例えば過ぎる時間をただ一時でも止められたら。 忍者ブログ
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To shoot the general, shoot his horse first














ねえ、君を頂戴

そうしたらきっと、僕は“彼”になれるんだ


























【To shoot the general, shoot his horse first】



























全く、何を考えているのか。
そう何度思ったか判らない。

そしてやっぱり、相棒が何を考えているのかも判らない。








公園のベンチの隣に佇む京一と、反対側で沈黙している車椅子の少年と。

二人の間にはお世辞にも良い空気は流れておらず、かと言って互いを無視していると言う訳でもない。
車椅子の少年の視線は、公園の中心で遊びまわる子供達に向けられたまま動かないが、京一は時折少年へと目を向ける。
それも一瞥足らずと言う短い時間ではあったが、見ている事は見ているので、意識している事は確かだ。


だが友人同士と言うにはあまりにも殺伐とした空気。
京一から少年へと向けられる目は、何処か、“監視”の意味合いを持っているように、見る者に印象付ける。

それは間違っていない。
京一にとって、この少年は友人でもなければ知人でもなく、良い仲ではない。
それでも京一が此処に残っているのは、確かに、“監視”の意味があった。



少年が一体どんな人間で、何をしたのか。
前者については京一も把握しているとは言い難いが、後者については明確だった。

故に、京一は監視している。
この少年と、今はこの場にいない相棒の行動を。







―――――色んなもの、見せてあげたいんだ。







彼はそう言って、少年を迎えに行った。
そして常と変わらぬ表情で連れて帰ってくると、二人で街に行くと言い出した。



彼の中で、あの出来事が薄らいだ訳ではあるまい――――きっと一生消えはしない。
だと言うのに、彼は少年を迎えに行き、まるで以前からの友人であったかのように振る舞う。
その瞳に一瞬、違う意識が過ぎるのは否めなかったが、それでも彼は努めて平静だった。

そんな仲間に、まさか、まさかと不穏な考えしか浮かばなかった、クラスメイト達。
無理もないと思う者、それでもと言う者、様々。


その時、自分が何を思っていたかは、京一にもよく判らない。


小蒔が言っていたように、昏い感情を覚えても無理はない。
嘗ての自分はそれに似ていて、そして我武者羅に剣を振い続けていた。

失ったものは大きく、得たものは喪失感と消えない傷だけ。
それを埋め合わせるように、時に狂気に身を狂わせても、京一にそれを否定できる理由と材料はなかった。
ただ出来るものなら、その色に手を染めてくれるなと思うのが精一杯。




だから。

だから、こうして此処にいる。
何を考えているのか判らない親友に付き合って、東京巡りなんてものをしている。
殺伐とした時間を、延々と過ごしている。







(けどなァ龍麻……このシチュエーションはねえだろが)







この場にいない親友の顔を思い出して、京一は頭を掻く。
漏れかけた溜息は、どうにか飲み込んだ。



ちょっとコンビニに行って来ると言って、彼は京一の止める声など聞かずに、一人行ってしまった。
少しの間待っててね、と車椅子の少年に言って、京一には頼むね、の一言だけ。
まるで、それで十分だと言わんばかりに、相棒はあっと言う間にいなくなった。

そうして、京一と少年だけが此処に取り残されている。


はっきり言って、間が持たない。
別に持たせようとは思っていないが、続く沈黙が随分と長いように感じるのだ。




どうしろと。
いや、きっとどうしろとは言わないだろう。

頼まれた(何をとは知らないが)とは言え、別段、何かする事がある訳でもない。
会話をするような間柄ではなく、正直、どちらかと言えば接点は薄い方だ。
こうして京一が二人に同行している事の方が、不思議と言えば不思議なのだろうし。

だから単純に、相棒は彼と一緒に待っていて欲しいと言っただけなのだ。
その間に自分がこの少年と会話しようと、何もせずにいようと、それは相棒にとってはどちらでも良い事で。







(……だりィ)







何がと言われると判らないが、ふっと浮かんだ言葉がそれだった。
恐らく、現状への感想である。

また漏れかけた溜息を、ギリギリの所で飲み込んだ。




ちらりとベンチを挟んだ向こう側に目を向ける。
少年は相変わらず、ボールを追って駆け回る子供達を見ている――――表情のないままで。
口角は僅かに上がっているが、それは笑みとは違うものだった。

元気に駆け回る子供を見つめる瞳は何処か空虚で、中身の気配が酷く稀薄。
京一は、彼がその表情のまま全てを、まるで羽虫を殺すかのように容易く切り捨てられることを知っている。


ふと、そのキレイな顔を演技的に歪めた顔を思い出す。
つい先刻、見たばかりの顔だった。



木刀を握る手に力が篭ったのは、無意識。
それに気付いて舌打ちが漏れたのも、また無意識だった。




くるり、少年の目が此方に向いた。
舌打ちが聞こえたかと思うと、また同じように打ちそうだった。







「蓬莱寺京一――――だったよね」







抑揚のない声だ。
目を細め、笑うのがわざとらしい。

当たり前だ。
向けられる眼が何処か空虚に見えるのも、中身の気配が酷く稀薄である事も、何もかも演技がかって見えるのも。
何せこの少年――――耶之路龍治は“欠如”した人間なのだから。


返事をせずにいれば、龍治はしばし此方を見つめたまま黙ったが、少しするとまた口を開いた。






「君は変わってる」
「テメェ程じゃねえ」






自分が“普通”の枠に収まるとは思っていない。
しかし、この少年の方が余程“普通”ではない。

目を向けぬまま、まるで切り落とすように低い声で告げると、そうかなァと龍治は首を傾げる。






「変わってるよ。凄く。面白い位だ」






言葉通り、面白がっている色が垣間見えて、京一は龍治を睨んだ。
話し方の一つ一つが、酷く癪に障る。
空っぽのその喋り方は、京一の神経を逆撫でするのに十分な役割を果たしていた。






「君達を初めて見た時、緋勇龍麻の次に、君の事が気になったんだ」






車椅子が方向を変え、龍治は体ごと此方を向いた。
京一はそれを横目で見ただけで、街灯の柱に寄りかかったまま、動かずにいる。






「君達の中で、彼が一番、生きている感じがしたんだ」
「………」






龍治のその言葉は、以前も聞いた。
“あの事件”の全てを起こす切っ掛けになったとも言える理由として。

彼が大切なものを失う理由と言うには、あまりにも理不尽で身勝手な理由だった。



だからなんだと。
声を荒げかけて、また湧き上がりかけた感情を、歯を噛んで押し殺す。

殴り飛ばしてやりたいと思うし、それで何が変わる訳でもないと思う。
大体、それをすべきは自分ではなく、彼なのだ。
今、自分はただ見守る事だけが赦された介入なのだ。






「そして、一番生きていると感じる彼の、その隣に、君はいた」






車椅子のタイヤが砂利を踏む。
からりからり、車輪のチェーンの音がして、それさえ酷く空っぽに聞こえた。






「よく覚えているよ。初めて君を見た時の事」
「……そりゃ、ありがとうよ」






心にもない言葉を述べれば、龍治はまるで嬉しそうに笑う。
その本心は喜んでもいなければ、傷付いてさえいない、琴線に触れてすらいないのだろう。

空っぽの少年には、己の感情さえも、何処かに置き去りにした遠い存在でしかない。







「不思議だったよ」
「………」
「そう、とても不思議だったんだ。だから覚えてる。他の人の事は、顔も覚えていないんだけどね」






龍治の言葉は、告白に似ていて、単なる独り言のようにも聞こえる。

少しの間、思い出そうとするように、龍治は目を伏せた。
京一は龍治から視線を逸らさぬまま、動かない。










「君は強い光に似ていた。けれど、深淵で眠る闇にも似ている」









それは、正反対の性質。
全く逆の極地にある、云わば裏表。

一辺がなくなっては存在できず、しかし自らの裏側を見る事は敵わず、近くて遠いモノ。




光の中に存在しながら、深淵の闇を知っている。
深淵の闇に身を落としながら、光の中を歩いている。

失う痛みを知っている。
奪う瞬間の悦楽を知っている。



全てが崩れたその後の、虚しさを覚えている。




だから、酷く面白かったと龍治は笑う。






「……そうかよ」





再び姿を見せた瞳は、やはり空虚で、其処には京一が綺麗に映り込んでいた。


褒めてんのか、貶してんのか。
こいつもよく判らない頭してやがる。

相棒はまだ帰って来ないのかと、公園の入り口を見遣りながら胸中で思う。
なんだって自分の周りには、よく判らない思考回路を持った奴ばかりが集まるのかと。






「そんな君を、彼は一番信頼している」






京一は返事をしなかった。
恐らく、しようとしまいと、龍治にとっては関係ないのだろう。

思った通り、龍治は喋り続けた。






「さっきも、彼は君に、俺の事を頼むと言った」
「ああ、言ったな」
「俺が今此処で、君を殺す事だって在り得るのに」






聞こえた台詞に、京一は振り返る。
見たのはやはり、常と変わらぬ表情の龍治。




街灯から背を離し、真っ直ぐに地面に脚をつけて。
木刀を肩に担ぐいつもの姿勢で、京一はこの日この時始めて龍治と向き合った。




何と言った。
何を言った?


僕が今此処で、君を殺す事だって在り得るのに。



それは、あの事件のようにか。
自分は何をする訳でもなく、他者をまるで玩具のように操って、例えば首を絞めるのか。

例えば刺すのか、例えば、例えば―――――方法は幾らだって思いつく。
そして目の前の少年がそれを指示したとは、恐らく誰も思うまい。
目の前で友達が殺された、それを助ける事が出来なかった、可哀想で心優しい車椅子の少年。
きっとそれ位の泣いた顔や台詞くらい、すらりすらりと口から滑り出てくる事だろう。



可能だ。
まだ、あの不可解な《力》が使えるのならば、それは可能な話だ。

………京一が大人しく殺されるような人間であれば、だけど。






「殺されるかよ。お前なんぞに、このオレが」






きっぱりと言い切る京一に、彼もそう思っているんだろうね、と龍治は呟いた。







「それがまた、不思議なんだよ。どうして、他人をそんなに信用できるのか」
「……今のお前じゃ、到底判りっこねェんだろうよ」






言いながら、自分もはっきりとした理由は判らない。
理屈ではない、としか思い付かない。



嘗てあれだけ嫌悪していた人と人との繋がりが、今はやけに温かく思える。
何処でどう、そういう方向に変化したのか判らないが、それでも何某かの切っ掛けはあったのだろう。

変わる切っ掛け、思う切っ掛け、それはまるで静かな水面に落ちた雫のように波紋となって広がった。
いつしか雫の数が増え、雫が雨になって晴れた頃、湖面には沢山の光が棲んでいた。
その一つ一つを掬い取ってみれば、其処にあるのは、身近な人々の言葉や顔であったりして。


だから、多分―――――人を信じるようになったのは、やはり、人のお陰なのだろう。



今の龍治には判らない。

怒りも、悲しみも、喜びも、全ては人と交わることで生まれて来る。
何処かにそれを置き去りにして、忘れてしまったままの今では、きっと判らない。






「……緋勇龍麻は、どうしてそんなに君を信じる事が出来るのかな」






龍治のその言葉は、問い掛けのようで、独り言地味ている。






「…ンなモン、オレが知った事かよ」
「君にも判らない?」
「あいつの頭の中身なんざ、判った例がねェ」






ただ判るのは、自分が信頼されていることと、自分が彼を信頼していること。

春の桜吹雪の中で交えた時から、何故か、気付けば当たり前のように隣にいた。
まるで随分昔から知っていたかのように、言葉なくとも通じる何かがあって。







「………それなら、」







判らないものは、判らない。
どうして龍麻が自分を信頼しているのか、どうして自分が龍麻を信頼しているのか。
龍麻なら、例えば――――「京一だから」なんて台詞が出て来るのだろうか。















「それなら君が俺のものになったら、彼が君を信じる理由が判るのかな」















真っ直ぐに射抜く瞳は空虚で、昏く、深い。

その奥底が見えないのは、何かが阻んでいるからか、それとも真に底がないのか。
空っぽだから、底辺さえも見つからないのか。




龍治の台詞の意味を判じかねて、京一は眉根を寄せた。






「君が彼じゃなくて、俺を見たら、その理由は判るかな」
「……オレの知った事かよ」
「俺が彼になったら、君が彼を信じる理由が判るのかな」





京一の声など聞こえていないかのように、龍治は繰り返す。


彼じゃなく、俺が。
俺が、彼になったなら。

馬鹿馬鹿しい机上の空論を並べる龍治は、真剣というには曖昧で、しかし巫戯蹴ている訳ではなく。
空っぽの心の埋め方を探し続ける瞳は、空虚であるが故に嘘を知らないのだろう。
嘘を吐く程に、中身が埋まっていないから。






「そうしたら、彼は俺になるのかな。君を失った彼は、どうなるのかな」






言葉に奇妙な色が浮かび、顔を見れば何処か喜色が含まれて。
並べられる言の葉に似合わぬ色が其処にはある。






「俺が彼になって、彼が俺になって……君は彼じゃなくて、俺を見る」
「馬鹿馬鹿しい」
「君は俺を見て、彼を見ない。俺は彼になっていて、彼は俺になっていて」
「……うるせェな」
「彼は空っぽになってる? 今度は、俺が満たされる? 生きている?」





滑稽な戯曲の台詞を聞いているようで、酷く苛々する。
なんだってこんなのを任せて行くんだ、と今は此処にいない相棒を少しだけ恨む。







「空っぽになった時……彼はどんな顔をすると思う?」







突然投げかけられた問いの意味が、京一には判らない。
龍治の指す“空っぽ”がどれであるのか、それさえも判然としない。
ただ並べられる言の葉の一つ一つが、酷く気に障って仕方がない。



あはは、と明るい笑い声が響いた。
公園の中心で駆け回る子供達と比べても、遜色のない明るい声。

ただし、それは酷く空っぽな笑い方で。







「面白いね!」







そういった龍治の顔は、まるで悪戯を思いついた小さな子供のようだった。






「ねぇ、試してみよう」
「………あぁ?」
「君が俺のものになって、俺が彼になって。その時、彼がどんな顔をするのか。見てみようよ」






共犯者を求める子供は、それがどれだけ残酷な事なのか判らないのだろう。
有が無に変わる瞬間の冷たい時間を、知らないから。


木刀を握る手に、痛いほどの力が篭る。

振り上げてはいけない、振り下ろしてはいけない。
その先にあるものに気付かせる為に、きっと龍麻はこの少年を連れ出したのだから。






「俺は、君の事を気に入ってる。きっと彼と同じように」
「…“カラッポ”のテメェに、そんな事が判んのかよ」
「さあ。よくは判らない。でも、きっと同じだと思うんだ」






伸ばされた龍治の腕は、真っ直ぐに京一に向かっていた。
其処に不穏な気配は感じられないけれど、まるで捕らえようとしているかのようで、京一は顔を顰める。



浮かんだ“空っぽ”の笑みは、酷く空虚で薄っぺらい。
ヒトを壊す事で笑うしか、この“空っぽ”には束の間の感情を覚える事すら思い付く方法がない。
己を埋める方法を、他者を壊す歪んだ手段でしか、考えることさえ出来ない。

…何を考えてこんな少年を連れ出して、同じ時間を過ごそうとしているのか。
相変わらず、相棒の考えが判らない。



届かない手を伸ばして、まるでいつかは其処に来るべきものが自然と収まるものだと。
信じることさえ判らない筈なのに、まるで絶対者のように告げるのが、
















「だってほら。俺は君を欲しがってるみたいだ」
















―――――――気に入らなくて、虫唾が走る。






全てを見透かすように、空虚な笑顔を浮かべ。
場違いな程に明るい声を上げ。

その芯は、何もなく空っぽで底さえも存在しない。


……きっと、ヒトが“死”を持たずして壊れる事も、この少年にはまるで些細な事なのだ。




ふざけるなと怒鳴ることも面倒だった。
第一、この少年にはそんな台詞も意味を持たないだろう。


砂利を踏む音が聞こえた。
勝手に席を外した当人が、ようやく戻って来たのだ。

そちらへ向く前に、京一は一つ息を吐いて、龍治を見据える。







「オレが、お前のものになるって?」







改めて相手の言葉を吟味すれば、やはり馬鹿馬鹿しいとしか思えずに。











「出来るモンならやってみやがれ」











オレは、お前になんざ興味ない。

言って背を向ければ、面白いと思うんだけどなぁ、という台詞。
動きかけた右腕を左手で掴んで、京一は強く拳を握った。




振り返って、見慣れた顔を見つける。
……それが随分、久しぶりだったように感じた。






「どうしたの? 京一」






なんの話、と問いかける声が。
不思議そうに見つめる瞳が。

例えば空っぽになるなんて、考えたくもない。


壊れかけた色を、ついこの間見たばかりだ。
あれが今度は空虚になって、何も映さなくなるなんて、冗談じゃない。







「―――――なんでもねェよ」







龍麻の手のコンビニ袋から、断りを入れずにコーラのペットボトルを抜き取った。
止める声も注意の声もなかったから、そのまま蓋を開けて黒い液体を胃へ流し込む。
喉が潤うと同時に、炭酸の気泡が弾けていた。

龍麻は黙したままでそれを見て、京一が視線に気付いて交えると、ふわりと笑う。
今の何処か笑うタイミングだったかと疑問に思ったが、言った所で解決もしないだろう。
気にしないことにして、またコーラを煽った。


がさがさと音を立てて龍麻が取り出したのは、案の定、苺牛乳。

それを片手に持って、龍麻は龍治にパックのジュースを見せながら、






「龍治君も飲む?」






親しい友人に見せるのと同じ笑顔で、問う。
そんな龍麻に、龍治は先刻京一に見せた笑顔とは一変した顔を見せた。






「いらないよ」
「そう」






あっさりと龍麻は引き下がった。
龍治は既に此方を見ていない。













よく判らない。
緋勇龍麻も、耶之路龍治も。

どうして自分なんかを気に入ったなんて言い出すのか。
どうして自分のことをあんなに信頼なんてしているのか。



何を見て、
何を感じて、
何を得て、

何を思うのか。


判らないけれど、一つだけ。
彼らは対でありながら、何処かが酷く似通っていることだけが、なんとなく判る。









―――――――だからと言って、あの空虚な手を掴むつもりは、なかった。








































……出来るものなら。

彼は言った。
彼は確かに、そう言った。



それは、つまり。

出来るのならば、彼は自分のものにもなってくれると言う事か。








「……うん」







告げた彼に、きっとそんな意識はないのだろうけれど。
都合良く解釈したところで、誰も咎める者も、止める者もいない。




向けられる鋭い眼差しも。
鋭さを隠さない言葉も声も。

自分に向けられることのない、笑顔も。
束の間の無防備な表情も。
何もかも、何故か酷く記憶に焼きついて離れない。


この感情の名を、自分は知らない。
それが“感情”の一つであるのかすら、よく判らない。

ただ、やけに記憶に鮮明に残る色を、自分だけに向けてみたい。



その時、やっと、自分は“空っぽ”ではなくなるような気がする。












「やっぱり、俺は君が欲しいんだ」

















君の全てで、僕を埋めたいんだ。


君の光と、影で、全てを。























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初! 龍治×京一です。マイナー路線ドンと来ーい!!
厳密にすると龍京←龍治です。自分の予想通り、龍京前提になりました。

龍治、難しい。
無邪気に怖い事言ってるイメージは揺るがないのですが、それだけに逆に中々……
妙に老成しかかっている部分と、善悪の区別がつかない小さな子供の部分を意識しました。
……玉砕してる感有りますが。

こんな感じが、龍治×京一のスタートです。ダーク路線だな、こりゃ。
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