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どちらかと言えば――――と言わずとも、京一の運動神経は良い方だ。
子猫であるが故に、見ている側が「何故そんな事を?」と言いたくなる様な突飛な行動や手段はあるものの、基本的には普通の猫並に身のこなしは上手い。
だが、やはり子供であるからだろうか。
突拍子もない事でバランスを崩してしまう事もある訳で。
「――――――うぷッ」
昼食の準備の最中、リビングからどてっと音がしたので、八剣が振り返ってみれば、床に突っ伏した子猫。
その足元には、先程まで昼寝真っ最中であった京一が枕代わりにしていた、折り畳んだ座布団がある。
ああ、躓いたのかと八剣が気付くまで、然程時間はかからなかった。
「京ちゃん、大丈夫かい?」
「………………何が」
心配の声をかけてみれば、そんな言葉が返って来た。
思わぬ反応に八剣は、一回二回と瞬きする。
京一は突っ伏したまま起き上がらない。
見た所では顔面から倒れたように見えたから、顔でも打ったのかと、八剣は益々心配になる。
しかし先刻の声は至っていつも通りで、痛みを堪えている風でもなかった。
京一の尻尾を見てみると、基本的にはじっとしているものの、先端だけがピクピクと動いている。
これは苛立っている時に見られる傾向だ。
「京ちゃん」
手に持っていた包丁を置いて、キッチンからリビングに戻ろうとする。
と、その気配を感じ取ったかのように、京一はひょっこり起き上がった。
京一は立ち上がると、拗ねたように唇を尖らせ、
「………逃げた」
「何が?」
京一の言葉の意味が判らずに問い返すと、京一は益々唇を尖らせて、
「……虫」
「虫? …防虫剤が切れたかな」
「…………」
八剣の言葉に、そうなんじゃねェの、と京一は呟いて、ぷいっとそっぽを向く。
その顔はほんのりと赤くなっており、尻尾は先端だけがピクピクと動いていた。
まだイライラしているらしい。
そんなにも京一は虫に関心を持っていただろうか。
ちょこまかとすばしこく動くものを追いかけるのは、猫と言う生き物の本能と性質上、好きだとは思う。
しかし、かと言って見つけた瞬間に跳び付くほどの執着はなかったと思う。
ついでに言うなら、八剣の部屋には殆ど虫は侵入して来ない。
室内は常に清潔に保っているし、窓やドアの近くは防虫剤があるし、増して油虫の類など以ての外だ。
と言う事で、室内を見渡してみるが、やはり京一が言ったような虫の気配は見受けられず。
「いたんだぞ」
頭を掻いた八剣に、京一が言った。
見下ろせば、じぃと見上げてくる大きな瞳とぶつかる。
その顔はやっぱり赤く、尻尾は先端だけがピクピクと動いて。
「虫」
「ああ」
「いたんだぞ」
「ああ」
「ホントだぞ」
誰も嘘だとは言っていない――――そう思ってから、八剣は気付いた。
「そうだね」
くしゃりと頭を撫でると、子猫はぶんぶんと頭を振ってそれを払ってしまった。
そんな京一に苦笑して、八剣は床に置きっ放しになっていた枕代わりの座布団を拾うと、ベッドに放る。
「お昼ご飯、すぐ出来るからね」
座布団の代わりに、ベッドに鎮座していた人形を差し出す。
京一は、ぷくーっと頬を膨らませはしたものの、結局は人形を受け取るのだった。
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mixiアプリの“おしゃべミックる”で、うちのミックるが「転んだのを必死で隠しています」てな事をしていたので……つい。
妄想してたら、こんな感じになりました。特に中身のない話ですみませんι
人形は拍手でも書いた、壬生お手製の八剣人形です。なんだかんだでお気に入り。