情があるのかは、当事者達が一番よく判っている。
自覚のあるなしに関わらず。

だから左之助は父を嫌いにはならないし、上下ェ門も息子を放って置く事はないのだ。
お互いがお互いに罵詈雑言をぶつけ合おうとも。






今日も今日とて、親子は派手な喧嘩をした。
原因は、父が息子の饅頭を食った、というものである。
食った食ってないと口論から始まり、互いに気の短い親子はほぼ同時に手が出た。

傍で一部始終を見ていた右喜から話を聞いた母・菜々芽は、呆れるしかない。



左之助は今年で八歳になった。
体は少々小柄だが、馬鹿力と打たれ強さは父譲りだ。

上下ェ門は大柄だ。
畑仕事に精を出す彼の体躯は、無駄のない筋肉で引き締まっている。
喧嘩も滅法強い、荒事があると漏れなく呼ばれて行く位に。


そんな二人が下らない理由で本気の喧嘩を始めるのだ。
多い時は日に何度も。
その度、妹の右喜は大きな声を上げて泣く。

……菜々芽が呆れるのも無理はない。
そして親子喧嘩の制裁に雷が落ちるのも。






「いい加減にしな、二人とも! 飯抜きにするよ!!」






互いの罵声すら聞こえなくなるほどの母の怒号に、父子はピタリと制止する。



左之助は育ち盛りでよく食べる。
駆け回るから燃費も悪い。

上下ェ門は畑仕事から戻ってきたばかりで、空腹だ。


お互い飯抜きになって、空きっ腹を抱えて寝るのは嫌だから、喧嘩はそれでお開きになった。


しかし顔を見ていれば苛立ちが蘇るのか、左之助は遊びに行くと行って家を出た。
右喜がすぐさまそれに着いて行って、家には夫婦二人が残される。






「なんだって、すぐ喧嘩するんだか……」






溜息交じりに呟く菜々芽には、全く判らない。
そんな妻に上下ェ門は、煙管を吹かしながら、






「根性つけてやってんだよ」
「もっとましなやり方があるでしょう」
「手っ取り早いじゃねェか」






堂々と言ってのける夫に、菜々芽は目を細める。






「だからって毎日毎日、下らない理由で喧嘩されちゃ溜まったものじゃないわ」






じわりと滲んだ怒気の雰囲気に、上下ェ門は両手を挙げて降参。
腕っ節で知られる男も、愛する妻には中々頭が上がらなかった。


息子は外でしょっちゅう喧嘩をする。
子供の喧嘩ではあるが、母としては放って置けるものではない。
子供とは言え男の喧嘩、そろそろ力も付いてきて、何が起きるか判らないのだ。

その上家では父と本気の喧嘩をして、互いに本気で応酬するのだから、菜々芽も流石に頭が痛い。
大人である筈の父親が吹っ掛けて、左之助の返しに先に堪忍袋の緒を切らせる事もあるから、尚更。



息子が元気である事は良い。
娘も同じ、よく泣くけれどめげずに兄の後ろをついて回る。

夫は無頼漢でも畑仕事はちゃんとこなす、だから一日の食事もなんとか得る事が出来る。


……これで喧嘩さえなかったら。
一家を内から支える身として、菜々芽はそう思わずにはいられない。






――――――でも。






(判ってる)






茶化すでも、怒るでも。
下らない理由の喧嘩でも。

其処にちゃんと、不器用な夫の愛情があること。
息子が、自覚はないかも知れないけれど、ちゃんとそれを感じている事。
喧嘩をしながら、お互いちゃんと好きあっていること。


言えば間違いなく、そんな気持ち悪ィ事あるもんかと、声を揃えて言うのだろうけど。











守り、包み、慈しむのが母の愛だと言うのなら、

多分、逆をするのが父の愛なんだろうと思う。



自分自身の両足で、立って歩いていけるように。












----------------------------------------
“愛”。

東谷一家がやっぱり好きです。
幼年期で書くと、央太が出せないのが残念ですが……

09 てんとう








左之助はよく転ぶ。

別に運動神経が悪い訳ではない、どちらかと言えば良い方だ。
しかしそれ以上に足元不注意が過ぎるのか、焦ったりはしゃいだりして浮つくのか、よく転ぶ。


だから(と言っても、勿論それだけが理由ではないのだが)、左之助は生傷が絶えない。
大人しい性格で、基本的に無茶もしないようにしている克弘は、そんな幼馴染に呆れるしかない。






「お前って学習能力ないよな」
「なんでェ、急に」
「思ったこと言っただけだ」






今日も今日とて、何かに気を取られて歩いていた左之助は、坂道で体制を崩して派手に転んだ。
下り坂を転げ落ちていかなかったのは良かったが、砂利が多かったので膝を結構擦り剥いた。
その時には血も出ていなかったから手当ては後回しになった。

が、坂を下り終わって川辺で一休みしている間に、左之助はまた転んでしまい、同じ場所を石だらけの川辺で打ちつけた。
思わず悲鳴を上げるほどの痛みで蹲る左之助を、大人たちは手当てした方が良いと意見が一致。
それでも準隊士のオレの事なんか、と周りに休憩を促す左之助に、ならば同じ準隊士の克弘ならば良いだろうと言う事になり、克弘が左之助の足の手当てを施す事になった―――――いつものように。


克弘は左之助のお陰ですっかり慣れた手付きで、幼馴染の足を消毒する。
左之助も相手が克弘ならばと、大人しくそれを甘受していた。



その合間に、先の克弘の言である。






「どーいう意味でェ」
「そのままさ。鳥頭って事」
「誰が鳥だッ」






左之助は鳥扱いされると怒る。
普段、髪型と隊長の後ろをついて歩くことで、雛だ雛だと言われる所為だろうか。


左之助の怒鳴り声など、克弘にとって今更恐ろしくもなんともない。






「何度も何度も何度も何度も転んで、どうして転ぶのかとか考えないのか?」
「知るかよ。仕方ねェだろ、オレだって判んねェんだから」
「………お前が足元気を付けないからだろッ」
「気を付けたって転ぶんだよ!」
「気を付けてないだろ!」






手当てしていた左之助の足がぶんっと上がって、しかし克弘は寸での所でそれを避けた。
そのまま克弘は腰掛けていた石から離れ、左之助から距離を取る。

左之助は直ぐに立ち上がって、逃げた克弘を追い駆け始めた。
膝を擦り剥いた上に、つい先程この場で打ち付けた事など既に頭にない。
石詰めの川原の上をひょいひょい飛んで克弘を追う。



怪我の手当てをした筈なのに、いつの間にか追いかけっこを始めた子供達。
何事だと数人の隊士が見遣ったが、ああいつもの事かと直ぐに気にしなくなった。






追いかけっこは、そのまましばらくの間続いて。










「いって――――ッッ!!」

「またかよ! いい加減にしろよ、お前ーッ!」










そう言いながら、克弘は本日三度目の転倒をした幼馴染に、甲斐甲斐しく駆け寄るのだった。













----------------------------------------
“転倒”です。

すっかりお世話係な克弘(笑)。

08 み










身一つあれば十分だ。









ボロボロの袋と。
ボロボロの服と。

ボロボロの拳と。


それだけあれば十分なんだ。




何も失うものなどないし、何も恐れるものなどない。
なくして悲しいものはあっても、全てを恨みたいと思う程の怨嗟もない。
過去には確かにあったけど。

今も確かに、消えた訳ではないけれど。


それでもボロボロのこの体一つあれば、何も恐れるものなどない。



貰ったものは捨てていない。
得たものも忘れてはいない。

でもそれらは皆、この目に見えないものばかり。
背中で背負って、重みに堪えながら歩き続けていくものばかり。
捨てない為には、忘れない為には、この身一つあればいい。





それはこの背に、

それは肩に、

それは腕に、


それは拳に、



己を形成するもの全てに結合されて消えはしない。






だから、この身一つあればいい。

失わない為に。
捨てない為に。
自分自身が消えない為に。




ボロボロの袋と。

ボロボロの服と。



歩き続ける為の足と。

打ち壊す為の拳と。

この背に背負った悪一文字。


それだけあれば十分だ。












全てはこの身の内にあるから。













----------------------------------------
“身”。

熱い一面もあれば、ドライな所もあって、ストイックな事を言う事もあって。
時々凄く現実的な所があって、子供みたいに意地になる所があったりもして。
それが全部“左之助”だと思うと、この人の魅力は翳らないなぁと思います。


07 あいとう










持つことを任された役目。
それを担うと言う重み。









今自分の手の中にあるものは、尊敬する人の命を守るものだ。
だからあの人に何かあった時、この刀を持つ自分が傍にいなければ大変なことになる。

そう思うから、いつだって片時だって、あの人の傍を離れたくない。



腕に抱えた刃が、歩く度に鍔鳴りする。

未だにその音を聞くと、心の臓が跳ねる事がある。
それは怖いと思うからではなくて―――全く思わない訳でもないけれど―――、此処にある重みを再認識するから。
此処にあるのが、単なる棒切れではない事を、何度も何度も確認するから。


行軍の足音と一緒に響く、金属音。
刀の音もあれば具足の音もあって、馬の背に乗せた鞍の装飾でもあったりして。

沢山の音が雑多に混じっている筈なのに、不思議なものだ。
左之助には、どうしても手元の鍔鳴りの音しか聞こえない。
色々な音に混じって消える事もなく、ただその音だけが左之助の聴覚を支配する。





何気なく、隣を歩く人の手を見遣った。


野盗や討幕派の志士と向き合った時、この手は刀を握り、迷わず振るう。
その同じ手で、この人は優しく左之助の頭を撫でてくれる。





大好きな手と、抱えた刀を交互に見る。


撫でてくれる手を守ってくれるのは、この刀だ。
道を開いて、末来への標を示す手を守ってくれるのは、この刀だ。

敬愛する人の手にそっくり馴染む、この刀。






かちり。






落とさないように確りと持ち直すと、鍔が鳴った。
それがまた、綺麗に聞こえる。




重い。
正直言って、重い。

もともとが子供が容易く抱えられるような重量ではないし、抜き身のものならまだしも、鞘付きである。
左之助は克弘や同じ年頃の子供よりも力に自信があったが、それでも重い。
そしてその重みは、必ずしも物量的なものであるとは言えないのだ。


この刀が持っている役目、抱えて来た道。
其処にあるものは、決して良いものばかりではない。

それでも、あの人はこの刃を持って進んでいく。





だからこの重みは、左之助にとって決して厭うものではなかった。








抱えていこう。
何処までも。

敬愛する人から貰った役目だ、何も辛い事なんてない。





大切な人を守るための剣。
いつだって傍にいて、その人を守る為に、絶対離れたりしないから。











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“愛刀”です。

かなり妄想が入ってます。
でも隊長と左之助の間柄はこんな感じが好き。