例えば過ぎる時間をただ一時でも止められたら。 忍者ブログ
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八京 05











………人知れず壊れていく少年を、引き止める術をこの手は持ち得ない。











東京のコンクリートジャングルが瓦礫の山へと変貌してから、二ヶ月。
生き残った人々は悲観に暮れ、未来を見据え、様々な形で日々を過ごしている。

それでも瓦礫に埋もれず生き残った植物達は、季節の訪れを告げる。
また、コンクリートの隙間からは、分厚い岩盤を割って新たな芽が顔を見せる事もあった。
人よりも余程小さくありながら、余程強く生きる植物達に気付く人は、果たして疲弊した人間達の中でどれ程いるだろう。


そんな中で精力的に明日へと歩き出したのは、まだ大人には早く、子供と言う時分を既に終えた少年少女達。
時に衝突を繰り返し、時に涙し、それでも笑って明日へと呼吸を続けている。

大人ほどに遠い日々を見渡せる程に出来上がった精神ではなく。
子供ほどに何も知らないまま日々を過ごせるほど、無邪気ではない。
その狭間に立っているからこそ、現実を受け入れ、未来へ歩き出すことが出来たのだろう。




少年少女達の中で、率先して動き回っている人物達を八剣は知っている。
富士山での闘いの渦中にいた者達を筆頭に、真神学園の生き残った生徒達だ。


美里葵は菩薩眼としての《力》を失い、同じくしてその片目そのものを失った。
だが仲間達に励まされながら、学校に避難した人々に笑顔を見せ、子供たちの相手もこなす。
桜井小蒔と醍醐雄也はボランティア活動に駆け回り、《力》を持たずして最期の一戦の直前まで傍らで彼らと行動を共にしていた遠野杏子は、元来のジャーナリズムであちこち動き回り、生存者の情報を集めて回っていた。

織部神社では姉妹の巫女が人々に未来に光ある事を説き、雨紋雷人は己を慕う少女にこの街を託し、長いツアーへと踏み出した。
桜ヶ丘中央病院は怪我人や病人で溢れかえっていたが、其処に勤める院長と看護士は休みを取らず、ほぼ不休で人々の手当てや精神のケアに打ち込んでいる。


八剣が属していた拳武館は閉鎖し、其処にいた者達はそれぞれ散って己の信じる道を探している。

壬生は最初に何よりも危惧していただろう母の下へ向かった。
幸運なことに彼女は無事で、容態の変化もなかった。
彼女はそのまま桜ヶ丘中央病院に入院を続けており、費用などは院長の好意で支払いを無期限延期させて貰っている。
今はまだ支払いの目処も立たないが、彼は頭が切れるから、不器用ながらに生きていく術を見つける事は出来るだろう。

他にも愛する男を待つことを選んだ者や、仮面を脱ぎ去り表の世界でボランティアを始めた者もいる。
未だ迷うものもいれば、友の手を取り一緒に歩き出した者も存在していた。




そして八剣は――――人の気配の少なくなった拳武館の寮で、今も過ごしている。

その傍らには、一人の少年がいつも蹲っていた。






「――――――京ちゃん」






少年の名を呼ぶが、少年からの返答は無い。


あちこちで崩壊が置き、首都の機能は殆どが麻痺し、此処にも電気は通っていない。
故にこの部屋の灯りは外界のものを取り込むしか方法がなく、夜になると月明かりがなければ闇しか此処には存在しなかった。

だが日中でもこの部屋に灯りは少ない。
そんな空間に少年は蹲り続け、光の無い瞳でぼんやりと宙を見詰めている。
嘗ての、忙しなく変化し続けた表情は面影もない。



数日前よりも、また少し痩せたのではないだろうか。
シャツの襟元から覗く鎖骨が不自然に浮き上がっているように見える。
筋肉が落ちているのは間違いないだろう。






「京ちゃん、起きてるかい?」






問いかけると、擦れた声ではあったが「起きてる」と答えがあった。
じゃあ、と八剣は質問を変えた。






「眠れた?」






言葉での返事は無い。
代わりに、小さくではあったが頭が縦に振られた。


―――――――嘘だ。






「隈、酷いよ」
「……気の所為だろ」
「いいや。凄く酷い」






頬に手を添えて上向かせると、窓から差し込む光で京一の表情がクリアになった。
だが京一はその光を嫌がるように、八剣の手を押しのけ、顔を背ける。

押し退けられた時、細くなった腕に見つけた痕に、八剣は彼の腕を捕った。
途端、それまで動くことの無かった少年の体が抵抗を始める。
だが弱々しい抵抗などで八剣を振り払える訳もない。


袖を捲ると、手首を集中的に切り刻んだ細い傷痕が幾重も重なっていた。
それらは全て赤黒い色を残し、血が流れ、それを放置していた事は誰の目にも明らかだ。







「これも気の所為?」







壁に背を預けたままの京一。
顔を近づける八剣から逃げる術など無く、ただ視線を逸らすだけ。



手当てしたいが、八剣はそれが出来ない。


彼を此処に住まわせるようになってから数週間が経つが、彼のこの行為は初めてではない。
最初の頃から片鱗が覗き、見兼ねて何度か手当てをしたのだが、その度に包帯も解き更に酷い傷をつけるのだ。
一度は腕が使い物にならなくなるのではと思うほど、自ら深い傷を腕に彫り込んだ。
その時は嫌がるのも構わず懇意にしている病院に運び、なんとか治療に間に合った。

腕を――――それも利き腕を傷付けるなど、相当の事だ。
一歩間違えれば使い物にならなくなり、常に握り締めていた木刀さえも二度と振るう事が出来なくなる。

だと言うのに、彼は何度も自傷を繰り返した。


手当てをしなければ表面の皮膚を裂くだけで気が済むらしい。
だが既に負った傷の上を更に傷付け、放置すれば、細菌が入って腕は結局壊死してしまう。



手当てをすれば更に深い傷を。
放っておけばいずれ腐って落ちる。






「腕はもう止めなよ。使えなくなる」
「………」
「それでもいいの?」






京一は無言で、八剣から視線を逸らしたまま。

剣は京一にとって切っても切れないもので、彼が唯一信じ続けるものだ。
それを失えば、京一は自分自身の存在価値を自ら捨てた事になる。






「…腕………」
「うん?」
「……腕じゃねェなら…」
「本音を言えば、何処も止めて欲しいんだけどね」






また京一が口を噤む。
八剣の声色が低い事に気付いたのだろう。
彼が、静かに憤っている事を。




―――――それでも、今の京一には自傷を止める事が出来ない。




八剣はそれに気付いたから、彼を自分の下に置くことにした。
歩き出した仲間達の傍にいる時は、平気な振りをして笑う事しかしないから。

その陰で、彼の精神はゆっくりと崩壊して行った。


理由が何であるのか、八剣は明確には知らない。
富士山での闘いの後、《力》と瞳を失った美里葵のように、大きすぎる《力》の反動により精神に異常を来たした者もいる。
それによるものが大きいようにも思えたが――――病院に連れて行った時、京一をよく知る院長からは、もっと別のものも要因として有り得ると言っていた。

幼少の頃に父を失い、その後無意識ながらに導としていた剣の師が姿を消した事。
それが京一にとって、自覚のないままに暗い影を落とし、今回の勝利と引き換えに親友を失った事が重なり合っているのではないかと、院長は言っていた。



その自分自身の精神状態に対して、自覚を持っていなかったのが悪かった。
八剣が言及してみても彼に自覚が無い為、空回りばかりで、結局此処まで状態は悪化してしまったのだ。






「京ちゃん」






呼んでも此方を見ようとしない京一は、まるで小さな子供のようだ。
掴まれた腕を離そうともがく様子が、余計にそれを髣髴とさせる。



傷だらけの腕。
傷だらけの心。

信じていた者を掴み続けることが出来ない、手。


置いて行かれるばかりで、誰も傍にいてくれない。
幼い頃から追い駆け続けて、それでも置いて行かれてしまう。
それでも求め続けずにはいられない。

ジレンマに苛まれた心は、幼少期に歯車を止め、あちこちで可笑しな噛み合い方を続けるようになってしまった。
異物を挟んだままで回り続けた歯車は、彼の親友が彼を置いていなくなったことで、ついに瓦解を始めた。





そんな少年の弱い心に、誰も気付くことが出来ない。







「京ちゃん」
「………離せ」
「駄目だよ」







彼の言葉通り、手を離したら――――きっとこの少年は、本当に壊れてしまうだろう。
今彼を現実に繋ぎとめているのは、彼自身が自らに刻み込む痛みと、八剣の彼を掴む手だけ。







「俺は、君にまでいなくなって欲しくないんだ」











………例えそれが、今以上に君を傷付けることになるとしても。













====================================

二幕第九夜と第十夜の間を龍京←八で、京一が壊れかけの状態でよく妄想します。
って言うかいつか書こうと思ってる(そんなのばっかだ)。

独自設定で書いてますが、うちの京一は父ちゃんの死と師匠の失踪がトラウマです。其処から妄想妄想。
そんでもって、ボロボロになった京一を八剣が抱き締めてる図に萌えてます。


…何処まで京一を可哀想にしたら気が済むんだ、私は…(これも愛故って事で(殴))

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龍京 03





龍麻が酒に酔うのは珍しい。





クラスメイトの殆どは、彼が酒を飲む事そのものを余り知らないのではないだろうか。
彼が好む飲料物と言ったら専ら苺牛乳で、アルコールを摂取するとしても苺のカクテルとかそんな物ではないかと殆どの人間が想像するに違いない。
故に“龍麻が酔っ払う”と言う事さえも、想像がつかない人間が多いだろう。


それに該当しない数少ない人物の一人が、京一だ。
色んな意味で親友をよくよく理解している彼は、恐らく他人は見た事がないだろうという“緋勇龍麻”を度々目撃している。

龍麻が酔っ払うと言う珍事は、その中でも更に珍しい現象と言ってよい。
そもそもが、勧められれば飲むが自らは飲まない、と言うのが龍麻の飲酒スタイルの基本だ。
それを自分から喉を通し、おまけにハイペースで飲むなど、珍事件の中の珍事件だ。






(………ったく)






目の前でビールを煽る親友を眺めながら、京一は目を細める。


350mlのビールを一気に半分喉に通す龍麻。
いつもチビチビとしか飲まないのに、今日は何があったのだか。






(ま、何にしてもだ)






足元に転がっているビールの数は、いつも二人で酒盛りしている時と差はない。
しかし決定的に違うのは、それを転がした人間が京一ではなく龍麻であると言う点だ。



酒を飲んでいる龍麻の表情は、常のものと変わらない。
ふわふわとした笑みが、更に上機嫌なにこにことしたものになっている位か。

龍麻の場合、酔えば酔う程にこにこと笑うから、傍目には気持ちの良い酔いの周りだと思われる。
若しくは全く酔っていないと取るだろう。


だが、京一にはそれが必ずしも酔っ払いの本音ではない事を知っている。






「おい龍麻、そろそろ寝るぞ」
「ん~?」






手の中にあった空のビール瓶をテーブルに置いて、京一はお開きを匂わせる。


いつもはこれを言うのは龍麻の役目だ。
酒宴が長引いた頃か、若しくは京一が酔いが廻って服を脱ぎ始める頃に言われる。
京一は大抵駄々を捏ねるが、布団を敷かれればとっとと寝るので、それでお終い。

が、龍麻は意識があるのか、それとも朦朧としているのか―――――曖昧な声を漏らすだけ。
返事とも取れないその声に、京一は溜息を吐く。






「布団出しといてやるから、入ってろ」
「んー……」
「ゴミ適当に突っ込んどくからな」






散らかっていた空き缶を拾い集めて、キッチンから持ってきたゴミ袋に入れる。
分別して捨てるなんて面倒臭い、全部一纏めだ。


ゴミがなくなって広くなった部屋に布団を敷いてやり、其処に龍麻を転がらせる。
比喩ではなく、文字通り転がされた龍麻は、まだ冷たさのあるシーツに顔を埋めている。
酒で火照った頬には心地良いのだろう。

それを横目に見ながら、京一はキッチンの水に浸していた夕飯の残骸を片付ける。
水とスポンジだけで洗剤を使わないと言う、なんとも適当な洗い方だが、咎める者はいない。






(マジで面倒臭ェな)






食器洗いではなく。
布団の上でゴロゴロ、一向に夢に旅立つ気配のない親友に対して、そんな感想を抱く。


龍麻はよく笑う。
笑う代わりに、怒らないし、泣く事もない。
片鱗さえも他者に見せない。

酒に酔ってもそれは変わらず、一体何がそんなに彼の感情を押し留めているのかと思う程だ。
おまけに彼自身にそんな自覚がなさそうだから、京一は尚更面倒臭いと思ってしまう。



食器を洗い終えてリビングに戻れば、龍麻はやっぱりゴロゴロしている。
京一が戻って来たことに気付いてへらりと笑う彼は、まるで寝る気がないようだった。


布団の真ん中を陣取ってへらへら笑う龍麻の頭を、京一は踏み付ける。
ふぎゅ、と妙な声が漏れたが、気にしなかった。






「占領すんな。横ずれろ」
「ん」






ころり、素直に転がる龍麻。
抱き枕ではない枕を抱えて、表情はやっぱり上機嫌。


作られたスペースに京一が寝転がる。

一人用の布団に、そろそろ成長を終えるだろう少年が二人で寝転がれば、やはり寝苦しいものがある。
常なら京一が龍麻を蹴り出している所だ(家主は龍麻であるのだが、そんな事は京一には関係ない)。

だが龍麻がこうして酔っ払っている時は別だ。






「くっつくな」
「いや」






龍麻は、直ぐに身を寄せてきた。
ぴったりと、隙間なく。

酔っている時には必ずこんな調子で、どんなに引っぺがしても繰り返しくっついて来る。
あまりにしつこい上に改善される様子もないから、京一はもう好きにさせる事にした。
多少暑いと思う事はあるが、それ以外に厭う事もなかった。


猫か犬が甘えて来るかのように、龍麻は京一に擦り寄る。
暫くそのまま放って置いていると、更に龍麻は密着し、終いには京一に腕を回して抱きついて来る。






「うぜェぞ、お前」
「京一程じゃないよ」
「よし、朝殴ってやるから覚えとけ」






今ではない辺り、一応気を使っているのだ。

顔はにこにこと上機嫌だけれど、酔っ払うと言う滅多にない行為に浸る龍麻。
スイッチが何処にあるのか判らない親友の扱いは、最善の注意が必要だ。


――――とは言え、京一が主に気を付けているのは、“気を使わない”と言う点だ。


きっとこの場に葵か小蒔か、醍醐の誰か一人でもいたら、龍麻はこうはならない。
酒を飲むペースは多少早くなるかも知れないが、こうして人にくっついたり、甘えるような仕草をしたり。
ゴミや食器の片づけを人に任せて布団の上でゴロゴロしたり、絶対にしないだろう。

此処にいるのが自分と京一だけだから、龍麻はこうして“酔っ払い”になるのだ。
愚痴のようなものを零す訳でもないけれど、酒に任せて常にはしない行動を取ったり出来る。
気を使わないで良い相手だから。




京一はごろりと寝返り一つして、龍麻と向き合った。


目が合うと、龍麻はやはり、へらりと笑う。
その額を指先で弾いてやると、龍麻は「痛い」と呟く。

でも、此方を見る蒼の瞳は、にこにこと笑っているばかり。



……そんな親友に、溜息が漏れて。






「寝ろ、バカ」






くしゃり、頭を撫でてやって。
さっき指先で弾いてやった額に、京一は自分の額を当ててやる。


額と額を押し当てて目を閉じた京一を、龍麻は少しの間見つめていた。
視界を塞いだ京一にそれは見えないけれど、気配で判る。

これ以上自分に出来ることはないから、京一はそれ以上動かなかった。
だが、恐らく自分が先に眠ることはないだろう。
いつもの酒宴の後と違って頭ははっきりしているし、何より自分が眠る気がない。



頬に龍麻の手が触れた。
その形を――――いや、存在を確かめるように。

京一は無言だった。
龍麻のしたいようにさせる。
唇に柔らかい何かが触れても、何も言わなかった、目を開けることもしなかった。





しばらくすると、龍麻がぽすりと京一の胸に顔を埋めた。
腕が背中に回されて、子供が親に甘えるように抱き付いて来る。

京一は拒否しようとはしなかった。








―――――寝息が聞こえてくるまでは、まだ随分とかかりそうで。

その時まで、京一はずっと子供の頭を撫でていた。









====================================

ちょっと仕事で凹んだので、京ちゃんに慰めて貰いたいなって(元気じゃねェか)。

……この京ちゃん、なんだかお母さん?
攻めが受けに甘えるのも好きですよ。唯一の人にしか甘えないとか大好きです。

龍京 02






京一は隠し事ばかりする。
―――――そう思っているのは、自分だけだろうか。





木の上でいつものように昼寝している親友を見上げながら、龍麻は思った。


誰だって言いたくない事はあるし、聞かれたくない事もあるし、知られたくない事もあるだろう。
龍麻もそれは同じことで、言っていない事は山ほどあって、出来れば言いたくない事もある。
いつだった葵に見せた、両の手を常に隠している理由だとか。

葵も小蒔も醍醐も、勿論人のことは色々と知っている遠野だって、知られたくない事はきっとある。


それを根掘り葉掘り聞こうと思うほど、龍麻は無神経ではない。

けれど―――――京一の事は、知りたい。
彼が話してくれなくても、知りたい。






(でも、教えてくれないよね)






木の上で、今は穏やかな寝息を立てる親友。
真神学園に来て初めて、真正面から全てを受けてくれた少年。

でも、今でも彼は全てを教えてはくれない。


残酷な優しさと、暖かな鋭さを持つ彼は、決して龍麻に対して強く踏み込むことをしない。
一線を引いていると言えば確かにそうで、龍麻もそれ以上を望むことはしなかった―――――筈だった。






(好きだよって言っても)

(教えてくれないよね)






友愛がいつしか慕情へと変化した後。
それまで引いていた薄い薄い白線を、無性に消してやりたくなった。

そして、線の向こう側に佇む彼を捕まえて、境界線など見えない位に強く強く抱き締めたい。


初めての時、彼が真正面からぶつかってくれたように。
彼の一番柔らかい部分もひっくるめて、全部抱き締めたい。
近いようで遠い距離を、零にしたい。

けれども線の向こう側で笑う彼は、いつもそれを拒むから、龍麻は踏み出すことが出来ない。
判ってるよなと暗黙の了解のように囁く声が聞こえてくるような気がして、それが判ってしまうから、判っていると彼が知っているから、龍麻は彼を裏切る事が出来なかった。



聞きたいことは沢山ある。
些細で下らない事から、他の誰も知らない、彼の大事な部分まで。

でも結局―――――自分は臆病なんだと感じながら、龍麻は彼を見詰めるしか出来ず。






(教えてって言ったら)

(君は、僕を嫌いになる気がする)






嫌われたくない。
大好きだから、好きでいて欲しい。
其処に、自分のものとイコールになる感情が存在しないのだとしても。

イコールにならない感情でも、限りなくイコールに近いのならば、龍麻は嬉しい。
笑って手を伸ばして、肩に腕を回して来てくれるから。


だって彼は残酷な優しさを知っている。
俄かな糠喜びなんてさせる事はなく、嫌いなものをきっぱりと切り捨てる事が出来る。

手を伸ばしてきてくれるのは、彼が龍麻を好いてくれている事に他ならない。



そう思ったら、例え彼がこの想いを知らなくても、嫌われるよりはずっと良い。






(知りたい)

(嫌われたくない)



(……だから)






だから、待つ。
彼がいつか話してくれる日を。
隠し事が隠し事ではなくなる日を。

それまでに、龍麻自身も。
話していない事を、話せるようになりたい。


隠し事が嫌な訳じゃない。
知らないことが嫌なだけ。








いつか教えて。
心からの君の笑った顔。









====================================

毎回毎回思うのですが、龍京は結構難産です。だから此処(ネタ粒)八京ばっか増えちゃったんだろうな…
八京はシチュエーションやくっつくまでのアレコレを妄想するのが楽しいんですが、龍京は二人が揃った時点で私的に十分満足なんです。うちの二人がナチュラルラブだから。

うちの龍麻は結構独占欲が強いのですが、京一はそれをあっさり受け止めます。そして適度に流します。男らしい。……まぁ、それでもやっぱり振り回されてるんですけど。
龍京の龍麻はぐるぐる考え込みすぎて空回りしてるような気がします。

レインドロップ(携帯)




[銀魂]の「MR.RAINDROP」を聞いている時に考えて、動物番組でオランウータンが雨の時に葉っぱの傘を使ったのを見て描くのを決意した絵(経緯が長い!)。

蓮の葉っぱみたいな、葉の面積が大きい植物は良いですね。この絵は蓮ではないですけど。
ちびっ子が持ってると、本当に子供がちっちゃく見えて可愛いです。


[こどものじかん]の京一はこれ位です。
もう少し小さいかも知れませんが、デフォルメが苦手で(泣)……
ちなみに、[こどものじかん]の京一は4才です。

こんな子いたら攫います。
……スゲー噛み付かれると思うけど、きっと痛くない!(興奮してるから)


レインドロップ




[銀魂]の「MR.RAINDROP」を聞いている時に考えて、動物番組でオランウータンが雨の時に葉っぱの傘を使ったのを見て描くのを決意した絵(経緯が長い!)。

蓮の葉っぱみたいな、葉の面積が大きい植物は良いですね。この絵は蓮ではないですけど。
ちびっ子が持ってると、本当に子供がちっちゃく見えて可愛いです。


[こどものじかん]の京一はこれ位です。
もう少し小さいかも知れませんが、デフォルメが苦手で(泣)……
ちなみに、[こどものじかん]の京一は4才です。

こんな子いたら攫います。
……スゲー噛み付かれると思うけど、きっと痛くない!(興奮してるから)