例えば過ぎる時間をただ一時でも止められたら。 忍者ブログ
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10 一番星発見








歌舞伎町の夜は、眩いネオンが何よりもその世界を鮮やかに彩る。
自然光ではないが故の虹彩を、龍麻は決して嫌いではなかった。

幾つも連立する人工灯は、見つめ続けていれば確かに網膜が焼かれるのではと思う事もある。
けれど、だからと言ってそれを嫌いになるには、その程度の理由はささやか過ぎた。
これはこれで、この東京と言う地、歌舞伎町という空間によく似合う。
あちこちで飛び交う呼び込みの声も、龍麻は決して嫌いではないのだ。
それが此処で生きるモノ達の作り出した、この空間独自の虹彩であるのだから。


歩き慣れた道だと、一歩先を歩くのは、真神に来てで出逢った無二の親友。
何よりも誰よりも信頼する事の出来る、たった一人のかけがえのない相棒。

そして―――――……大切な、大切な、想い人。







「龍麻、其処寄って行こうぜ」







振り返り、シルバーアクセサリーを並べた露店を指差して、京一が言った。


龍麻は、アクセサリー類にそれほど興味を持った事がなかった。
今でもそれは同じで、身につけるほど親しみを覚える事もない。

けれども京一がそう言うのなら、と龍麻は相棒の言葉に頷いた。
それを受けた京一は、嬉しそうににぃっと笑って、示した露店に近付いた。






「よう、京ちゃんじゃねェか」
「京ちゃん言うな。アンタ、今日は此処なんだな」
「今週は此処にいるつもりだよ」






どうやら、露店の主人は京一の知り合いらしい。
つくづく顔が広いと思う。


商品の品定めをするよりも、京一は店主との話に盛り上がっている。

その傍らで、龍麻は気紛れに、並べられた商品を眺めてみた。
主な商品はガイコツや爬虫類を模した装飾品だったが、幾つか、女子が好きそうなものもあった。
ピンク色の石を埋め込んだリングや、ターコイズのブレスレット、蝶を模したピアス。

京一と店主の話を半分気分で聞いていると、どうやら全てが店主の手製らしい。
随分と手が凝っている、道理でちらりと見た値札の桁が少々大きい訳だ。






「あくどい商売すんじゃねーぞ、また死にかけるぜ?」
「ああ、其処は気ィ付けてるよ。そう何度も京ちゃんに頼る訳にゃァ行かねェからな」






物騒な会話でさえ、京一と店主にとっては単なるスパイスらしい。
龍麻も、常日頃京一と一緒にいるお陰で、こんな会話も随分耳慣れた。
最初の頃に面食らったかと言われれば、それ程でもなかったが。


気紛れに、並べられた商品の一つを手に取った。
銀細工の、くり貫かれた星。
周囲のネオンに照らされたそれは、一瞬ごとに違う光を反射させた。

人差し指と親指で持って、中でゆらゆら揺らしてみると、人工灯の虹彩がきらきら光る。






「なんでェ龍麻、そんなもん欲しいのか?」
「そんなモンとはご挨拶だねェ、京ちゃん」






龍麻の様子に気付いた京一の言葉に、店主が笑いながら割り込んだ。






「キレイだね、これ」






京一に星を見せて言うと、京一はそうか? と眉間に皺を寄せる。
悪い印象はないのだろうが、京一はこの手の物に興味がなさそうだ。
否定はしないが肯定もしないまま、京一は首を傾げた。






「そいつはペアになってんだ。もう一つはこっち」






早速商売人の顔になって、店主はペアだと言う星を差し出した。

同じ銀細工のくり貫かれた星は、ぱっと見ると違いが判らない。
よくよく見れば銀縁の象りに、《Ms.》《Mr.》と彫られている。
此処にそれぞれの名前を彫って、二人一組お揃いで持つのだ。


龍麻はじっと対の星を見つめた後、






「これ、こっちじゃないとダメですか?」
「ん? いや、二つとも買ってくれるんだったら、セット料金にしとくよ。京ちゃんの友達だからな」
「……………」






友達。
その一言に、京一が無言で紅潮した。
ちらりと見てみれば、視線から逃れるように京一はそっぽを向く。

その様子にクスリと笑って、名前のイニシャルは? と問う店主に向き直り、そっと顔を近付けて伝える。
店主は聊か驚いたような顔をしたが、少しするとにぃと笑い、そうかそうかと嬉しそうに作業に取り掛かった。











「京一」


「あん?」




「はい、あげる」















困りながら受け取って、身につける訳にも行かずに更に困ってればいいよ!
そんで「無理につけなくていいからね」とか龍麻に言われて、
でもやっぱ貰ったんだから一度ぐらいは…とかで目立たない所に身につけてるとか。

アニメの京一はシルバーアクセが似合うと勝手に思ってる私(爆)。
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