例えば過ぎる時間をただ一時でも止められたら。 忍者ブログ
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How to, for you おまけ






長い沈黙の末、とうに体力の限界だったのだろう。
京一が寝息を立て始めるまで、それほど時間はかからなかった。


そっと蒲団を捲ると、安らかな寝顔が其処にある。

単純に疲労で睡魔に負けたのは判り切ったことだが、それでも、気を赦してくれているのが判った。
そうでなければ、あんな目にあった直後で、その本人の目の前で熟睡なんてする訳がない。
京一という人物の性格を考えれば、尚の事。




眠る京一の額に、触れるだけのキスを落とす。







「可愛かったよ、京一」






色っぽい雰囲気とは程遠かったけれど、普段は見れない親友の顔が見れた。
痛みを訴えたり、泣き顔だったり、始めて見る顔だったと言っていい。
それを見つける度に、暴走しそうな自分を抑えるのにかなりの労力を使った。

――――最も、京一はそれに全く気付いていないだろうけれど。



全ては、計算尽くの事。





龍麻が京一を抱きたいと思ったのは、随分前の話だ。
けれども京一の性格からして、頼んで素直に言う事を聞いてくれる訳がない。


出逢った頃から京一は龍麻に心を開いてくれていたけれど、京一の恋愛感覚はごく一般的。
龍麻が京一に寄せる想いが、友情を飛び越えた恋心であると聞いても、恐らく信じなかっただろう。
揶揄っているのだろうと、笑い話のネタになるのが関の山だ。
勿論その関係なら、今後もずっと一緒にいてくれるだろうと思えたから、それも良かったかも知れないけれど。
何度かそう思う事で諦めようと思ったが、結局想いは募るばかりで、誤魔化す事が出来なくなっていった。

好きになれば一緒になりたい、繋がりたいと思う。
幸い、京一はその手の事には寛容的で、同性愛そのものに対する偏見はない。
話をしてみれば、同性感の性行為にも理解があった。

だから、上手くすれば――――と思った。
騙すようで(いや、実際騙したのだけれど)少し心は傷んだけれど。



どうしても、自分だけのものにしたくて。








「ごめんね」








呟いてから、言葉が上滑りしている事は感じていた。
でもそれ以外に言える言葉が見付からない。

だって弁明なんて必要ないし、言い訳なんてする気はない。



全部全部、本気だったから。





なんだかんだ言って京一は優しい。
付き合いもいい。

何かと人に嫌われるような言動を繰り返すけれど、一度懐に入れたら、その広さはとてつもなく寛容的。
悪い言い方になるような気はするけれど、単純だから、こうしてあっさり騙されてくれて。


……そういう所も全部含めて愛しい人。








これから、少しずつ、少しずつ、確実に。











染めていってあげるから。

















嫌だなんて言わせない。
言ったって聞いてあげない。







だって本当に嫌だったら、最初から一度だって、許したりなんかしないじゃないか。























黒龍麻オチでした。
最初からそのつもりで書いてたので、書き終わって「演技派だな…」と一人しみじみ思ってました。

そんで京一、今後も多分絆されて行きます。
染められてしまえばいいよ!
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