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………蹴られて目が覚めた。
思わぬ衝撃に安眠を妨害された事に少々の気だるさを覚えつつ。
起き上がってから、もう一発喰らって、龍麻はなんなんだろうと隣を見た。
見てから、其処に眠る人物に一度驚いて、ああそうかと漸く思い出す。
ぽっかり口を開けて、其処に寝ていたのは、蓬莱寺京一。
親友で、相棒で、恋人の。
思いを遂げてから、龍麻が何もしなかったと言う事もあって、二人の間は恋人同士でありながら微妙なものだった。
気持ちが通じているのだから、それだけでも幸せだと思っていたし、同時に物足りないような気分もあった。
そのどちらもが龍麻の本音であったから、京一がどう思っているのか掴めなくて、所謂最後の一線を越えないままだった。
それが昨日、遂にその一線を越えた。
切っ掛けはなんとも色気のない、京一の「何もしねェのか?」と言う質問からだ。
その一言に、龍麻は表情にこそ出なかったが、内心かなり驚いていた。
男同士である事を龍麻は気にした事がないし、故に一線を越す事そのものに疑問や躊躇はなかったけれど、
京一は、スキンシップこそよくしてくるものの、それと恋人同士が交わす契りとは別物であっただろうと思う。
最初のキスだって、あれは龍麻が避ける隙を与えなかったから出来た訳で、そうでなければ気持ち悪いと言うに決まっている。
そんな彼の方から、「しねェのか?」と言われたのだ。
龍麻だって驚く。
していいの、と問えば、京一はしばらく固まった後、しどろもどろになったが、最終的には「……まぁ、一応」と言った。
後は、世の中の普通の男女の恋人達と同じ流れだったと言っていい。
夕飯を片付けて、少しの間テレビを見て(その間、京一は若干ぎこちなかった)、風呂に入って。
電気を消して、一つしかない蒲団の上で――――――
(………しばらくプロレスみたいだったけど)
言ったのは京一であったし、彼自身の良いとは言ったが、なんと言うか、往生際が悪かった。
男が男に抱かれると言うのだから、ネコ役になってしまった彼の葛藤が半端ないものであるとは判ったが。
ちょっと待てとか、やっぱナシとか、今度にしようぜとか。
逃げ腰になる京一を捕まえて、蒲団に倒して、久しぶりにキスをした。
少しの間京一は暴れたが、その内観念したのか大人しくなり。
(……可愛かった)
思い出して、龍麻は自分の口元の締りがない事に気付く。
どちらも健全な高校生男子。
快楽に流されてしまえば後は躯の方が正直で、性急に事は進んで行った。
熱を解放して、体力を使い果たして、二人蒲団の上で重なり合ったまま寝転んで。
何某か話をしたような気がするけれど、内容はもう覚えていない。
そんなものよりも、龍麻の胸の内は充足感で一杯だった。
一緒にいるだけでも十分幸せだと思っていたけれど、こうなってしまうと、やはり少し変わったような気がした。
好きで、好きで。
好きで仕方が無くって。
親友である事は変わらないし、相棒である事も変わらない。
一緒に背負うと言ってくれた事も忘れないし、変わらない。
互いの立ち位置もスタンスも、きっと変わらないだろう。
葵も小蒔も醍醐も遠野も、皆、皆。
勿論―――――両親だって好きで。
だけれど。
友愛も、親愛も、恋心も、全部ひっくるめて。
「京一、朝だよ」
「………あ……?」
世界で一番、君が好き。
落としたキスに、真っ赤になった顔も好き。
ラストなのでラブラブ~v
恋人同士になったからって、変に意識しあわない二人が好きです。
……だからいつも色気ないんだね、うちの龍京って(にょたも…)。