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最初の頃は多少気が引けていたサボタージュも、繰り返していけばやはり麻痺してくるものなのか。
サボろうぜ、と堂々と教室で誘いをかけてきた親友に、龍麻は苦笑して頷いた。
葵が何か言っていたような気もするが、あまり覚えていない。
真面目な彼女には、少し悪い事をしたかも知れない、と思わないでもないけれど。
だって断わるには、あまりにも魅力的な誘いなのだ。
一見粗暴な親友と一緒に、授業をサボって昼寝するという行為は。
そして今日も一昨日、先週と変わらず、二人で授業をサボっている。
校庭に聳える、一つ大きな木の上で。
風が吹いて、枝が揺れ、サワリサワリと葉の擦れ合う音。
慌しい夏が通り過ぎたけれど、空はまだ蒼くて、陽射しも強い。
でも此処にいれば、それも柔らかく丁度良い。
「気持ちいいね」
龍麻が座った木の枝。
それと同じ枝の上で、幹に寄りかかって目を閉じている親友に声をかける。
返事がなくて不思議に思って、親友の顔を覗き込んでみる。
片足を立て、肩に愛用の木刀を立てかけて。
お世辞にも安全ではないであろう場所で、器用に身動ぎ一つせずに。
口を半開きにして、京一は静かな寝息を立てていた。
此処にくると昼寝をするのが恒例になっているからだろうか。
登るなり京一はさっさとこの姿勢になって、目を閉じた。
そして程無く、こうして眠ってしまうのである。
もう直ぐ授業終了のチャイムが鳴る。
音が鳴ったら、多分京一は目を覚ますだろう。
(―――――勿体無いなぁ)
あの鋭い眼差しも好きなのだけど、と思いながら。
龍麻はもうしばらく、この木漏れ日の下で眠る親友を見ていたくて、手を伸ばす。
普段はあれほど気配に敏感な京一なのに、此処にいる時だけは、まるでそんな風には見えない。
こうして龍麻が手を伸ばしてみても、身動ぎする事もない。
チャイムが鳴ったら、この一時はお終い。
そっと、京一の両耳を両手で覆う。
くすぐったそうに京一が僅かに首を捻ったけれど、それきりで、また寝息を立て始めた。
「気持ちいいもんね、此処」
此処は京一のお気に入りの場所で、取って置きの寝床。
龍麻は出逢ってすぐに此処に連れて来られたけれど、京一は言った。
「誰も彼もに教えてる訳じゃない」と。
誰も彼もに教える訳じゃない場所を、此処に教えてくれた理由を、
勝手に想像したりして、都合良く解釈しても、いいだろうか。
こんな風に触れても許してもらえるのなら、尚更。
だから。
それなら。
もうしばらく、このままで。
優しい木漏れ日に包まれて、君と一緒に眠っていよう。
前回拍手の“5.ひなたぼっこ”と少しだけリンク。
…昼寝ネタ多いな…