例えば過ぎる時間をただ一時でも止められたら。 忍者ブログ
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Remember the result

















理由は、どうせ後付みたいなものなんだ。


























【Remember the result】



























「ちょ……っと、待て、コラ、龍麻ッ!」







少しばかり埃臭いマットの上、じたばたと動けば舞い上がるそれに呼吸を妨げられる。
かと言って大人しく出来る訳もなく、京一は自分の上に馬乗りになる龍麻を押し返そうと、躍起になって暴れた。







「次の授業! 遅刻すんだろ!」
「サボるって言ってたじゃないか」
「いや、出る。気が変わった。今決めた。次の授業出るッ! だから退けッ」
「いいから、いいから」
「良くねェ―――――ッ!」







間近に迫る親友の顔を押し退けつつ、京一はどうすればこの状況を脱せるのが必死で頭を巡らせる。




この親友相手に、うっかり隙を見せたのが運の尽きか。

二人きりになるのは珍しいことではないけれど、こんな場所でまで事に及ぼうとするとは思わなかった。
しかし考えてみれば、漫画や一昔前の青春ドラマでよく見るような、お誂え向きの場所とも言える。
龍麻がその手の代物に興味があるかは知らないが。


暗がりの体育倉庫、蒲団代わりの古ぼけた埃臭いマット、窓は天井近くの高さで外から内部の様子は覗けない。
授業はとっくに終わって、先ほどまで体育館に集まっていた生徒達は、既に教室に戻っている。
倉庫の鍵はかけられていないが、錆ているのか開きにくく、開けようとすれば耳障りな音がサイレン代わりに音を鳴らす。
その音を立てて仮に誰かが入ってきても、暗く用具で溢れる倉庫の奥に引っ込んでいれば、見付かることもなく。

見付かる心配がないと言う事は、助けを求めるだけ無駄とも同意義。
こんな状況は誰にも知られたくないけれど、プライドと身の危険を乗せた天秤はぐらぐら揺れている。

声を上げても、殆ど意味はない。
何故なら、過度の湿気や熱から用具を保護する為に、土壁で出来ている用具倉庫の壁は分厚い。
次の体育の授業が始まった所で、誰も京一の声に気付く者はいないだろう。



………実にお誂え向きの場所であった。




背けた顔の右半分を、龍麻の前髪がくすぐる。
触れるだけのバードキスが落ちて、ゆっくりとそれは下降して行った。

機動性重視の体操服、首の周りも無論開放的に出来ている。
龍麻は京一の首筋に唇を寄せると、一つ強く吸い上げた。
小さな痛みに躯が震え、肩を押し返そうとしていた手は無意識に龍麻の服を掴む。






「京一……」
「た…つ、ま……退け……ッ」






往生際悪く足掻いても、龍麻は一向に意に介さない。


龍麻の手が体操着の下へと滑り込む。
無駄なく筋肉のついた腹を撫でて、体操着を捲り上げる。

ひんやりとした空気に晒されて、京一はまた遮二無二暴れた。






「龍麻、放せッ! 退け!」
「いーや」
「嫌じゃねーよ、退けッ! 此処でスるなんざ、絶対ゴメンだからな!」
「大丈夫だよ、見付からないから」
「見付かる見付からないの問題じゃねェ! 嫌だっつってんだよ!」
「やだ」
「お前の“やだ”は却下だッ!」






じたばたと暴れる京一に、龍麻は表情一つ変えず、行為を進めようとする。


龍麻の下が、京一の首筋を這う。
体操着の下へと滑り込んだ手が、京一の胸の上を滑っていた。
指先が突起に触れて、京一の肩が跳ねた。

あろうことか親友によって開かれた躯は、その官能にいつの間にか染め上げられた。
触れられれば容易くスイッチが入り、力が抜けて筋肉が弛緩する。






「んっ……ふ、っは…バカ、龍麻ッ…!」
「逃がさないよ、京一」






睨み付ける京一を、龍麻は常と同じ笑顔で見下ろして、宣告した。
尚も抗議を上げようとした京一の唇を、龍麻は己のそれで塞ぐ。


何事か言おうとしていた所為で、無防備に開かれてしまっていた口。
呆気なく侵入を許してしまった舌が、他に音のない体育倉庫の中でぴちゃりぴちゃりと水音を立てる。






「ん……んぁ……ふ…」
「ぅん………」
「っは、ぁ…んぐ……」






繰り返される深い口付けに、思考回路が停止する。
そんな事になれば、龍麻の思う壺だと判っているのに、若い躯は与えられる官能に正直だ。







「…ぅう…んぅ……」






まるで生き物か何かのように、龍麻の舌は京一を犯す。

肩を押して突っ張っていた筈の右手は、縋りつくように首に回されていた。
左腕は、埃を嫌って中途半端に浮かした上半身を支えている。


口内を犯しながら、龍麻の指が京一の胸の果実を摘む。







「……っふ……ぁ……」






口付けの隙間、呼吸に伴って漏れる声。
しっかりと聞き止めた龍麻は、顔を離してにっこりと笑う。







「此処なら、声出しても平気だからね」
「……へーき、じゃ…ねー……」







休憩時間が終わるまで後どれ位だとか。
次の体育のクラスが来るかも知れないとか。
そうしたら、誰かが用具を取りに倉庫に入ってくるとか。

いや、そもそもこんな場所で情事に及ぶなとか。


言いたいことは主張と苦情と合わせて山ほどあるが、それよりも呼吸をするのが先。



しかし整うよりも先に、また塞がれる。







「んぐ…っふ、ぅうん……ッ…」







呼吸が出来ない苦しさと、与えられる愛撫の心地良さ。

未だ残った理性と男としての矜持が、それらに身を任せるのを必死で拒んでいる。
此処まで来て往生際が悪いと言われようと、京一が容易く委ねられる訳がない。


京一のそんな葛藤を、まるで一枚一枚剥いで行くように、龍麻の手は京一の熱を煽っていく。







「ふぁっ…は、た…つまァ……」







離れた唇の間、銀糸が名残のように光る。
プツリと切れた唾液が、京一の口端を濡らした。

光量の少ない倉庫の中、暗闇に慣れた視界に浮かび上がる親友の顔。
理性と本能の狭間に揺れる京一の瞳に、龍麻は確かに劣情を煽られた。


口端で光る唾液を舐め取ると、京一は嫌がる子供のように顔を背ける。
それを追い駆ける事はせずに、龍麻は京一の耳下に顔を寄せた。






「……あ……!」






カプリ、と甘噛みすれば、漏れる声。


柔らかな耳朶に歯を当てながら、胸の蕾を指先で転がす。







「感じてる? 京一」
「………ッ…」







耳元で喋れば、呼吸が当たる。
快楽を覚え込んだ若い躯は、その些細な刺激にすら敏感に反応してしまう。

京一の反応に充足感を覚えながら、龍麻は胸の果実を指で挟む。
捏ねるように刺激を与えると、京一の躯が小刻みに震えた。






「……っは…やめ…龍麻ッ……」
「駄目。やめない」
「んん……!」






尚も龍麻の行動を遮ろうとする京一だが、もう反抗の意味もない。


捲り上げた体操着が元に戻らないように、片手で抑えて、龍麻は今度は胸元に顔を近付ける。
刺激を与えられて硬くなった乳首に、ゆったりと舌を這わした。

熱を持ったぬめる感触に、京一はゾクリと背筋を何かが駆け抜けるのを感じた。
それが自覚したくもないが、快感である事は嫌と言う程知っている。
プライドがその感覚の拒否を願うも、最早思考と躯との回線は繋がっていない。



強く吸われ、京一の躯が仰け反る。
赤子が母乳を求めるかのように執拗に吸い上げる龍麻に、京一は頭を振った。






「や、やめ、龍麻ッ…! あ……!」






京一の制止など何処吹く風で、龍麻は京一を追い立てる。

口に含んだままのそれに、歯を立てられる。
シコリのように硬く張った果実は、微かな痛みも快楽に変えてしまう。






「…んッ…は、あ……」
「気持ちいい?」
「しゃべ、ん、な……ァ……」






高まっているのは、追い上げられる京一だけではない。
熱に翻弄される恋人の表情に、龍麻の興奮も昂って行く。


龍麻の手が、京一の一物をズボンの上から握る。






「京一、もう勃ってるよ」
「バッ…や、やめッ!」
「乳首弄られただけなのに」
「言うな……っや…!」






手早く、下着ごと脱がされて、京一の雄が晒された。

緩くではあるが勃ち上がりつつあるソレは、京一が確かに感じていた事を知らしめる。
急に理性が戻った京一は、現状と次第の原因から逃れようとまた暴れ出した。






「は、離せ、龍麻! 頼むから! 授業ッ」
「サボるんでしょ?」
「出るっつってんだろ!」
「大丈夫」
「じゃね……ぅんッ!」






龍麻の手が直接京一の雄を包み込み、上下に扱く。
上がりかけた嬌声を、京一は咄嗟に口を手で覆って隠す。







「…っ、ふっ…ん、んくっ……」
「それに、授業さっき始まっちゃったし」
「っは…ん、ぅ………!」
「チャイム鳴ったの、聞こえなかった?」






こんな状況で聞こえるか―――――言葉と共に、殴りつけてやりたい衝動に狩られる京一だ。


だがよくよく耳を済ませてみれば、体育館の方から人の気配がする。
途端に緊張が走って、京一は声を出すまいと唇を噛んだ。

直接的な刺激を与えられる雄は、既にほぼ完勃の状態。
この状態で行為を続けたくもない(そもそもしたくもないし、始める気もなかった)が、此処で放り出されるのはもっと辛い。
龍麻を押し退けて、何処か人気のないトイレにでも駆け込めるなら、そうする。
しかし龍麻は一行に行為を止める気はい(寧ろ楽しそうに見えるのは何故だ)上に、京一を逃がすつもりもない。


とにかく、耐えるしかない。
京一が出した結論は、その一つ。






「……っ、…ッ……!」
「あれ……京一、緊張してる?」






今までも時折思った事だったが、にこやかに笑う龍麻が正直恐ろしい。
次いで、龍麻の笑顔が常のふわふわとしたものとは少し違う事に気付いた。

……遅すぎる、と自分でも思う。


この笑顔は、何かに怒っている時の笑顔だ。
前にもこんな事があったじゃないか。
気にしてないよと顔で笑って、目が全く笑っていない事があったじゃないか。






「京一、一回イこうか」
「んッ……!」
「大丈夫だよ、声出しても。聞こえないから」






京一の雄を扱く手の動きが激しくなる。
下半身の熱が煽られて、京一の躯が震えた。


埃を嫌って浮かせていた上半身を支えていた腕が、力を失う。
マットに倒れ込むと薄らと埃が舞い上がった。

硬く噛んでいた口端が切れて、血が流れた。
目敏く見つけた龍麻の顔が近付いて、唇に当てていた手を外される。
舌が這い、針のような痛みに僅かに口を開けると、それはすかさず内部へと侵入を果たす。



勃起した雄からは既に先走りの蜜が溢れ、龍麻の手を汚していた。






「んはッ……は、う……んぐぅ……」
「……は…きょーいち……」
「龍、麻……っは、ん、くッ」






絶頂感が直ぐ其処にある。
侵食する熱に、逆らう術はない。









「ん、んんッッ………!!」









深く口付けられたまま、京一は龍麻の手の中に射精を果たす。




ねっとりと濃い蜜液をちらと見遣り、龍麻は薄らと笑みをすいて京一を見下ろした。
口端だけを僅かに浮かしたその表情が、暗い倉庫の中、京一の視界にぼんやりと浮かび上がる。



……やっぱ怒ってやがる。


射精直後の気だるさの中、一線を隔したように冷静な思考がぼんやりと呟く。

何が龍麻の怒りのスイッチを入れたのか、京一は判らない。
こういう関係になってそれなりに時間は経ったが、やはり彼の思考は不思議としか言いようがない。
やっぱり苺の事しか頭にねェだろ、と思う事も度々だ。







「京一、気持ち良かった?」






問い掛けつつも、確実に此方の返事を期待してはいないだろう。
京一はぼんやりと龍麻の顔を見上げながら、呼吸を落ち着けることだけに専念した。

此処で終わる訳がない、終わりにする訳がない――――京一はそう思っていた。
京一だけがイって、龍麻は衣服すら乱していない状態で、終わる訳がない。


壁の向こう、体育館の方からホイッスルの高い音が聞こえた。
何をするのだか知らないが、彼等に自分達の存在を知られてはならない。
増して、こんな事をしているなど。

だから、今後の声を殺す為に、京一は呼吸を整えようとする。







「京一」







だが、呼吸を塞がれてはそれもままならない。


一つ名前を呼んで、唇を奪われる。
気だるさに身を任せた躯は、素直にそれに応えた。
それが一番楽だから。






「ん…んん………」






絡まり合う舌から伝わる、相手の熱。


秘部に何かが宛がわれる。
入り口を解すように、それはゆっくりと潜り込んでいった。






「あ…ぅ……!」






縋るように、龍麻の首に腕を絡める。
慣れない圧迫感と異物感に、目尻に涙が浮かぶ。

龍麻はそれを愛しそうに見つめ、舌それを舐め取った。
眼球近くに迫る赤い舌に、そのまま眼球まで食われてしまいそうな錯覚に陥る。


体内に侵入した指が、入り口を広げようと動き出す。






「んッ…ぅぁ、…っは……」





痛みはない。
龍麻の指は、既に京一の一度目の射精によって濡れている。
それを潤滑油代わりにしていた。


ぬるぬるとした濃い液体が、内壁に塗られて行くのを京一は感じた。
なるべく痛みを与えまいとしてか、丹念に何度も擦られる肉壁は、指の形を何度となく確認させる。

古武術によって鍛えられた龍麻の指は、剣術を扱う京一と同じで、意外と節張っている。
それでも綺麗な手をしているのを京一は知っていた。
自分なんかよりも、ずっと綺麗な指をしている事を。
―――――それが今、自分の体内を犯しているという現実が、酷く罪であるような気がして。







「ん、う!」







きゅう、と締まった内壁。
無意識とは言え、京一は顔に血が昇った。


躯の奥をぐいぐいと押され、腰が逃げを打つ。
龍麻はそれを捉まえて固定すると、更に奥を目指して指を突き入れた。







「―――――っひ、ぃぁ……!」







半ば悲鳴のような声が上がる。


戯れるかのように、龍麻の舌が京一の鎖骨を舐めた。
それはゆったりと降りて行き、胸の果実に悪戯をする。

下肢からはくちゅくちゅと水音が聞こえ始め、射精して間もない雄も再び勃ち上がろうとしている。
若い躯は京一の羞恥心等とは裏腹に、行為の先を求め、目の前の男を煽っていた。



親友であり、何よりも愛する恋人の痴態に、龍麻の我慢は限界を超えた。







「京一、欲しい?」
「っは…あ、ぅ…んん…! ふぁッ」
「此処、挿れてもいい…?」







熱っぽい声で囁かれて、下肢の入り口部分を執拗に弄られて。
痙攣するように、京一の躯が跳ねる。








「た、つ、まァ……ッ」








腕を絡めた首をしっかりと捉まえて、顔を近付ける。
縋るように口付けて、京一の方から舌を入れた。
龍麻は一瞬驚いたような顔をして、けれども直ぐに呼応する。

聞こえる粘ついた音が口内からなのか、下肢からなのか、京一にはもう判らない。
鼓膜まで犯されているような気がする。



秘部から指が抜かれて、京一は物寂しさに襲われる。
男としてのプライドだとか、矜持だとか、理性だとかは、もう随分遠くに置き去りにしてしまった。

無意識に腰が揺れて、甘えるような声で龍麻を呼んだ。






「京一、可愛い。ちょっとトんでる?」
「っは……龍麻ァ……」






問答など不可能な状態の京一に、龍麻はにっこりと笑みを浮かべた。

手早く自身の雄を取り出せば、それも硬く張り詰めている。
秘孔に宛がうと、互いの呼吸が整うのも待たずに、龍麻は腰を推し進めた。







「あ、ぅ………!」







痛みと、圧迫感と、異物感と―――――それを上回る快感と、充足感。

このまま、それらに全てを持っていかれそうな気がした。
それも良い、と常識もモラルも放り出した頭がぼんやりと考える。












その時、倉庫の扉の開く音がし、暗い空間に光が差し込んだ。











瞠目した京一が、視線だけで、体育館と繋がる出入り口を見遣る。


目の前には、積み上げられた跳び箱と、ボールの入ったカーゴ、折り畳まれたテーブル。
向こうにも、バレー用のネットや、ロープなどが散らばっていた。

そのずっと先、沢山の障害物に遮られた方向から、明らかな人工灯が暗い倉庫内を照らしている。
がやがやと沢山の生徒の掛け声や話し声、体育教師の怒鳴る声、シューズが擦れる音。
倉庫と体育館とを繋ぐ扉が開け放たれている事は、考えなくても明らかな事だった。




そうだ。
今は授業中だ。
そして此処は体育倉庫だ。

いつ何時、誰かがボール等の用具を取りに入ってきても可笑しくない。


一気に血の気が引いて、京一は覆い被さる龍麻を押し退けようとした。
しかし腕を捕まれ、一纏めにされて片腕一つでマットに縫い付けられる。






「―――――ッ」






龍麻、と名を呼ぼうとした口は、龍麻のもう片方の手によって塞がれた。







(見付かるよ)






静かに、と龍麻の目が言う。



見付かりたくない。
こんな所、誰かに見られるなんて御免だった。

でも、だからと言ってこのまま此処でじっとなんてしていられない。


龍麻が行為を止めてくれればそれで済む(途中止めは確かに辛いが)。
見付かったとしても京一のサボリはよく知られているし、それに龍麻が一緒になるのも公然となっている。
だから、行為さえ終われば、体育の授業の後にそのまま此処で寝ていた、という事で片付くのだ。



――――――しかし、龍麻は未だ京一に侵入したまま。







(声、出しちゃ駄目だよ)







耳元で龍麻が囁いた。

言われなくても――――と思って、直後、京一は先刻以上に目を見開いた。




龍麻の雄が、京一の内部を突き上げたのである。







「―――ッ、……ぅッ……ん……!」
(ほら、聞こえるから我慢して)
「…ッ、ッ…! ―――ッ……!」







龍麻は、京一の躯を知り尽くしていた。
京一が何処を刺激されれば反応するのか、京一以上に。
この躯を開発したのは龍麻なのだから。


的確に弱い部分を突かれて、京一は喉の奥からあらぬ声が漏れそうになるのに気付いていた。
それを妨げているのは、まだ辛うじて残っていたらしい理性と、口を塞ぐ龍麻の手。
呼吸ごと邪魔をしているから息苦しさはあるけれど、見付かるよりはずっと良い。

しかし、気を抜けば声が大になって漏れてしまいそうだった。




用具を探す生徒の足音が、気配が近い。
頼むから覗くな、と京一は祈りか願いにも似た気持ちで硬く目を閉じる。


現実から逃れようとするかのように目を閉じた京一に、龍麻は満足感を得ていた。







(京一、あのね)
「………ッ……!?」






最奥を突かれて、京一の躯が一つ大きく跳ねた。

この状況で語りかける龍麻に、京一は眉根を顰めて目を開ける。
間近に迫った龍麻の顔が何処か空恐ろしくて、京一は知らぬ間に戦慄した。
それによって秘孔が締まり、埋め込まれた雄を締め付け、京一は唸る。






(さっきの授業の時に)
「んッ……ぅ…ん……ん……!」
(僕にボール当てたよね)
「ふっぅ……!!」






ある一点を突かれて、龍麻の指の隙間から京一の吐息が漏れる。
用具を探す生徒達の気配は、まだ変わらずに其処にある。

構わず、龍麻は京一の前立腺を突き続けた。






(あれ、結構痛かったんだ)
「ぅ、ふッ……! んぅ…!」
(なのに京一ってば、楽しそうにしてさ)






囁かれる龍麻の言葉に、当たり前だろう、と京一は思った。


体育の授業は後半から殆ど自習状態になって、龍麻と京一はドッジボールに参加した。
別チームになった事に残念と思いつつも、絶対に勝ってやろうと互いが思った。

お互いのチームメンバーが残り僅かになった時、京一の投げたボールが龍麻に当たった。
恐らく最難関であろう龍麻を外野に押しやった京一は、チームメイトからの賛辞もあり、得意げに笑って見せた。
―――――龍麻の不機嫌がその瞬間から始まっていたとは、露知らず。




つまり、アレか。
こんなとこでいきなり始めやがったのは、仕返しか。

…………ふざけんな!!




導き出された答えに怒りを覚えるも、躯は既に龍麻の意のまま。
貫かれた秘孔は物欲しげに伸縮し、助けを求めるように目の前の男に縋りつく。







「んッ、んんッ…! っふ、ぅん……!」
(京一、凄く締まってる)
「んーッ………!」
(見付かるかも知れないのに、興奮してる?)







緩く首を横に振るが、説得力はない。
見付かるかも知れない緊張は、いつしかスリルに変わり、若い躯を更に興奮させていた。




生徒達の足音と気配が遠退いて、扉の閉まる音がする。
再び暗くなった倉庫内は、シンと静まり返っていた。

その静寂の中、隙間から零れる京一の艶の篭った呼吸だけが、二人の鼓膜に届く。
思いの外響いて聞こえる自身の呼吸に、まさか聞こえてねェよな、と京一は思う。


だが、思案は長くは続かない。


京一の口を押さえていた龍麻の手が離れ、同時に深く穿たれる。








「ひっあ…!」







見付かる危険性が去った、僅かな安堵感と言う隙。
堪える事を忘れた嬌声が上がり、暗い倉庫内に反響した。


龍麻の腰が大きくグラインドし、京一の内部を更に突く。
入り口まで引き抜くかと思えば、最奥を突き、また退かれる。

散々呼吸ごと妨げられた声は、戒めから解かれ、反動を受けたかのようにひっきりなしに喉の奥から漏れた。






「あ、う、んんッ! 龍、麻ッ…! ふぁッ、あ…!」
「ドキドキした?」
「ば、かやろッ……んぁッ!」






悪戯っぽく訊ねる龍麻に、京一はせめてもの意趣返しに悪態を吐く。
体操服の上から、龍麻の背中に、目一杯爪を立てて。

背中を走った痛みに龍麻が一瞬顔を顰めたのを見て、京一はざまあみろとニィと笑って龍麻を見上げる。



それは体内を突き上げる熱によって、直ぐに失われてしまって。
散々揺さぶられて、前後不覚になるまで然程の時間はかからなかった。


だから、幸いだったのかも知れない。











「――――――結局、理由なんてなんでもいいんだけどね」











あられもない声を上げる自分を見下ろして呟いた、親友の台詞が聞こえなかった事は。


















ぶっ通しでエロ書いてみました。
前回のお初話が全く色っぽくなかったので、今回は色気重視で。

……京一が結構鳴いてる上に、龍麻は初っ端から黒仕様になりました。


ぶっちゃけ、体操服と体育倉庫に萌えただけです(爆)。
動き回っていい汗かいてる京一を想像して、私がムラッと来ただけです(滅)。

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