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親父
父さん
父ちゃん
………心配すんな
アンタの事は、ずっとずっと、大嫌いだから。
【It is great, and it foolish father】
父親の事は、憧れだけれど、嫌いだった。
父親には、散々扱かれた記憶が殆どだ。
身体から青痣が消えた事は殆どなかった。
学校の先生が心配したぐらいだったから、相当だったのだろうと後になって思う。
家で辛いことはないの、と問われる度、当時の自分は首を傾げていた。
当時の京一にとって、剣術稽古は確かに辛いものではあったが、嫌いではなかった。
相手を負かした時の爽快感は心地良く、自分が負けても悔しさは残っても嫌な感情は残らなかった。
寧ろもっともっと強くなってやる、と思ったほどだから、上手い具合に剣術は京一の性に合っていた。
だから担任の言葉には、いつも「何もないです」と言った。
それは嘘ではなく、本心。
父親は厳格とは言わなかったが、剣術に関してだけは厳しかった。
また剣に関しても妙なこだわりがあり、剣士にとって剣は己の魂、手放してはならない、といつも言っていた。
そして言葉通り、父は常に、木刀を腰に下げていた。
幼いなりに、自分の父親が変わった人物であると、京一は思っていた。
それもそうだ。
常日頃から木刀を携帯している人間なんて、幾ら此処が東京でも、早々お目にかかる筈がない。
漫画やアニメの中ならともかく、現実にそんな人間がいたら危ない人にしか見えない。
父はどちらかと言えば強面な方だったから、余計にその道の人に見えた。
子供は、異なるものへの着眼が早い。
そして異なるものには総じて興味を示し、変だ変だと口にする。
自分にとって当たり前でないものを、子供は糾弾する。
だから京一は、父親の事が嫌いだった。
―――――父ちゃんなんか、きらい。
初めてそう言ったのは、父の風体の事がクラスで話題になった日の事。
小学校一年生の運動会が終わって数日経った頃、その話題は上った。
新宿の駅前で、木刀を腰に差した中年の男が目撃された。
流し着物姿で、アレはきっと――――なんて皆が喋っているのを、京一は教室の隅で聞いた。
むき出しで持ち歩いている訳ではないけれど、やはり目立つのだ。
おまけに流し着物なんて格好をしていたら、本当に漫画やアニメの世界から出てきたみたいで。
京一にはそれさえ見慣れたものだったけれど、それは家族であるから、という特権。
他の子供たちにとっては、まさに映画の中の人物だった。
話題に上っただけなら、京一だって素直に喜ぶ。
格好良いだろ、オレの父ちゃんだぜ――――そう言おうとした。
けれど。
話はどんどん妙な方向に進んでいって、それこそ漫画みたいな話に発展した。
その内に父親の風体は悪者扱いになっていて、誰もそれを否定しない。
もともと父の顔付きからして人が良いとは思えない。
それが余計な拍車をかけて、京一が黙っている間に、クラスメイト達の会話は入り込めない程に盛り上がっていた。
ヒーローとか、そういうものには、やっぱり憧れていた。
それまでの京一にとって、父親がそうだった。
大好き、と公言するほど、京一は素直な子供ではなかったけれど。
敬意の念は確かにあって、厳しいところは嫌いでも、強いところには憧れていた。
日中から木刀を持ち歩くのも、そんなフィルターもあって、特に気にしていなかった。
でも、他の子供たちにとってはそうじゃない。
自分の常識が周囲によって打ち崩された時、京一は父親の事が嫌いになった。
“皆と同じ普通の父親”ではなかった、父親を。
それでも、強い事は確かに憧れていたし。
強くなりたいと思っていたし。
父を越えたいと、幼いなりに、思っていたし。
父の事が好きでも、嫌いでも、剣術は肌身に合っていて、稽古を止めることはしなかった。
…………あの日は、そんな息子への、父のささやかなご褒美だったのだろう。
8歳になった年の、夏祭りの日。
母と歳の離れた姉は、各々の友人達と一緒にめかしこんで祭りに出ていて、家にいたのは父子二人。
すっかり父に対して反抗的な態度が当たり前になっていた京一は、息苦しくて仕方がなかった。
気まずくなる程ではなかったが、もうその時、京一は二人きりで父と会話をする事は少なくなっていた。
大抵クッションに姉か母が傍にいて、二人きりになるのは稽古の時だけ。
その時も必要最低限の会話しかなくて、後は朝晩の挨拶を交わす程度。
二人が帰るのはまだかまだかと思いながら、京一は菓子を齧っていた。
それほど広くないリビングで、一番スペースを取っているソファの右端に座って。
反対の左端には父がいて、夏休みスペシャルだとか特番を見ていた。
時々テーブルに置いた京一の菓子袋に手を出して、京一はそれを咎めなかった。
菓子を取られたぐらいで怒るのが子供っぽく思えて嫌だったし、咎めるとなると父と会話をしなければならない。
ささやかであろうとも、その時の京一は、心底それを避けるのが染み付いていたのである。
――――――その内父親が好きそうな番組も終了して、テレビの電源が切られた。
母と姉は帰ってこない。
時刻はまだ8時、眠気もないから、寝る気にならない。
大体まだ風呂に入っていない、就寝の姿勢には程遠い。
でも、此処にいるのも息苦しい。
口の中一杯に菓子を詰め込んで、どうしよう、と内心溜め息を吐いた時だった。
「京一」
突然呼ばれて、肩が一瞬跳ね上がってしまった。
返事があるとは思っていなかったのだろう。
京一の反応を待たずに、父は続けた。
「祭り、行くか」
その言葉は思っても見なかったもので、京一は父親を仰いだ。
幼い丸い瞳に映り込んだ父親は、此方を見てもいなかったけれど、いつもとは少しだけ雰囲気が違っていた。
笑えば、顔を皺だらけにして、強面が愛嬌のあるものに変わる父だった。
だが京一が反発するようになってから、父はそれを息子に向けることはなくなった。
まるで息子の反発心を煽り立てるかのように、厳しい態度を取るようになった。
――――だから、この時の柔らかな雰囲気は、一体どれ程振りのものだったのか、判然としなかった。
数年前に戻ったかのような雰囲気を持つ父に、京一は一瞬、戸惑った。
なんだか反発する気にもならなくて、祭りに? と、無意識に問い返していた。
父親と二人で夏祭りなんて、本当に幼年の頃だけの思い出だった。
稽古の時は厳しい父だが、夏祭りの時はいつも優しかった。
あれこれと食べたがる息子に苦笑して、一緒に全部の出店を回った事もある。
いつも稽古で青痣だらけになっても頑張る息子への、きっとささやかなご褒美だったのだろう。
娘と違って、物欲のない息子だった。
周囲の子供達のように物をねだることは少なく、それよりも稽古ばかりに明け暮れていた。
けれども食べることは、やはり子供にとって大きな事項を占めていた。
稽古の最中は甘やかす事の出来ない父が、思う様甘やかしてやる為の、口実だったのかも知れない。
折角の祭りなんだから、と。
数年反抗期を続けていても、やはり優しい思い出は京一の奥底に残っていた。
肩車をして貰った時の目線の高さや、出来立ての飴菓子を食べた時の嬉しさ。
そのまま人ごみの中で見上げた花火の色や音――――何も忘れてなどいなかった。
眠気はなかったし。
母も姉も、帰って来ないし。
あの温もりも、忘れていないし。
無言をどう受け取ったのかは判らなかったが、嫌だと言わなかったからだろうか。
父は立ち上がると、リビングを出て行った。
京一は暫く迷ってから、その後ろをついて行った。
玄関で父に追い付いた時、京一は顔を顰めた。
着流し姿の父の腰に、見慣れた木刀があったからだ。
露骨に眉間に皺を作った息子に気付いて、父は眉尻を下げた。
それも、珍しい表情だったのではないだろうか。
少なくとも京一にとってはそうだった。
「なんだ。やっぱり行かねェか」
玄関口で立ち止まった息子に、父は問うた。
夏祭りは行きたい。
カキ氷とか、トウモロコシとか、食べたい。
でも、“普通の父親”ではない父と歩きたくなかった。
じっと木刀を睨んでいたら、父はそれに手を当てて、
「剣士にとってこれは魂だ。魂手放しちゃあ、なんにもならんだろう」
その台詞には、何度も聞いた、と返した。
夏祭りは行きたい。
出店も回りたいし、花火も見たい。
でも、並んで歩きたくない。
離れて歩く、と言ったら、父は何も言わなかった。
背中を向けて玄関を開けて、京一は靴を履いてそれを追った。
道中は祭りへ行く者、帰る者と様々で、中には仕事帰りでクタクタのサラリーマンもいた。
夏祭りの日にはそういうサラリーマンの方が浮いて見えて、着流し姿の父は然程目立たなかった。
腰の木刀の事は相変わらず気になったが、それさえ無視すれば、父は“普通の父親”に見えた。
それでも、京一は父から数歩、離れて歩いた。
父は時々立ち止まるが、振り返らず、京一が追いつく頃になるとまた歩き出した。
隣を手を繋いだ父子が擦れ違っていったが、羨ましいとは思わなかった。
道中、色んな人が父に声をかけていた。
仕事先の仲間だとか、昔馴染みだとか、とにかく色々。
時折、如何見ても堅気には見えそうにない人物もいて、それを見た京一は益々離れて歩いた。
父は誰とでも楽しそうに話をしていたけれど、取り巻く人達の顔立ちは普通じゃない。
顔中が傷だらけだったり、出来たばかりの青痣があったり、真新しい包帯を巻いていたり―――――、
それらと普通に会話をしている父は、確かにその筋に通じている人に見えた。
「おう、蓬莱寺さん。祭りに行くのかい?」
「ああ。バカ息子が行きたいってんでな」
「そうですか。良かったなぁ、坊主」
京一は答えなかった。
行きたいなんて言っていない、でも行きたくないとは言わなかった。
誘ってきたのは父の方だったけれど、断ることも出来たし、無視する事も出来た。
でも、そうしなかったから、京一は黙っていた。
「お前、また何処ぞで喧嘩してないだろうな?」
「勘弁して下さいよ。大人しくしてますって」
「次があったら足腰立たなくしてやるぞ」
「おっかねぇなあ」
“その筋”の人間に対して、そんな台詞を軽く吐ける。
やっぱり父は普通じゃなかった。
父にとっては、それが普通であったのだろうけど。
離れた場所を歩く息子を、父は、反抗期なんだ、困ったもんだ、と紹介した。
困ったのはアンタの木刀を持ち歩く癖だ、と言いたかったが閉口した。
お決まりの文句が帰ってくるに決まっている。
父と話をしていた男達は、京一を見て、生意気そうですねぇ、と笑った。
そうだろう、と笑った父に、京一は機嫌を悪くした。
バカにしていると思ったのだ。
素直でない父の、素直でない愛し方だなんて、幼い京一には判らなかった。
出店が立ち並ぶ通りに着くまで、その連中は着いてきた。
父はさっさと帰れと手を振ったが、ちょっとお話が、と言って付き纏った。
父は面倒臭そうな顔をして、その男達の話を聞いていた。
京一は益々遠くを歩くようになり、このまま人ごみに紛れて一人で行ってしまおうかとも考えた。
けれど折角きたのだから買い食いはしたいし、財布を持っているの父で、結局止めた。
遠目に見ていたその時の父親は、危ない連中と同等に見えた。
クラスメイト達が言っていた事を思い出して、余計に腹の虫が煮える。
「そいじゃ、お気を付けて」
そう言って連中が帰った時には、京一と父の距離は随分遠いものになっていた。
人でごった返した通りで、流石に十にもならぬ息子をそれ以上離す気にはならなかったのだろう。
父は男達を幾許も見送らずに、踵を返し、離れていた息子に歩み寄ってきた。
「どうした、京一」
立ったまま見下ろす父を、京一は見上げなかった。
ふいっと明後日の方向を向いた。
そうすると、焼き鳥屋が目の前にあった。
「ああ、腹減ったな。食うか」
父と目を合わせたくなかっただけの行為だった。
父も、それを薄ら感じていたのではないだろうか。
敢えての勘違いをして見せて、父は焼き鳥を買った。
タレが一杯についた焼き立てのそれを、父子で一本ずつ。
「火傷すんじゃねえぞ」
差し出された食べ物を無碍にする気はなかったから、大人しく受け取った。
焼き鳥を食べながら、また父が歩き出して、京一も少し遅れてから歩き出した。
出かける前に菓子を食べていたけれど、成長期の胃袋があれだけで満足する訳もなかった。
空いた腹に収まっていく充足感と、夏祭り特有の雰囲気で、いつもよりもその焼き鳥は美味しかった。
あっという間に一本を食べ終えると、なんとなく物足りなくて、次の店を探していた。
周りばかりを見て、前を見ていなかったから、気付かなかった。
立ち止まっていた父にぶつかって、京一は鼻頭を押さえて顔を上げた。
その時になってようやく、京一は父親の顔を見た。
「次は、あれにするか」
そう言って父が指差したのは、焼きもろこし。
一本丸々使った、大きなもの。
手渡されたそれからは香ばしい匂いがして、胃袋が刺激される。
齧り付くと熱くて小さい悲鳴を上げてしまい、横で父が笑い、出店の主人にも笑われた。
ムッとして意地になってまた齧り付いて、そのままの勢いで全部平らげてやった。
「次はあっちだ」
息子よりも楽しそうに笑って、父はあちこちの店を周った。
京一はその度に手渡される祭りの食べ物に齧り付いて、会話は殆どしなかったが、それなりに楽しんでいた。
父の腰で揺れる木刀のことは気になるけれど、祭りの場では誰もそんな所まで見ていなかった。
皆各々が祭りを楽しむことに夢中になっているから、周りの事なんて気にしない。
祭り独特の雰囲気の中にあって、間違い探しのように異なるものを見つけるなんて、野暮だ。
その内歩き回るのに疲れて、設置されたベンチに座ると、父が苦笑した。
「なんだ、疲れたか。もっと足腰鍛えろよ」
似たようなことを稽古の最中にも言われるが、雰囲気が違っていた。
祭りの空気に当てられたのかと、その時の京一は思った。
ベンチの傍で売っていたカキ氷を手渡されて、京一はそれにもすぐ口を付けた。
祭りの雰囲気と、人々の熱気で、京一は汗だくになっていた。
冷たい氷と甘いシロップは子供の舌によくあって、キーンとする米神に頭を抱えつつ、祭りの醍醐味を堪能する。
――――――そうしていたら、不意に大きな手が頭を撫でて。
「なぁ、京一」
くしゃくしゃと頭を撫でているから、顔を上げられなくて。
どうにか上目に父を見遣っても、祭りの灯りが逆行になって、父の顔は見えなかった。
ただ、その手の大きさを、京一は随分久しぶりに感じていた。
「俺もお前も、素直な性質じゃあ、ねえからなあ」
京一は、構わずカキ氷を食べた。
けれども、意識は父の声に傾けられていた。
視界の隅で、重力に従っていた手が持ち上がり、腰の木刀に触れる。
「俺がこんなだから、お前は俺が嫌いだろうが、」
嫌い。
そうだ、嫌いだ。
頭を撫でる大きな手は、憧れであったけれど。
“普通じゃない父親”が、京一は嫌いだった。
周りから変だ変だと囃し立てられるような父親は。
だけど、父はそんな事など気にもしない。
京一がそれを言っても、バカバカしい、と鼻で笑うだけ。
「こいつはな、俺の信念だ。これがなくちゃあ、始まらねェんだ」
何が始まるのかは、聞かなかった。
聞いても判らないような気がした、その時の京一には。
頭を押さえている手を感じながら、食いにくいなぁ、と、思ったのはそれぐらいの事。
「なぁ、京一」
手が離れて、顔を上げた。
押さえられて首が痛かったからだ。
結果、見上げる形になって、だけど父の顔はやっぱり判らなかった。
父の顔の横に眩しい明かりがあって、京一の網膜を射抜いていた。
眉間に皺を寄せて手で目元を覆ったけれど、父の顔は見えないまま。
父は、続けた。
「お前、なんの為に剣術やってる?」
――――――強くなりたいから、そう言った。
原点が何処にあるか、その時の京一にはよく判らなかったし、振り返るほど長い人生ではなかった。
性に合っていたとか、勝った時の爽快感だとか、そういうのも確かにあったけれど、
続ける理由はなんなのかと聞かれたら、強くなりたいから、いつもそれに行き着いた。
迷いなく答えた息子に、じゃあ、と父は続けて問う。
「なんの為に強くなりたい?」
それには、答えなかった。
答えられなかった。
強くなった先に何があるのかなんて、知らないし、考えることもなかった。
実生活では護身術以外に使う必要のない剣術を続けて、何か為になると思ったことはない。
強くなりたい、強くなった後の事は、その時に考えれば良かった。
まだ8歳の京一にとって、未来のことなんてずっとずっと遠い話だったから、無理もない。
どれぐらい強くなりたいのか、何処を目指しているのか、幼い京一は判然としなかった。
ただ、負ければ悔しい、負けたくないから強くなりたい、とその一心だった。
どうして負けて悔しいのか、どうして負けたくないと思うのか、どうして強さを望むのか―――――答えは出なかった。
沈黙した息子に、父は笑った。
「それが判ったら、俺がこれを持ってる意味も、少しは判るようになるだろうよ」
――――――つまりは、それまで父子の溝は埋まらないという事か。
未来の話なんて、京一にとっては途方もないものだった。
そんな話を平然として、頭をくしゃくしゃに掻き乱す父を、やっぱり嫌いだ、と思った。
判るように説明しやがれ、と。
判らない話を散々続けて、判らせないまま切り上げて。
正直学校の成績だって良くない事は自覚していた京一だ。
小難しい話は苦手で、だからと言ってこの話をこれでお終いにされるのは気持ちが悪かった。
どういう意味だよ、と問うてみたが、また頭をくしゃくしゃに掻き回されただけに終わった。
京一の食べていたカキ氷はその時には半分程になっていて、父はポップコーンを買い、京一に手渡した。
それから父は、ちょっくら知り合いに顔出して来る、と言ってその場を離れて行った。
変な父親。
よく判らない父親。
いつも木刀を持ち歩いている、危ない父親。
でも、強さは認めていた。
見た目で敬遠され勝ちであろう人間にも、普通に接する父親。
生意気だ生意気だと言いながら、頭を撫でる父親。
………大嫌いな、憧れの、父親。
難しい話はよく判らないし、これ以上は話してくれそうにない所はムカつく。
でも、よく判らない父親ではあるけれど、其処には確かに、一本筋が通っているのだろう。
周りから変だ変だと言われようと、息子に嫌いだと言われようと、変わらないのはその為で。
誰になんと言われても、自分の中に揺るぎがないから。
木刀を持ち歩いている理由とか。
剣術をしている理由とか。
何度考えても、幾ら考えても、幼い京一には判らない、けれど。
それでも。
大嫌い、だけど、憧れで―――――――
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