例えば過ぎる時間をただ一時でも止められたら。 忍者ブログ
  • 10«
  • 1
  • 2
  • 3
  • 4
  • 5
  • 6
  • 7
  • 8
  • 9
  • 10
  • 11
  • 12
  • 13
  • 14
  • 15
  • 16
  • 17
  • 18
  • 19
  • 20
  • 21
  • 22
  • 23
  • 24
  • 25
  • 26
  • 27
  • 28
  • 29
  • 30
  • »12
[PR]

×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

龍京 07







「龍麻ァ」







酔っているかのような。
そんな調子の声で名を呼ばれて、龍麻はノートから顔を上げた。


京一は白塗りの壁に背を預けて天井を仰いでいた。
彼の足元には漫画が数冊転がっており、どれも中途半端なページのままで開かれている。
読んでは飽きて放り出し、また新しい本を取り出してと繰り返した結果だ。

それ以外は、脱ぎ捨てた制服や木刀があるだけで、アルコール類は存在しない。
だから、彼が酔っている、と言う事はない筈だ。






「なー、龍麻ァ」






けれども、繰り返して相棒の名を呼ぶ京一は、酔っていると言った方が自然に見える。


ゆっくりとした動作で壁から背を離すと、京一は這って龍麻の座す傍まで近付く。
長い前髪で目元が隠れて、龍麻から彼の表情は伺えない。

が、眼前までくると、またゆっくりと顔を上げて────笑みを浮かべて京一は言った。






「セックスしよーぜ」






遊びに行こうぜ、と言うような気安さだ。
事実、京一にとってはどちらも同じような感覚なのかも知れない。


沈黙したまま、龍麻は京一の顔を見詰めていた。
京一は口角を上げて双眸を細め、薄らと笑みを浮かべている。

面白い玩具を見つけた、そう言っているようにも見えた。



京一は龍麻の返事を待つ気もないらしく、龍麻のパーカーシャツに手をかける。
丹田の位置から、生地の上から撫でるように体のラインをなぞり、胸を滑って、肩まで上る。
龍麻は無抵抗、無表情でそれを甘受していた。

肩から鎖骨へと指先でくすぐった後、京一は龍麻の襟元を乱暴に掴んで引き寄せた。
ぶつかるように唇が重なる。






「ん……ん、……」






くちゅ、と。
小さな小さなその音は、静寂が支配していた部屋の中に限っては、意外に存在感が大きい。


咥内に侵入してきた熱の生き物を、龍麻は暫くの間、好きにさせていた。
絡められ、吸われても、何をするでも、応えるでもなく。
ただ彼の思うがままに。

京一はキスの虜囚になったかのように、夢中で口付けを繰り返している。
目を閉じて食い荒らすように龍麻の唇を貪る様は、餌に食い付く獣そのものだ。






「んぁ…ふッ、…ちゅ…んん……」






離れては吸い付き、吸い付いては離れて。
何度も何度も。

このままだと唇が腫れてしまうんじゃないかと、龍麻はぼんやりと考えていた。


京一の手が下肢へと伸びたのに気付いても、龍麻は表情を変えなかった。
火照り始めた京一の顔を、間近でじっと見詰めている。






「んはッ……ぅん……」






器用に龍麻のスラックスのベルトを外し、京一はその中へと手を差し込んだ。
トランクスの上から中心部を確認すると、そのまま手の平で包み込む。
上下に扱かれて、初めて龍麻の肩が揺れた。

それは口付けに夢中になっていた京一も気付いたようで、薄らと瞼を持ち上げると、瞳の奥でくすりと笑う気配。


唇が離れて、久しぶりの新鮮な酸素が肺へと流れ込んで行く。






「お前も溜まるンだな」






意外そうな口調で言いながら、彼の表情は仄暗さが否めない。

自分が今どんな表情をしているのか、どうしてそんな顔をしているのか、恐らく彼は判っている。
そして面白がっているのだ、こんな自分を前にして、相棒がどんな行動に出るのかと言う事を。


下肢への刺激を続けながら、京一は間近にある相棒の顔を見詰める。
龍麻の表情があれから動く事は無く、此方もじっと親友の顔を見詰めているだけだ。






「なァ、しようぜ」
「セックス?」
「他に何があんだよ」
「勉強とか」
「ンなもん犬に食わせてろ」






クスクスと笑う京一。
対して、龍麻は無表情。






「どうせよォ、このままってのは辛いだろ?」
「京一がしたんじゃないか」
「だな。で、どうする? 一人で空しくシコってるか?」






散々誘って煽っておいて、此処で選択肢の掲示。



今なら戻れる。
この下らないお遊戯から。

けれど二度と遊べない。


遊ぶのならば逃げられなくなる。
そのまま深い深い汚泥まで、堕ちて死ぬまで、きっと一生。



どちらが正解と言うものは、きっとこの問いには存在し得ない。
普通ならば戻る道を選ぶだろうが、それを選ぶには目の前の存在の中毒性は既に全身を支配している。
これを失ったら頭が可笑しくなってしまう、そう思ってしまう位、危険な程に。

遊ぶ事を選んだならば、一生この気紛れな猫に執心して焦がれて死ぬであろう未来が待っている。
その間にどんな風に猫と遊ぶのかと言われると、これは龍麻の勝手な推測だが、“えげつない”事だろうと言う事は、容易に考えられた。






「たつま」






耳元で猫が鳴いた。
吐息がかかる。


肩を抱き寄せて、龍麻の方からキスをする。
その時、微かに香のようなものが京一の肌から感じられたような気がした。

距離が近いのはさっきと同じ筈なのに、ずっとゼロ距離でいるようなものなのに、何故だろうか。
龍麻の方から触れた途端に、京一のものではない気配が滲んでいるような気がしてならない。
思い込み────ではない。






「……京一」
「んー?」






名前を呼んでみれば、鼻にかかったような声で返事。
龍麻はずっと表情を変えない。






「昨日、何処で寝てたの?」






野暮な話だ。
碌でもない話だ。

そして下らない話。


京一の顔が綺麗に視界に収まると、彼は笑った。
眦を細め、濡れた唇の隙間から舌を覗かせて、哂った。




龍麻の脳裏に浮かんだのは、緋色を纏った一人の男。
京一にとっては、大の苦手だと公言している筈の男。

多分、それで間違いじゃない。


京一は判っている。
その気配を纏っていれば、龍麻が黙ってはいられない事を。
龍麻も十分自覚をしていて、京一が何を考えているかも判る。

判るけれど、それに逆らう術を龍麻は知らない。





顎を捉えて口付けて、そのまま畳の上に押し倒した。
乱暴に京一のシャツをたくし上げ、下肢のベルトを外すと、下着ごと擦り下ろす。

露にされた彼の中心部は、既に固く反り返っていた。


そんな有り様を突きつけられても、京一は哂っていた。
面白くて仕方がない、そんな風に。







………まるで発情した猫みたいだ。

だからこんな風にして、あちらこちらで遊び相手を探すのだろう。
動物の本能と衝動に身を任せて。




自由な猫は、首輪も鈴もつけずにふらりふらりと遊び回る。

見えない鎖を引き摺りながら。









====================================

荒んだ京一書いちゃった。
この京一で三角関係書きたい。……裏必至!!

龍麻は基本的に、京一がどんな風に病んでても荒んでても、そのまま受け入れます。
八剣は……受け入れた上で、京一が立ち直るように優しくするか、益々酷くさせるか……どっちかだな。今の所は前者が多いけど、後者も書きたい。

PR

コメント
この記事へのコメント
コメントを投稿する
URL:
Comment:
Comment:
Pass:
トラックバック
この記事のトラックバックURL

この記事へのトラックバック