例えば過ぎる時間をただ一時でも止められたら。 忍者ブログ
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09 いつまで一緒に居られるのだろう











この手がいつまで此処に在るのか。
この手が、いつまで届くのか。

不安に思うよりも、先に。










子供特有の熱が、手袋越しに伝わってくる。
同じ子供でも、克浩はこんなにも熱くはなかったと思うのだけれど。
でも、この子供の手が冷たい事も想像がつかなかった。

恥ずかしそうに照れ臭そうに、でも嬉しそうに、子供らしい力で握られる、己の手。
決して綺麗とは言えない自分の手を、宝物のように包んでくれる、小さな掌が愛しかった。



見下ろせば、見上げる瞳とぶつかって、







「寒いっスね」






その言葉に、そうだなと返す。

寒い。
でも、繋いだ手は暖かい。


吐く息が白くて、それが益々体感温度を下げるような気がした。






「早く、春になって欲しいっスね」
「…そうだな」






春になれば、山の行軍も幾らか楽になるだろう。
でも、その頃になっても、繋ぐ手は変わらないのだ、きっと。






「克が寒い寒いって、煩いんですよ」
「お前は、寒くはないか?」
「オレぁ平気っス」






にっと笑って、寒さの所為か照れ臭さか、紅くなった鼻頭を掻く。
繋いでいた手を、ぎゅっと握れば、嬉しそうに握り返してきた。



握れば握り返してくる、小さな手。
まだ子供らしく柔らかさを残す、幼い手。

その手がとても愛しくて。





―――――――でも、きっといつかは手放さなければならないのだろう。




近い日か、遠い未来か、それは知らない。
知らないけれど、いつまでもこうして手を繋いでいる事は出来ないだろう。
子供の成長は、遅いようで、早いのだから。

大人になれば庇護など必要なくなるし、左之助も己の道を探すようになる。
今は盲目的に自分の事を慕ってくれるけれど、その内、もっと外の世界を見るようになる筈だ。


出来る事なら、それを妨げてしまいたいと思う自分は、なんて身勝手なのか。



いつかこの手は大きくなり、必然、相楽の手から離れていくだろう。
それを、いつの間にか惜しく感じて、このままでいたいなんて。








「隊長?」








不思議そうに呼ぶ声に、なんでもないよと微笑んだ。
左之助はきょとんとして首を傾げる。

そんな左之助の右目の上、瞼に口付けを落とす。







「隊長、どうかしたんですか?」






触れ合い程度にしか、意味を理解していない子供。

なんでもないよともう一度言って、また口付ける。
左之助はくすぐったそうに笑って、繋いだままの手にまた力を込めた。











いつまで、一緒にいられるだろう。

いつまで、この手を繋いでいられるだろう。




出来る事なら、ずっと離さないでいたいと願う。















左之助は“ずっと一緒にいる”ともう決定事項的に思ってるかと。
まだまだ子供なので。
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