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もう直に今年が終わると言うのに、この空間の主にとっては来訪客である少年は、勝手知ったる空間とばかりに炬燵で丸くなって動かない。
………別に、それは良いのだけれど。
「参拝とかは行かないのかい? 京ちゃん」
炬燵の向かい側で蜜柑の皮を向きながら問うてみる。
京一は暫く無言のまま、炬燵のテーブルに頭を乗せて目を閉じていた。
が、綺麗に向き終わった蜜柑を差し出すと、ぱかりと瞼が持ち上がる。
「別に」
「友達からお誘いがあるじゃないのかい?」
判っていても妬いてしまう程、京一は真神のメンバー達とよく一緒にいる。
同じ学校に在籍していて、普段から何かとつるんでいて、死線を潜り抜けてきたメンバーだから当たり前だ。
だからてっきり、年末年始も彼らと過ごすものだと思っていた。
各々の用事は勿論あるだろうが、大晦日か元旦か、どちらにせよ、埋まっているものだと八剣は思っていた。
京一にその気がなくても、誰かが声をかけるだろうとか、乗り気じゃなくても連れて行かれるとか。
しかし八剣の予想に反し、京一はもう一度「別に」と言った。
「大体、こんなクソ寒ィ時にあんな人ゴミなんぞ行きたかねェし」
つけっ放しにしていたテレビは、丁度、織部神社からの中継を映し出していた。
確か此処で巫女をしている双子姉妹も、京一達の仲間だ。
今年の参拝者は約何万人、と言うアナウンサーの声に、京一は益々行く気が失せているようで、
「やっぱ行くモンじゃねェな」
蜜柑を口に放り込んで、チャンネルを弄りながら京一は呟く。
「………じゃあ、今晩は何処に行く予定もないって事かな」
「ま、そーいうこったな」
甘酸っぱい蜜柑は、どうやら京一のお気に召してくれたらしい。
テレビのチャンネルをバラエティに合わせて、速いペースで蜜柑を食べる。
もう一つ、剥き終わった蜜柑を京一の前に置いた。
何も言わずとも京一が遠慮をする様子はなく、先に食べていたものななくなると、直ぐに二つ目に手をつける。
綺麗に筋まで取られた瑞々しいオレンジ色は、瞬く間に京一の口の中に納まっていった。
八剣は三つ目の蜜柑も剥いた。
剥いて、やはり筋も綺麗に取って、京一の前に置く。
それに再び手を伸ばしかけて、京一は八剣を見た。
「お前は食わねェのかよ」
「ああ、いいよ」
言って、八剣は炬燵から出て立ち上がる。
くるりと炬燵の横を回って、
「俺はこっちを貰うから」
すとん、と。
京一の後ろに腰を下ろして、少年の体をすっぽり腕に包んで言った。
言われた意味を理解しかねたか、いや理解したくないのか。
八剣の動向を見守っていた所為で、京一の首はくるんと巡られ、八剣の顔に向けられている。
手に蜜柑を持ったまま、男の腕に囲われて。
きょとんとしている顔が、眉間の皺がない所為もあるだろう、ずいぶん幼く見える。
その、常よりも険のない瞳を見下ろし、微笑んでみせれば、
「バ………ッカか、テメェッ!!」
高い声で京一が怒鳴る。
危うく蜜柑を潰しかけながら。
それにやはり、漏れるのは笑みで。
口付けて絡めた舌は、甘酸っぱい味がした。
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このまま姫始めしてればいいよ(爆)。
…男同士は「殿始め」って言うことあるらしい…
うちの八剣は、京ちゃんに何か“してあげる”のが好きですね。
蜜柑の筋なんて俺取らないよ(笑)。気にしない。つか栄養は此処にあるんですぜ(関係ない)