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京一は隠し事ばかりする。
―――――そう思っているのは、自分だけだろうか。
木の上でいつものように昼寝している親友を見上げながら、龍麻は思った。
誰だって言いたくない事はあるし、聞かれたくない事もあるし、知られたくない事もあるだろう。
龍麻もそれは同じことで、言っていない事は山ほどあって、出来れば言いたくない事もある。
いつだった葵に見せた、両の手を常に隠している理由だとか。
葵も小蒔も醍醐も、勿論人のことは色々と知っている遠野だって、知られたくない事はきっとある。
それを根掘り葉掘り聞こうと思うほど、龍麻は無神経ではない。
けれど―――――京一の事は、知りたい。
彼が話してくれなくても、知りたい。
(でも、教えてくれないよね)
木の上で、今は穏やかな寝息を立てる親友。
真神学園に来て初めて、真正面から全てを受けてくれた少年。
でも、今でも彼は全てを教えてはくれない。
残酷な優しさと、暖かな鋭さを持つ彼は、決して龍麻に対して強く踏み込むことをしない。
一線を引いていると言えば確かにそうで、龍麻もそれ以上を望むことはしなかった―――――筈だった。
(好きだよって言っても)
(教えてくれないよね)
友愛がいつしか慕情へと変化した後。
それまで引いていた薄い薄い白線を、無性に消してやりたくなった。
そして、線の向こう側に佇む彼を捕まえて、境界線など見えない位に強く強く抱き締めたい。
初めての時、彼が真正面からぶつかってくれたように。
彼の一番柔らかい部分もひっくるめて、全部抱き締めたい。
近いようで遠い距離を、零にしたい。
けれども線の向こう側で笑う彼は、いつもそれを拒むから、龍麻は踏み出すことが出来ない。
判ってるよなと暗黙の了解のように囁く声が聞こえてくるような気がして、それが判ってしまうから、判っていると彼が知っているから、龍麻は彼を裏切る事が出来なかった。
聞きたいことは沢山ある。
些細で下らない事から、他の誰も知らない、彼の大事な部分まで。
でも結局―――――自分は臆病なんだと感じながら、龍麻は彼を見詰めるしか出来ず。
(教えてって言ったら)
(君は、僕を嫌いになる気がする)
嫌われたくない。
大好きだから、好きでいて欲しい。
其処に、自分のものとイコールになる感情が存在しないのだとしても。
イコールにならない感情でも、限りなくイコールに近いのならば、龍麻は嬉しい。
笑って手を伸ばして、肩に腕を回して来てくれるから。
だって彼は残酷な優しさを知っている。
俄かな糠喜びなんてさせる事はなく、嫌いなものをきっぱりと切り捨てる事が出来る。
手を伸ばしてきてくれるのは、彼が龍麻を好いてくれている事に他ならない。
そう思ったら、例え彼がこの想いを知らなくても、嫌われるよりはずっと良い。
(知りたい)
(嫌われたくない)
(……だから)
だから、待つ。
彼がいつか話してくれる日を。
隠し事が隠し事ではなくなる日を。
それまでに、龍麻自身も。
話していない事を、話せるようになりたい。
隠し事が嫌な訳じゃない。
知らないことが嫌なだけ。
いつか教えて。
心からの君の笑った顔。
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毎回毎回思うのですが、龍京は結構難産です。だから此処(ネタ粒)八京ばっか増えちゃったんだろうな…
八京はシチュエーションやくっつくまでのアレコレを妄想するのが楽しいんですが、龍京は二人が揃った時点で私的に十分満足なんです。うちの二人がナチュラルラブだから。
うちの龍麻は結構独占欲が強いのですが、京一はそれをあっさり受け止めます。そして適度に流します。男らしい。……まぁ、それでもやっぱり振り回されてるんですけど。
龍京の龍麻はぐるぐる考え込みすぎて空回りしてるような気がします。