例えば過ぎる時間をただ一時でも止められたら。 忍者ブログ
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07 木漏れ日の下でのこの一時








最初の頃は多少気が引けていたサボタージュも、繰り返していけばやはり麻痺してくるものなのか。
サボろうぜ、と堂々と教室で誘いをかけてきた親友に、龍麻は苦笑して頷いた。
葵が何か言っていたような気もするが、あまり覚えていない。
真面目な彼女には、少し悪い事をしたかも知れない、と思わないでもないけれど。

だって断わるには、あまりにも魅力的な誘いなのだ。
一見粗暴な親友と一緒に、授業をサボって昼寝するという行為は。


そして今日も一昨日、先週と変わらず、二人で授業をサボっている。
校庭に聳える、一つ大きな木の上で。




風が吹いて、枝が揺れ、サワリサワリと葉の擦れ合う音。

慌しい夏が通り過ぎたけれど、空はまだ蒼くて、陽射しも強い。
でも此処にいれば、それも柔らかく丁度良い。







「気持ちいいね」







龍麻が座った木の枝。
それと同じ枝の上で、幹に寄りかかって目を閉じている親友に声をかける。


返事がなくて不思議に思って、親友の顔を覗き込んでみる。

片足を立て、肩に愛用の木刀を立てかけて。
お世辞にも安全ではないであろう場所で、器用に身動ぎ一つせずに。
口を半開きにして、京一は静かな寝息を立てていた。



此処にくると昼寝をするのが恒例になっているからだろうか。
登るなり京一はさっさとこの姿勢になって、目を閉じた。

そして程無く、こうして眠ってしまうのである。




もう直ぐ授業終了のチャイムが鳴る。
音が鳴ったら、多分京一は目を覚ますだろう。







(―――――勿体無いなぁ)







あの鋭い眼差しも好きなのだけど、と思いながら。
龍麻はもうしばらく、この木漏れ日の下で眠る親友を見ていたくて、手を伸ばす。

普段はあれほど気配に敏感な京一なのに、此処にいる時だけは、まるでそんな風には見えない。
こうして龍麻が手を伸ばしてみても、身動ぎする事もない。


チャイムが鳴ったら、この一時はお終い。




そっと、京一の両耳を両手で覆う。
くすぐったそうに京一が僅かに首を捻ったけれど、それきりで、また寝息を立て始めた。









「気持ちいいもんね、此処」








此処は京一のお気に入りの場所で、取って置きの寝床。
龍麻は出逢ってすぐに此処に連れて来られたけれど、京一は言った。
「誰も彼もに教えてる訳じゃない」と。

誰も彼もに教える訳じゃない場所を、此処に教えてくれた理由を、
勝手に想像したりして、都合良く解釈しても、いいだろうか。


こんな風に触れても許してもらえるのなら、尚更。




だから。
それなら。






もうしばらく、このままで。











優しい木漏れ日に包まれて、君と一緒に眠っていよう。













前回拍手の“5.ひなたぼっこ”と少しだけリンク。
…昼寝ネタ多いな…
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