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左之助はよく転ぶ。
別に運動神経が悪い訳ではない、どちらかと言えば良い方だ。
しかしそれ以上に足元不注意が過ぎるのか、焦ったりはしゃいだりして浮つくのか、よく転ぶ。
だから(と言っても、勿論それだけが理由ではないのだが)、左之助は生傷が絶えない。
大人しい性格で、基本的に無茶もしないようにしている克弘は、そんな幼馴染に呆れるしかない。
「お前って学習能力ないよな」
「なんでェ、急に」
「思ったこと言っただけだ」
今日も今日とて、何かに気を取られて歩いていた左之助は、坂道で体制を崩して派手に転んだ。
下り坂を転げ落ちていかなかったのは良かったが、砂利が多かったので膝を結構擦り剥いた。
その時には血も出ていなかったから手当ては後回しになった。
が、坂を下り終わって川辺で一休みしている間に、左之助はまた転んでしまい、同じ場所を石だらけの川辺で打ちつけた。
思わず悲鳴を上げるほどの痛みで蹲る左之助を、大人たちは手当てした方が良いと意見が一致。
それでも準隊士のオレの事なんか、と周りに休憩を促す左之助に、ならば同じ準隊士の克弘ならば良いだろうと言う事になり、克弘が左之助の足の手当てを施す事になった―――――いつものように。
克弘は左之助のお陰ですっかり慣れた手付きで、幼馴染の足を消毒する。
左之助も相手が克弘ならばと、大人しくそれを甘受していた。
その合間に、先の克弘の言である。
「どーいう意味でェ」
「そのままさ。鳥頭って事」
「誰が鳥だッ」
左之助は鳥扱いされると怒る。
普段、髪型と隊長の後ろをついて歩くことで、雛だ雛だと言われる所為だろうか。
左之助の怒鳴り声など、克弘にとって今更恐ろしくもなんともない。
「何度も何度も何度も何度も転んで、どうして転ぶのかとか考えないのか?」
「知るかよ。仕方ねェだろ、オレだって判んねェんだから」
「………お前が足元気を付けないからだろッ」
「気を付けたって転ぶんだよ!」
「気を付けてないだろ!」
手当てしていた左之助の足がぶんっと上がって、しかし克弘は寸での所でそれを避けた。
そのまま克弘は腰掛けていた石から離れ、左之助から距離を取る。
左之助は直ぐに立ち上がって、逃げた克弘を追い駆け始めた。
膝を擦り剥いた上に、つい先程この場で打ち付けた事など既に頭にない。
石詰めの川原の上をひょいひょい飛んで克弘を追う。
怪我の手当てをした筈なのに、いつの間にか追いかけっこを始めた子供達。
何事だと数人の隊士が見遣ったが、ああいつもの事かと直ぐに気にしなくなった。
追いかけっこは、そのまましばらくの間続いて。
「いって――――ッッ!!」
「またかよ! いい加減にしろよ、お前ーッ!」
そう言いながら、克弘は本日三度目の転倒をした幼馴染に、甲斐甲斐しく駆け寄るのだった。
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“転倒”です。
すっかりお世話係な克弘(笑)。